maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

喜愛香港-014 ヌングァマ-2

2003-11-29 15:57:31 | 虚々実々-喜愛香港
ヌングァマ-2 廣東省翁源県


それでも未だ娘が安心出来んで泣いてると、やって来たのはスッポン売。
「どないしたんや?訳を話してみ」
しかし、怪体な物売りが連続で来ますなぁ・・。
これも泣いてるのが娘さんやから、皆んな声を掛けるんで、小汚いオッサンが泣き喚いてたんでは、係わり合いになっては面倒と、目を合わさんように他所見して通り過ぎるか、罷り間違うたら「五月蝿い!」と石ぶつけられまっせ・・。
話を聞いて「それは大変や、ヨシ、」とでっかいスッポンを鍋に入れてヌングアマをやっつけようという作戦。

「もう泣かんとき。泣いてもヌングアマが逃げるわけや無い。何とかせないかんねんやろ?鍋に水入れたらアカンで。スッポンは水の中では噛まへんのやよって。蛇に噛まれたヌングアマは鍋の水で手を洗おうとするやろ、そこをスッポンがガブッ!死なんまでもビックリして逃げ出す事は間違い無い」
(このくだりは甚だ疑問ですなぁ。スッポンは水の中でも立派に噛むよ)

それでもまだ泣いていると今度はタマゴ売がやってきました。
「タマゴ~、おっきいタマゴ~!ん?どうしたん、亭主と喧嘩か?」
「かくかくしかじか」
「怖わがらんでもええ、タマゴを10個あげるから、カマドの熱い灰に埋めときなはれ。ハブに噛まれ、スッポンに噛まれて、手は血だらけ。きっとカマドの灰で血止めをしょうとするやろ。そこで埋めといたタマゴがボン!灰がボワッ、目潰し喰ろてヌングアマも逃げ出す事請け合い。」
昔話というのはこういうもんで「タマゴが破裂する前の丁度食べ頃半熟の時に、ヌングアマがやって来て、タマゴ食べて精つけられたら余計に手強いがな・・」なんて考えたらアカンのです。

それでも娘は未だ泣くのを止めんかったんです。
こういうしつっこさと繰り返しは昔話の特徴ですなぁ。
今度は砥石売と物差し売がやってきたんですて。
物差しはエエとしても、砥石は担いで売り歩くのが辛いよ。
一人ずつやって来たんでは、何ぼでも話が長なって間に合わん。
そろそろ終盤で忙しいから二人連れ。
砥石売の言うには、百二十斤(7.2Kg?)の砥石を2つ上げるから、ひとつは寝台のカーテンの上にヒモでぶら下げて、もうひとつは下でつっかい棒で支えとき。ヌングアマがカーテンを開けたらヒモを切るねん。ゴッチンと頭にあたってお陀仏や。」
上のは判るんですが、下の砥石はつっかい棒で支えたまんま、この後話に出て来ませんねん。
細かい事を訊くようやけど、とおたずねしたら、上下の砥石の間に頭をはさんで威力倍増やて。
そないに上手い事いくかいな?

物差し売も横手から「金(カネ)の物差しあげるから、砥石で死なんかったら、これで叩き殺しなはれ。」
娘はこれで安心やと泣くのを止めて、度胸を据えて準備に取り掛かったんですなぁ。
安心て、今まで大概色んな手立てをして貰ろても安心出来んかったのに、砥石と物差しで突然安心するか?
しかし、最終的には、援軍を頼まず、自分一人で迎え撃つというのが凄いねぇ!
独立独歩、自力更生、自立精神旺盛な廣東小姐の真価発揮ですなぁ。

夜になると金の物差しを両手で握り締めて、寝台に一人で横になって、ヌングアマに止めを差す心構えを固めたんやそうです。
先刻(サッキ)まで、ビィ~、ビィ~、泣いてたんは一体誰やねん?
追い詰められて度胸が据わると、女性は男性より手強いのは何処の国でも一緒かいな?

