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チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

パイナップル

2014年07月28日 | 映画

晴れ、26度、87%

 暑くなると、冷蔵庫にパイナップルが入るようになりました。ジューシーで甘いけどくどくなく、ポイポイお口に入ります。

 香港には一年中、スイカやメロンがあります。スイカはインドネシアや台湾から入って来ます。大きさもまちまち、ラグビーボールのようなものから小さなものまで。甘みは日本のスイカに敵いません。微かな甘みと水分補給の恰好な果物です。しかも、大きな中華料理店では、御得意さんの食後にサービスでこのスイカを出してくれます。冬に日本からみえた方達は大喜びなさいますが、私などスイカはもういいわと思います。そんなわけで、夏になるとパイナップル。

 パイナップルは、主にフィリッピンから入って来ます。実は、夏にしか興味のないパイナップルですから一年中入って来ているのか分かりません。このパイナップル、$20くらいですから、300円以下という安さです。こんなに安い値段で、パイナップルのプランテーションで働く人たちは食べて行けるのかと心配になります。バナナを刈り取る子供たちはバナナを食べたことがないとも聞きます。どんな所で、どんな人が作っているのかな、と思いつつスーパーのかごに入れてレジに並びました。私の前には、モモさんの散歩でよく会うフィリピンからのお手伝いさんがいました。香港のお手伝いさんの約半分はフィリッピンからの出稼ぎの人です。彼女の目がパイナップルに止まりました。「パイナップルは好き?」と聞きます。「我家はみんな好きよ。」と答えると、妹がパイナップルの農園で働いていること、パイナップルを冷凍にして食べると美味しいことなど、次から次に話してくれました。彼女の目はふるさとを思う目です。

 あと一つ、中国の南の島、海南島からやって来るパイナップルがあります。小ぶりなパイナップルです。このパイナップル、なぜか、果物屋でなく八百屋で売られています。 芋の山の中にビニールに入っているのが、海南島からのパイナップルです。なぜか、こうして皮がむかれて売られています。どんな包丁で剥かれたのか分からないので、どうも買う気になれません。どこかでご馳走になったこの海南島にパイナップル、それはそれは甘いものでした。

 夏の暑い時には南の国の果物がいいと言われます。水分補給、ミネラル補給。自然の甘みは体にやさしい。そうそう、いよいよ地元のライチが店先を飾りはじめます。今日も暑い昼下がり、冷やしたパイナップルをおやつにと思っています。


小津安二郎を観る

2014年06月09日 | 映画

雨、25度、86%

 テレビの前に2時間近くもじっと座っているなんて、普段はなかなか出来ません。主人でもいれば15分座っているのがせいぜいです。やれ、お茶だ、やれ、眼鏡だ。自分一人のとき、時間を作ってテレビの前にドンと座ることがあります。年に2回ほど、小津安二郎のDVDを観るためです。出来たら、外は雨降りの方がいいですね。

 小津安二郎という映画監督の名前は知っていましたが。私が2、3歳の時にすでに他界した監督です。実際に映画を見たことはないままでした。十年ほど前でしょうか、何かの映画書評に小津の「彼岸花」のことが書かれていました。この映画が小津のカラー作品の第一作目です。その書評は、小津のカラー映画全般にいつも書かれる色彩の妙について書かれています。ご存知の方も多いでしょうが、必ずといいていいほど、赤がうまく使われているのです。昭和30年代初期の日本の家庭の中に赤という色は稀な色として写し出されています。朱の利いた湯のみ、赤い薬缶など。そこで、片っ端から小津の手に入る作品をDVDで買い求めました。そのうち、日本でも小津ブームが復活したかのようにいろいろな企画が催されていました。香港にも、小津の一連の作品が紹介されたのはその頃です。

 よく小津の作品は同じようなものばかりでと聞きます。これだけ繰り返し観ているのに、未だに作品名と作品の区別がつきません。あまりにも、カラー作品の赤のことが取沙汰されるので、最近観るのは専ら白黒映画ばかりです。白黒だと自分で想像して、色を映画の上にのせることが出来ます。老夫婦が見上げる空に高く高く舞い上がって行く風船の色を、やはり赤かしらと思うこともあれば、青かなと思うことも出来ます。カラー映画だと、明らかに誰々の手になる湯のみだと分かるものでも、白黒映画だと土瓶に描かれた大きな丸は焦げ茶かしら?鉄赤もいいわといった具合です。

 ただ、女優たちの着る着物に関していえば、やはりカラーに越したことはありません。山本富士子が着る紅型の色合い、杉村晴子が着る琉球がすり、上物ではない普段着の着物のよさを何処までも見せてくれます。白黒映画でもはっきり分かるのは白い色。あの頃は男も女も子供も大人も、白いシャツ白いブラウスを着ています。いえ、小津が衣装に白のシャツ白のブラウスを選んだに違いありません。白のシャツ白のブラウスの持つ意味を、何処までも知り尽くした監督のなせる技です。

 携帯電話も出てこない、テレビすら出てこない、私が産まれる以前の日本の映画。香港の忙しない外の空気と裏腹に、たまの雨降りの日、私には、ゆっくりした時間が流れます。