maidoの”やたけた”(ブログ版)

ジジイの身辺雑記。今日も生きてまっせ!

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虚々実々-心筋梗塞顛末記 目次 をアップしました。(2016-11-12)
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正直者探し 又は嘘つき探し 一旦終り

2015-02-03 16:14:14 | 支離滅裂-迷想迷夢-正直者探し

のまま行ったら何処まで漂流するか止め処が無い。
無理を承知で何とか捻じ伏せてしまわんと・・・

「イカン、何処へ行っても臭い!」
「そらお頭、ハナと三寸と離れてない所に臭いの元があるねんから、元を取らんとあきまへんがな。
臭いにおいは元から絶たなきゃ駄目!」
「オイ、何ぞ拭くもんは無いかいな?その紙よこせ!」
「アッ、それは・・」
止める間もなく、折角書いた手紙で拭いてクチャクチャポイ。
水瓶から汲んだ水で、デコを洗うて、やっと人心地ついた。
「ナニをそないに騒いでますねん、大仰な」
丸めて放られた手紙の皺を伸ばしながらアホは平気な顔。
「これこれ、そんな汚い臭い手紙、皺を伸ばしてどうともなるもんや無い。
もう一回書いたらエエがな」
「せっかく書いたのに勿体無い、汚れてるのは端だけやから此処をこう破って、」
「お前、臭さいことないのんかいな?」
「皆目」
「どれ、貸してみ、ワッ、臭さ~っ」
「さよか?いや大して匂わんなぁ」
「お前、鼻が悪いのと違うか」
「さすがはお頭、よう言い当てた、瑕(キズ)が無いのが玉に瑕、何処も彼処もエエとこずくめ、様(サマ)が良すぎて憎たらしい、と言われてるワタイでも、鼻だけ働きが今一、形はエエのに惜しいこっちゃ」

「もう逆らわんとこ。
さいぜんからゴジャゴジャいうてる嘘か真か言うのはな、お前、この事からも判るやろ」
「何です?」
「他のものにとって、その手紙が臭いのんは真実。
ところがお前には匂わん、となればお前にとっては臭うないのが真実。
ところが臭う無いのはお前一人、そうなると皆んなの真実はお前の真実とは違うと言う事になる。
かと言うて、お前は嘘を言うては無い。
しかし鼻が悪い事を知らん人はお前を嘘つきと思うわなぁ」
「ヨッ、哲学者!チョウ、チョウ、チョワヨ~、ア、チョッタ!」
「止めんかい!ワシ等は見てのとおりの追剥、世間では悪いとされてるやろ」
「そらもう悪いどころや無い。
追剥、山賊なんてな奴は、磔、獄門サラシ首にしてもまだ足らんぐらいの極悪人」
「お前なぁ、もうチョット周り見て物言え。
お前以外は皆んな追剥やねんど!」
「すんまへん、それをころっと忘れてた」
「わしらの仲間では、盗れば盗るほど、腕利きや、エライ奴っちゃと誉められる」
「しかし悪い事は悪おまっせ」
「ほんなら、何か、慶長の役で、別にこっちへチョッカイも出して無い韓国(カラクニ)に殴りこんで、人から虎まで殺しまくって、財宝だけや無しに、陶工、機織、学者まで盗んでかどわかしてきた大名が、英雄豪傑と言うのはどないなる?
あれは大掛かりな押し込み強盗、誘拐やで。
追剥よりも性質(タチ)が悪うないか?」
「う~、それは時代が・・・」
「時代が変れば正邪、善悪、真偽が変わるのかぇ?」
「う~・・・」
「日本では英雄豪傑も、海の向こうでは人殺し盗人やないか?
一人二人殺せば人殺し、何百人何千人殺せば英雄、その境目は何人や?
立場、見方で、嘘と真は裏表、裏と表の境は何処やと思う?
こちらの親切、あちらの迷惑、良かれと思うてやったのなら、どんなこどでも許されるというのは通るかぇ?」
「く~」
「人間、世間と言うのは、紙に書いた絵やないで、幅も有れば奥行きもある。
当たる光で景色も変る、違う目玉には違う模様が映る。
一人一人の思いも違えば、好みも違う。

切羽詰って、ホンマニどうもならんようになるまで、自分で道を切り開こうと頑張る者もおれば、カラスがカァーと啼くように、自分でやるより先に、口を開けたら『助けてくれ』と簡単に人を頼る人もいてる。
どっちがエエとか、悪いとか言うのや無いで、どっちも良うて、どっちも悪い。
嘘は悪い、正直は善と割り切れるもんでもなかろう。
自分の物差しで人を測って、合わんからと非難したり、怒ったりしてはイカンのとちゃうか。
生きんがために嘘もつくかもしれん、欲得に駆られての嘘も有るやろ。
しかしそれを皆んな悪やときめつけられるかぇ?

嘘で助かる人も居れば、真で落ち込む人も居てる。今日の嘘が何時本当になるかも判らん。
見方を変えたら、嘘は真実で、真実は嘘。
皆んなそれぞれ、自分の真実を信じて生きてるねんで」

「お頭、お願いワタイを弟子にして!」
「いや、いや、追剥、山賊の癖して、ついつい、偉そうに知った風な説教がましいことを言うてしもたなぁ。
さりとて、あんたに弟子になられたんでは、食前食後に泡を吹かんとイカンから、神経が持たん。
放してやるから、おとなしゅうに親元へお帰り。
ほら、早よ縄解いたれ。
解けたか、よし、そんならトットと帰りなはれ、シッ、シッ」

