九龍湾は観塘避風塘(Kwun Tong Typhoon Shelter)から北西に伸びる水路をはさんで啓徳空港に面していました。
滑走路と地下鉄の駅までが900~1,000mしか離れてなかったんです。
丁度私が子供の頃から住んでいる阪急岡町駅と大阪空港の滑走路の間が1,200~1,300mですから似たようなもんですねぇ。
深水捗では頭上をかすめるように飛んでいた飛行機が、ここでは目の真ん前で離着陸してたんです。
飛行機には馴染みが有りますし、空港に近い街というのは何となく親しみが持てるんですね。
今は新空港に移転したので、九龍湾は飛行機の爆音の点では静かな街になりました。
ビクトリア港でブイ泊まりしている船から貨物を運んで荷揚げしていた、空港に面した岸壁もコンテナー輸送が主流になったので昔の喧騒は消えましたねぇ。
西から偉業街、観塘道、牛頭角道と大きな三本の道が南北に通っています。
偉業街の西側の海との間は工業地区、東は高層住宅がMTR(地下鉄)の高架と観塘道、牛頭角道を越えて山裾まで立ち並んでいます。
香港の典型的な普通の街で名所も何もありません。
強いて言えば、昨年のSARS騒動の時に、大高層住宅が丸ごと隔離されて有名になった、淘大花園(アモイガーデン)は地下鉄九龍湾駅のすぐ近くですが、これは名所といえるのかどうか・・・。
駅周辺をウロウロしていると、学校が多いのに驚きます。
中学は偉業街に威霊頓(Wellington)、牛頭角道より東に瑪利諾工業、慕光書院と3つなんですが、小学校が駅の東側の高々300mX600mくらいの狭い地区に、慈敬、柏徳、聖馬太、聖道、司徒浩、天主教、ミン(門+虫)僑、道教、貴顕と9つもあります。
日本と違って、ビルの一部に間借りしてる、校庭など無い小規模な学校がほとんどなんです。
それにしてもこの数の多さはねぇ。
それだけ人口密度が多く、子供も多いと言う事ですなぁ。
香港の普通の勤労者の生活を見るのには絶好の場所ですが、そんな事をしたいという物好きは、まぁ居て無いでしょうねぇ。
ほんなら何でここへ来るかといえば、旺角の釜飯屋が無くなった今となっては、香港で一番美味いと信じている釜飯屋があるんですよ。
私もその釜飯屋がなければ、何ぼ何でもここにわざわざ来ることはなかったでしょうなぁ。
おすすめの釜飯はカエル釜飯、ハムユイ釜飯。
地下鉄九龍湾駅の西には徳福花園(団地)、東には香港の大規模団地でも初期の物の牛頭角下邨(団地)が観塘道を挟んで聳え立ってるんです。
外で食事をする習慣を持っている廣東人の団地らしく、1階部分には軽食堂が何軒も並んで営業していて、住民は日常の朝晩の食事をそういう店でするそうです。
香港人が普段どんな物を食べているのかを経験するにはこういう店はもってこいです。
衛生状態なんかはあんまり深く考えん方がエエでしょうね。
こういう店のメニューに生ものは皆無やし、毎日食べててもピンピンしてる連中が居てるんやから、そうそう心配することはないと思いますがね。
こういう食堂は安い早い、味も値が安い割りには不味くはないですね。
そうそう、香港人のいいまわしの特徴に「悪くない」と言うのが有りまして、これは褒め言葉なんです。
「悪くない」=「良くもない、即ちプラマイ0」かと思えば、0よりはズ~っと+に振れた評価なんですね。
似た言い回しに「無問題(ンーマンタイ)」=問題は無い=「大丈夫」というのがあります。
良いなら良い、と素直に何で言わんのやろ?
返還前後には、そういう高層住宅の1階で営業している飯屋で、未だ古い小吃(軽食の小店)スタイルの店が有りました。
今でも残っているかどうか?
プラスティックの風呂の腰掛け風のが入り口付近に積み重ねてあるからすぐ判る。
何処が古いスタイルかと言えば、カウンターの前に、背もたれのない木の3~4人掛けのベンチが有りまして、そうですなぁ・・・、日本でも昔、夜泣きソバ屋が使ってたような奴です。
これに座るのかと思うと、それにしてはカウンターが無闇に高い。
まるで曝し首みたいな感じなんですわ。
常連がくると、先ず隅に重ねて置いてある風呂の腰掛けを持って来て、ベンチの上にそれを置いて座るんですよ。
そうするとカウンターが丁度良い高さになるんです。
風呂の腰掛けは低いから、ワンコロがお座りしたような格好ですなぁ。
横から見たらかなり間抜けな格好でっせ!
見よう見真似でやってみましたが、真中に座るとベンチの板が薄いから、ビョンビョンするんですよ。
まるで枝に止まってメシを食べてるみたいな感じですねん。
端っこに座るのもデングリ返りそうで怖いしなぁ・・・。
これは不安定で落着きませんでしたねぇ。
おかげで、美味しかったのか不味かったのかよう判りませんでした。
聞けば、昔はそういうスタイルが多かったんやそうです。
一体何で椅子の上に椅子を置くてな怪体なことをしてたのか、今もって不明ですわ。
便座の無い洋式便器や中国風の床から40~50センチ高いしゃがむ便器の使い方はこの伝統を踏まえてるのかも知れませんねぇ。
しかし、洋式便器のあの細い縁に駆け登ってナニをするというのは、中々バランス感覚を要求されて、落ち着けませんよ。
さすがに雑技団、軽業の本家だけの事はおまっせ。
けど、中にはドン臭いのがいて、転落する事もあるみたいです。
ところで、こういう住宅団地+工業団地の地域は深夜になるとチンピラが出没するんです。
22時以降、建物の間の薄暗がりにたむろしている中高生を見たら、君子危うきに近寄らず。
真面目な連中かもわからんけれど、あえて近づかん方が安全です。
こういう連中は経験が少ないから、手加減という物を知らん。
おまけに獲物を見極める眼力がない。
幾ら、お金持ってません、襲うても手間損でっせ!という貧乏たらしい姿(ナリ)をしてても、ヤラれる時はやられますねんて。
もっと悪い事に、自分等も怖いからすぐに凶器を持ち出すんやそうで、それも素人やから手槍(拳銃、ハジキ、チャカ)てな物やのうて、刃物を振り回すらしい。
同じ切られたり突かれたりするにしても、夜店で買うたような安物の、切れ味の悪いのんでギシギシやられたら余計に痛いがな。
そんなん、かないませんよ。
そういうわけで、この付近を深夜に徘徊する事はお控えになるように、強~くお勧めします。
2004/05/20
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