maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

53-ED BARRAR-08-U.S.A.1964-No.53(8/3)

2022-06-05 16:19:59 | 虚々実々-U.S.A.-1964

リス撃ち

バートのテントの辺りが良かろうと連れ立って出かけました。
途中で食堂に寄ってリス入れの紙箱を貰います。

リスの活動が活発なのは朝と夕方。
枝の茂った中に居る時は撃ちようが無いので、リス撃ちは、木を駆け上がったり、駆け下りたりする朝と夕方が良いんだそうです。
バートのテントは Troop 45 のサイトの先。
テントの向うは緩やかな下り坂です。
銃は必ず水平より上に向けて撃つのが決まりだそうで、安全の為だそうです。
あんなに素早いリスをライフルで撃つよりも、散弾銃の方が良くは無いかと訊いたら、そんなもので撃ったら木が傷むし、リスがグジャグジャになって食べられないんだそうです。
けど、鳥なんかは散弾銃で撃つのと違うかなぁ?

バートのテントに到着すると、ん?リスなんか影も形も見えません。
気配を察したかな?
しばらく息を潜めて待ったけれど、コソッとも音がしません。
猟場をクリスのテントに移動。
此処は安全な方角が30度くらいの狭い範囲なので、撃つほうは一塊にならざるを得ません。
座って撃っていて、頭の上から熱い薬莢が降ってくるのは勘弁願いたいので、一番左端に陣取りました。
パン!と誰かが発射しました。
何だか音も軽薄ですねぇ。
「Boo!」「Oh Dad!」などと文句を言われているのはクリス。
一発撃つとしばらくは出てこないんだそうです。
ワッ!目の前の木にリスが・・・!
10mも離れていない木をリスが駆け下りてきました。
アッチコッチの木に居るみたいですが、目の前の4本以外は危ないので打てません。
パン、パン、パン、と皆が発射しました。
私は銃口をアッチへ向けたりコッチへ向けたりするばっかりで、動いているリスに狙いをつけることも出来ず、引き金を引けないままです。
「撃ち方止め!(Stop the fire!)」
ボブが走っていって2匹尻尾をぶら下げて帰ってきました。
へ~、命中させたんですね!

音がすると一瞬動きを止めるので、そこを狙うんだそうです。
この辺りの木には、相当弾丸が食い込んでいそうですね。
「鉛だし、22口径(直径約5mm強)の小さな弾だから問題無いさ」っていうんですが、製材するときに危なくないんでしょうか?
尻尾をヒモで括ると靴下を干すようにぶら下げて、首の横にナイフを入れて血を抜きます。
思った程、血は出ないですね。
身体が小さいからそんなに血も無いのかな。
生きているのを手で首を締めたり、刃物で刺して殺すよりも鉄砲で撃つほうが生々しさが少ないですね。
出刃包丁で刺し殺すよりもピストル、ピストルよりもライフル、ライフルよりもミサイルの方がという風に、行為の結果としての死と距離が開くほど罪悪感が薄れるのかなぁ。
私以外の全員が「当たったのは自分の弾だ」と小声で言い張っています。
私、発射してないから仲間に入れません・・。

その後待てど暮らせどリスは出てきませんでした。
そりゃ奴らは命懸けですからね。
国旗降納の時間が近づいたので、大きな紙箱に、不運なリスを2匹だけ入れて食堂に持って行きます。
小熊小父さんが受け取って、ニヤッと笑って何か言ったらしく、皆少ししょんぼりしています。
何て言ったのか訊いたけど教えてくれませんでした。

納得出来ない戦果なので、明日の朝、5時にバートのテントに集まってもう一度リス撃ちをする事になりました。
Honey に銃を返しに行くと、リックは国旗降納の為に着替えの最中。

「どうだった?」
「2匹だけなんで、あすの朝早くにもう一度やります」
「じゃあ銃は明日朝食の後にでも返してくれ、今夜は皆自分のテントに持っていっていいよ。クリーニング・キットを忘れるなよ」
今日使った弾はトムのと違ってクリーニングしないと銃が傷むんだそうです。
撃ってないからしなくても良いか?と思ったら、試し撃ちをしてるんです。
テントに持っていったところで、いくら何でも、文字通り「闇夜に鉄砲」は危険すぎるので、正直いって邪魔っけ。
ア、そうか、そうでもしないと、リックは朝早くに起こされることになるんですね。

幾ら明るいといってもテントで分解して部品でも落としたら一大事。
それよりも分解の仕方がわかりません。
夕食後、ここに集まって銃のお掃除をする事になりました。

今日はフライドチキン。
何です?このデカイフライは??
ニワトリを半分にして揚げてあるんですね。
足と手が付いたカシワの半身、これは迫力が有るというか、粗雑というか・・。
鍋で揚げたのでは、こう上手く均一に火が通らないと思いますが、あの雑貨屋は何か秘術を使っているんでしょうか?
見た目は悪いけれど、確り味がついていて美味い!
皆んな2個(1羽分)喰ってますが、とてもじゃないけど1っ個で充分です。
どうやら2つ食べないのは私だけ見たい。
「もう食べないのか?」と聞くから「充分だ」と答えると残っていた半身は一瞬で無くなってしまいました。

