maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

喜愛香港-013 ヌングァマ

2003-11-28 15:55:49 | 虚々実々-喜愛香港

ヌングァマ()というのは香港の有る廣東省の昔話に出てくる怪物ですねん。
いかにも中国南部の昔話と言う感じがするんです。
ヌングァマという得体の知れん癖に、どこか間の抜けた語感が何と無く好きでねぇ。
という字は音を借りただけで、何の意味も無いそうです。
ちょっと息抜きに(最初から抜けてる?)昔話などをご紹介しょうかと思います。
アニメに押されて影が薄い上に、オマケに核家族化で、ヌングアマも出番が無いので寂しいやろね。
昔話いうのは、その地方の雰囲気が結構味わえて好きなんですが、旅行者では中々聞けませんねぇ。
勝気で頭が良くて働き者といわれている香港女性は昔からの伝統やったようですね。

ヌングァマ-1 廣東省翁源県


昔あるところに一人暮らしの小姐(シュゥチェ=娘)がいたそうな。
粽(チュン=チマキ、ピラミッドみたいに葉っぱで包んだ、具入りのもち米を蒸したのんです)を実家に届けに行く道で、牛みたいにずんぐりして、頭のでかい爪と牙が鋭く、毛むくじゃらで目をギロギロ光らせたヌングアマに出っくわしたんやて。

ホンで、ヌングアマが恐ろしい笑いを浮かべて「その粽を全部俺に食わせ!」言うたんやて。
普通は腰抜かして「どうぞどうぞ、何やったらお茶でも持って来ましょか?」となりますわねぇ。
そこは勝気な廣東娘「アカン、これはおばあちゃんとこへ持って行くねん!」震えながらもそない言うた。
「そうか、ほんなら粽は要らん。そのかわり今晩お前を八つ裂きにして骨まで喰うたる」とヌングアマが言うたんですて。
チマキを全部よこせ言うぐらいやから、ヌングアマはお腹が減ってたに相違無い。
何も、晩まで待たんでも、直ぐ食べりゃぁエエ、それよりも力づくで粽をとりあげりゃぁエエと思うんですがねぇ。
こういう理屈を敢えて無視出来るのが昔話の強味ですなぁ。
何ぼ勝気な廣東娘でも、さすがに怖(コワ)なって「助けて~!助けて~!」と叫んだら、人に掴まったらエライこっちゃ、とヌングアマが森に矢のように逃げていった言うんです。
この辺も判らん!人を食おうかという怪物が、人に掴まるのが怖いと逃げるか?

粗探しは置いといて、
こうなってはおばあちゃんのところへ行くどころや無い。
何をする元気も無く、鹿のように跳んで家に帰って、入り口の敷居に腰をおろして、ワァワァ泣き出したんやそうです。
結局、粽を届けへんかったんなら、ヌングアマに食べさせたっても良かったんやがな・・。
通る人ごとに「ヌングアマに出っくわしてしもた、私を今晩食べる言うてるねん。何とかなれへんやろか?」と泣いて頼んだんですねぇ。
いかにも廣東の光景ですなぁ!
夫婦喧嘩して、いかに亭主に非が有って、自分の主張が正しいかを、そこいら中の人を相手に演説してるおばちゃんを、何度か見たことがおます。
一度などは市場の露店の親子が揉めて、それぞれが聴衆を周りに集めて大騒ぎしてましたねぇ。

ところが、誰も彼もヌングアマと聞いただけで、土気色の顔になって物もよう言わんのですて。
娘はますます激しゅう泣き喚いたんですな。
すると竹篭を担いで、デンデン太鼓を鳴らしながら雑貨屋がやって来たんやそうです。
「何でそないに泣いてはりますねん?」
「かくかくしかじか」
「そんなら、刺繍針を20本上げるから、入り口の戸に立てときなさい。ヌンぐアマが闇夜に来て戸に触って、きっと手に怪我するやろ」と針を置いて行ったんです。
それぐらいではまだヌングアマに勝てんと、娘は相変わらず戸口に腰を下ろして泣いてたんですなぁ。

すると肥やしを運んでる人が通りかかって、犬、牛、ブタの糞をくれたんやそうです。
「これを戸口に塗り付けたらエエねん。臭うて、臭うてヌングアマも入る気になれんやろ」
親切に戸に糞をゴッテリ塗りつけてくれた。

このぐらいでは未だヌングアマを防げんと、娘は声を張り上げて泣き続けてたんです。
すると蛇屋が篭に一杯の蛇をユッサ、ユッサ担いで通りかかった。
「ヘビいらんか~、ヘビ!ヘビでっせ!」
こんなん日本では通り掛りませんで・・。
売り声を上げながらやってきた蛇屋は、娘が泣いてるのに気が付いて「どないしましてん?」
「かくかくしかじか」
「ヨッシャ、怖がらんでもエエ、力になろやないか!」
「おっちゃん、お願い何とか助けて」 「一番大っきなんを2匹あげよう。木にも登るし、ムチャクチャ毒のきついチュックイップチン(竹葉青)や。これを水瓶に入れといたら、ヌングアマが汚れた手を洗おうとしたら、カプッ、いくらヌングアマでもイチコロ!これで安心や」
親切に水瓶に蛇を二匹入れてくれた。

竹葉青というのはアオハブ(青竹蛇)、相当種類があって、共通しているのは樹上に居てる事。
下を通ると木の枝から飛び掛ってくるというんですが、ホンマかいな?
作り物とちやうか?と思うほど綺麗な色のがいてます。
私の知る限りではハブはハブでも、そんなに強烈な毒蛇やないと思うんですがねぇ。
ペナンの寺院で祭壇の前に設えた止まり木の枯れ木に、線香の煙に酔わされて十数匹オトナシイに絡んで居りました。
今は薬用、食用に乱獲されて減ったとはいえ、廣東にはコブラ、雨傘蛇(百歩蛇)等というそれこそ噛まれたらイチコロのが居るんですが、何で此処で竹葉青(アオハブ)が出てくるのか?

要らん詮索はホドホドにして、次回へ、

2003/11/28

喜愛香港-014 ヌングァマ-2

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