うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

母の日の、悪口?

2020年05月10日 | カズコさんの事

母の日が近いとは知っていたが、

そうか、今日だったか。

 

おはようございます。

母さんには、もうプレゼントを贈ってある。

空気清浄機能付き灰皿だ。

なんか、すごいでしょ?

もしかすると、灰皿の方ではなく、喫煙に驚く人が多いかもしれない。

80を超える老人が喫煙者だと聞けば、顔を歪める人も

この時代には少なくはないだろう。

どうでもいいんだ、そんな事。

今さら、人の目なんて、どうでもいい。

 

母さんは、昔からファンキーでアナーキーな女だった。

娘の授業参観だと聞けば、咥えたばこのまま、

「ちっ!面倒くさい」と悪態をつきながらも、

まるで自分の独り舞台かのごとく、

どのお母さんよりも洒落込んでやってきたもんだ。

ヒョウ柄のトップスにラメ入りの上着、黒のスラックスにヒール。

髪は、これは普段通りなのだが、美容院でばっちりセットしていた。

ブルーのアイシャドーに強めのアイライン、極めつけに真っ赤な口紅。

指には、メリケンサックのような指輪が光っていた。

母さんが教室に登場する時の挿入歌は、

極道映画の、あのチャララーがぴったりだ。

調べてみたら、「仁義なき戦いのテーマ」という曲名だそうだ。

クラス内は決まって騒然とした。

「おい、おかっぱの母ちゃんが来たぞ」

「ねぇねぇ、あれ、おかっぱのお母さんなの?」

「うっわ、おかっぱの母ちゃん、すげぇ」

こんな事、私は小4の頃には、すっかり慣れていた。

放課後になれば、

寄り道をしてはいけませんっと学校で教えられているのに、

母さんは私の友達も一緒に車に押し込んで、ラーメンを食べに連れて行った。

「いやいやいや、みんな家に帰って、夕飯食べれなくなるから」

私が制したって、母さんはお構いなしだ。

「パチンコでどえらい勝ってよぉ。ご馳走したる」と上機嫌だ。

品の良いご家庭のお嬢さんたちは、ドン引きで声も出せず怯えていた。

 

中学に入れば、

母さんは、学校イチ恐ろしい先生と酒場で飲んだくれて帰ってきた。

「おい、コバヤンってお前の部活の先生やろ?

どこが怖い先生なんや?あんなもん、ちっとも怖ないぞ」

 

これなら、まだいい。コバヤンは大人だから。

高校生の頃なんて、

偶然出くわした、学校帰りの私の友人をとっ捕まえて、

近所のスナックへ連れ込んだんだ、母さんったら。

父さんも、そこに待ち構えていた。

「唐揚げが美味しいからって唐揚げをご馳走になったよ」

後日、そう友人に聞かされた時は、さすがに土下座した。

確かに、あのスナックのママが揚げる唐揚げは絶品だったのだが、

だからいいという問題ではない。

 

友人は、

「家では、お手伝いするたび、お小遣いがもらえるの」

と言って、せっせとお手伝いに勤しんでいたが、

我が家は、家事全般、子供がやるのが当たり前だった。

掃除機をかける。

洗濯をする。

シンクに溜まった皿類を洗う。

お米を炊く。

靴下に穴が開いていたら、それも自分で繕う。

洗剤がなければAコープに買いに行かなければならないし、

もちろん、母さんが帰ってきて風呂が焚けてなかったら、

お小遣いがどうのこうのどころではない、半殺しの刑が待っていた。

やらなかった理由が宿題が多いからであっても、半殺しだ。

「お前、家の掃除もせんと、何しとるんや?

勉強はお前の勝手やろ?家の事するんは子供の義務や。

勉強したかったら、まず家の事をせんと半殺しや」

まさに、半分死ぬほど、ぶん殴られた。

掃除機をかけろ!と言われたことは何百回もあるが、

勉強をしろと言われたことは、一度もない。

本当に、一度もないんだ。

それでも、私と姉は、案外成績が良かったのが救いだ。

が、その成績を見せたところで、母さんは何の興味も示さない訳だ。

「そんなもん良くても、何の役に立つんや?

飯も自分で作れんかったら、成績なんて良くても生きてはいけんぞ」

そうやって優等生の私達をバカにしたが、母さんは言うほど、飯も作らなかった。

 

二日酔いで早起きして、不機嫌な母さんが作る、

姉の弁当は悲惨極まりなかった。

白飯と竹輪2~3本。

絶句した。

自分の弁当は自分で作ろうと心に固く誓ったものだ。

 

母さんの、こんなエピソードは山ほどある。

ほとんど悪口に等しい。

それもしょうがないじゃない?

母さんと付き合うのは、本当に大変だったんだから。

でも、母さんは必死に頑張ってきたんだと、今なら少しは分かる。

ただ、その必死の矛先が、めちゃくちゃズレていたってだけだ。

楽しかったよな、母さん。

こんなクレイジーな母さんと暮らして、

私は、楽しかった。

もう少しの間、楽しませてくれよな、母さん?

たれ蔵とカズコ

 

ありがとうは、言わないけどね。