しかし、全く、武器をこんなに簡単に私なんぞに持たせてよいものでしょうか。
幾ら豆鉄砲の親分みたいな銃でも、当たれば大怪我、運が悪いと死ぬかも知れません。
大小、白黄取り混ぜた20才ソコソコの兄ちゃん達4人が手に手に銃をぶら下げてウロウロしていても、誰も何んとも感じ無いんでしょうか?
確かに、撃つ場所と方向を守るとか、使い終わったらすぐに、レバーを操作して弾を全部抜いて、必ず銃口を地面に向けて持つなどという安全に関する事はキッチリ守ってますね。

ボスはお年だから良いとして、リックは家族が居ないのかと訊ねたら、息子2人は長期のサマーキャンプに行っているんだそうです。
長期ってどのぐらいかと思ったら、ほとんど夏休み中なんだそうです。
奥さんはサマーキャンプの近くの、両親の所へ帰っていて、リックも8月の下旬には家族を迎えがてら、そこへ行くんだそうです。
何処かと思えば、アイルランド!
「エ~ッ、地図の端と端(both ends of Map)じゃないですか」と驚いたら怪訝な顔で「端?」。
日本の地図では右の端っこがアメリカ、左の端っこがヨーロッパなんですが実は両端は以外に近いんですね。

初めて会った時から「カーク・ダグラス」に似ているなぁ、と思っていたので、そう言うと、
「ワォ!君はそう言った世界中で2人目の人間だ」
もう1人は奥さんだそうです。
バードは「カーク・ダグラスが聞いたら、君を殺しに来るぞ」と言うんですが、そうかなぁ?
そう言えば、小熊小父さんはジェームス・ギャグニィーに似ているけれど、それを言うと喜ぶか、リスのグレービィーをぶっ掛けられるか、の判断が難しいので、いわない方が安全みたいです。

食後、手に手に銃を持って Honey でお掃除。
思ったよりも簡単にブロックが外れるんですね。
ざっとボロ布で拭って、オイルを引きます。
針金の先に小さなボロ布をつけたのを銃身に通してお終い。
明るいところで見ると、角がすれて銀色になっています。
相当酷使しているようです。

「やってるな」とリックが入ってきました。
「キッチンからのプレゼントだ」と新聞紙の包みを開くと、ドーナッツが出てきました。
昼ご飯の無愛想な面構えのとは違って、上に砂糖がかかっています。
フライドチキンを半分で止めたのは正解でしたね。
他の連中はカシワを1羽丸ごと食べたのに、平気な顔でドーナッツをパクついています。
「今、お茶を入れるからな」バードが「カーク・ダグラス」と小声でいってウインクしてますが、まさかねぇ。
丁度良いので、昼に聞いた「自然」の話で良く聞き取れなかったところを教えてもらいました。
判らないような顔をしていると、廻りの皆んなが言い方を色々替えて説明してくれるので助かります。
けどあまり色々言われると、かえって判らなくなることもあるんですよ。
メモが無かったので、ドーナッツを包んでいた新聞紙の端っこに書いたんですが、果たして後で読めるかなぁ?

小脇に銃を抱えて自分のテントに向かっていると、いい雰囲気ですねぇ。
探検ゴッコもこうなればかなり本物です。
コッドの下に銃を置いて、椅子に腰掛けて食堂の方を眺めていると、動物の目が光ったような気がします。
今夜はアライグマが見られるかも知れないと、懐中電灯をもってそ~っと餌台の方に近寄りました。
気付かれるといけないので懐中電灯は消したまま。
薄闇を透かして見ると、確かに何かが居ます。
風はドッチから吹いているのか?気持が上ずってしまって、どの方角から近ずいても風上になるような気がします。
10m位の距離に近ずくと、ガサガサ音がしていたのが静かになりました。
感ずかれたか?
しばらくじっと身動きしないで居ると又物音がしだしました。
一旦立ち止まってしまうと、足音を立てそうで中々動き出せません。
そーっと懐中電灯の狙いを定めてパッと照らすと、アライグマです。
一瞬動きを止めたかと思ったら、サッと居なくなったのでゆっくりは見られませんでしたが、少なくとも4匹以上。
すごいですねぇ!アライグマがまるでノラ猫みたいに居るんですよ!

満足してテントに帰ると、中から何かが走り出てきました。
冗談抜きに、腰が抜けるほどビックリしたけど、一体なんだったんでしょうか?
そんなに大きな感じはしなかったからリスかもしれません。
蚊が居ないのを良い事に、夜も戸口を開けっ放しで寝ているので、今までも寝ている間に結構何かがウロウロしていたのかもしれませんね。
眠ってしまったら、少々の事では目覚めないから、悪い事さえしなければ、何方が訪問してくれても良いんですけどね。
もっとも戸を閉めたところで所詮はテント、布1枚ですし、裾から幾らでも入って来れるし、屋根も布でクマやクーガーなら簡単に破るでしょうから、さして効果があるようにも思えません。
リスならともかく、クマなんぞに22口径の豆鉄砲を撃ったところで、果たして効き目があるのやら。
それなら、何かは知らないけれど、私が急に起きて驚かせでもして、焦って噛まれたり引っかかれたりするよりも、戸口を開けて置いた方が逃げやすいからお互いに安心。
第一、開けている方が森の匂いがして気持がいいんですよ。

 

2003/06/12:初出
2022/06/05:再録

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