1時間待っても、2時間待っても何事も起こらず、とうとう真夜中近くになった頃、涼しい風が吹いてきて、疲れきった娘がウトウトッとしかけた。
そこへ、ドスン、ドスンと足音も物凄くヌングアマがやって来たんですわ。
娘はヌングアマが来たのを知って、手に金の物差しを握り締めて、息をつめて耳を澄まして様子を窺ってたんです。
ど~です、この気丈な事!
私なんか、そんな恐ろしい目に合うたら、座り〇ョンベンしてアホになってしまうやろね。
今でも香港の娘さんの中には、目に張りがあって、如何にも勝気そうな可愛い娘(コ)が居ります。
そういう娘(コ)が、中々他人には見せん頼り無げな表情で、すがりつくような素振りを見せるてぇと、もぉ、オッサンの配線は瞬時に弾け飛んで、イチコロにたぶらかされるんやそうです。(危なぁ~・・!)

「オラッ、開けんかい!開けへんのやったら俺が開けて入っていって骨ごと喰うたるからな!」
まるで、戸を開けたったら、喰わんと挨拶だけして帰るような台詞ですが、そんな事ぁはありません。
開けても、開けんでも、何が何でも最初から喰う気。

ヌングアマがガンガンと戸を叩く音がしたかと思うと、
「あ痛~ぁ!こんなとこへ針を植えやがって・・。」
しばらくすると、
「臭さ~っ、何や!糞まみれや無いか。糞アマ奴!」
頭に来たヌングアマはなおもガンガン戸を叩いて、やっと中に入ると、先ずは糞にまみれて血だらけの手を洗おうと水瓶のところへ。
外から帰ったらウガイ手洗い、なかなか躾のエエ化け物ですなぁ。

水瓶には廣東名物猛毒のアオハブが、今か今かと出番待ち、ガジッと噛み付かれてイテテ・・。
さすがは怪物ヌングアマ、直ぐに引っくり返って死なんところがエライ!
「何んちゅうモンを水瓶に入れてるねん!性悪女が・・、そうや鍋には綺麗な水が有るやろ」
性悪女と言うときながら、鍋には綺麗な水が、と思うあたりあんまり賢い化け物や無いねぇ。
鍋にはスッポンが噛む気満々、今や遅しと口を開けて構えてます。
さすがに用心しながら、そ~っと入れたヌングアマの指を「待ってました!」とガブッ!
「ワッ、痛たた・・。売女奴に騙されて、酷い目に合う。何が何でも骨ごとバリボリ喰うたらんと気がスマンぞ。」

とにかく灰をまぶして血を止めようとカマドを覗き込むと、タマゴがバン。
何ぼなんでも此処は無理がありすぎる、何時間もタマゴが破裂せずに持つもんか、などというのは囲炉裏でタマゴを焼いた事が有る者だけ。
一般民間人はそんな事判らんから、まぁええか。
卵の殻と灰が目に入ってヌングアマは目が見えんようになってしもた。
「クソ!何処までやる事がしつっこいんや?オノレもう許さん!」
もともと喰う気でやって来たんで、許す気なんか欠片も無かったんやないのかいな?
手探りながら大股で娘の部屋に入ろうと、鴨居で頭を厭ほどぶつけながら戸をブチ破って寝室にはいってきたんですなぁ。

「[女偏+表](ピゥ)子、大野鶏、妓女、絶代!(これは訳さん方がエエなぁ・・、とにかく悪口ですわ)ざまあ見さらせ、汚い手を使うても俺を殺せんかったやないか。もうすぐお前を骨ごと噛み砕いたる、それで俺の恨みが晴らせるいうもんや。」
まったく、逆恨みも甚だしい・・。
ヌングアマはそう言いながら寝台のカーテンを引っ張ったんです。
娘は咄嗟に砥石をぶら下げている紐をプッツンと切った。
百二十斤の砥石がヌングアマの頭蓋骨を直撃、頭カチ割れて血が飛び散った。
ここぞとばかり娘は金の物差しで一回、二回・・と百六十九回叩いたら、もう娘の手が動かんようになった。
さすがのヌングアマも叩き殺されてしもた。
廣東小姐侮りがたし・・。

こんなわけで、娘はヌングアマに喰われずに済んだばかりか、死んだヌングアマを高く売って油、塩、砂糖、酢、醤、羌、鉄を買うことが出来ましたとさ。
どうです?最期には商売のネタにして化け物を売り飛ばすあたり、さすがですなぁ!

好的小孩子、請睡♪(坊や~良い子だネンネしな♪)

ヌングアマ的故事、一巻の終わりです。

さてさて、お次は島にでも渡りましょう。

2003/11/29

喜愛香港-015 長洲-1(チェンチャウ) 

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