「そない邪険に、ノラネコ追うようにせんでもよろしいやろ」
「何を言うてるんや、もうおまはんに用事は無い、ハイ、行った、行った」
「以後気をつけますよって、どうぞお願い」
「そればっかりは、獄門曝し首にされようとも願い下げ、ど~ぞお引取りを」
「それではワタイの気がすまん、せめて身代金を取ってお渡ししてから」
「お願い、そういう聞き分けの無い事言わんと、帰ってちょうだい、ね、お願い」
「イ~ヤ、こうなったら男の意地」

「困ったなぁ、そうやワシ等が追剥、山賊やから、身代金がどうこうと話がややこしいのや。
オイ、手下共、聞いてのとおりや、このアホと縁を切るにはワシ等がアシを洗うしかない。
解散してしもたら身代金を渡す相手が無くなる。
相手が無ければ意地の立てよがない。
そうなりゃ何ぼこいつでも、意地が立たんのなんのとは言わんじゃろう。
どやこれを切所(キッショ)に自主解散するか?」
「お頭、よう言いなはった、最近取り締まりがキツイし、不景気で貧乏人ばっかりが通る。
営業努力に見合う稼ぎが出せまへん。
これではジリ貧、何れは倒産、そろそろ転職する潮時かいな?とは思てましてん」
「エライ難しい事考えてるねんなぁ!
皆も依存は無いか」
「ヘ~ィ」
「ホワァ~ィ」
「ワタイは反対・・・」
「お前は関係ないがな、ほんならエエなぁ?
ヨ~シ!ヒノ、フノ、ミィ、で
 解~散~ん!
「バンザ~イ」「バンザ~イ」「バンザ~イ」
パチ、パチ、パチ

「ちょっと待って、待ちなはれ!藪から棒に何んですねん?
そんな薄情な、ワタイは一体どうしたらエエねんな?」
さぁ、そうと決まれば長居は無用、一刻も早う選挙区に戻って、
(それは国会か?)
嫌がらせに出した解散動議が通ってしもた野党みたいに、オロオロしてるアホを一人残して、土地鑑のある連中はワラワラっと闇に散ってしもた。

一人取り残されて、どうにもこうにも仕様が無い。
此処で一人で追剥ぎを開業するにも、度胸は無しの、力もなし。
返り討ちに遭うて、追剥が身ぐるみ剥がれてたんでは生活が成り立たん。
情けも面目も無いが親元に帰るかと、半日かけて帰ってくれば、いくらアホでも可愛い息子、心配してただけに小言もキツイ。
少しは殊勝な気持になったアホが「すんまへん」と頭を下げた拍子に、かぶってた手拭がハラリ。
「アッ、判った、皆まで言うな。
そうか、頭を丸めてまで反省してるんか。
ヨッシャ、早よ風呂へなと入って、ゴハン食べ、おなか減ってるやろ。
これ、これ、あんさんらも泣いてんと、なんぞ美味しいもん用意したりなはれ」

これから先は言わずもがな、追剥は足を洗って堅気になるは、アホもちょっとは世間の機微、裏表を垣間見て、

 

めでたし、めでたし。
出し抜けですなぁ・・・。いや~、終わった、終わった!

【蛇足】
く~、無理やりの力技でこじ付けましたねぇ。
まぁ、何ですわ、十人十色、色んな人が居てはります。
気の合う奴、合わん奴、ケッタクソの悪い奴にも「好きや」いうて夫婦になろか言うのんがいてるのが不思議。
向うから見たらコッチが不思議。
鬼か悪魔かと思うようなオッサンにも懐くマゴがいてる。
事ほど左様に人生色々、島倉千代子。
その色々雑多な人間、思惑、価値観がゴッタ混ぜになって渦巻いてるのが世の中。
キッチリ、ハッキリ理屈で割り切れんところが、面白いでんなぁ、飽きまへんなぁ。
目に角立ててキャンキャンいうも良し、我関せずと高みの見物してる気になるも良し、真面目結構、不真面目結構。
ただ、それを人様に押付けるのは傍迷惑。
人間弱うて当たり前、恥にもならんが、自慢にもならん。
混沌こそが真実、不確実性こそが不変の真理。
判らんことを何んぼかでも解き明かそうと、釈迦もイエスも孔子に老氏、法然、親鸞、デカルト、カント皆んな悩んで、それぞれが理論、理屈を捏ね上げた。
ぶっちゃけて言うたら「人間て何やねん?どう生きるのがエエのんかいな?」が出発点やと思うんですわ。
ホンで宗教やら哲学が生まれて、それが元で又揉め事が起こって殺し合い。
本末転倒、支離滅裂、余計何が何やら判れへん。
何が何やら判らんのを楽しむ人も有れば、辛抱出来んお方もある。
自分の物差しを持てんで、既製品に頼るお方も有ります。
そこで宗教を看板にした商売が成り立つんですなぁ。
無信心も良かろう、信心も結構、何処ぞの誰ぞの飯のタネになってるだけでも人助け。

オンコロコロオンコロコロセンダリマトウギソハカ、
オンコロコロオンコロコロセンダリマトウギソハカ
(何のこっちゃ?ジュンサイにも程があるやろうに・・)

ワ~イ、ホンマに終わりでっせ♪
一時はホンマに、どうなる事かと思たなぁ。

ヨシ、これで気分一新、例の奴と組討しょうか・・。

2003/07/18(16)


正直者探し又は嘘つき探し 其の四

2015-02-03 16:13:31 | 支離滅裂-迷想迷夢-正直者探し

山よりデッカイ猪(シシ)は出ん、海より大きな魚は釣れん。
と言うたものの、山賊の始末をどうしたもんか?

「判らん奴っちゃなぁ」
「よう判らさん奴っちゃなぁ」
「何ぃ!」
「頭(カシラ)、辛抱、辛抱、お仕事、お仕事、金の為、金の為」
「お前等は脇で面白がってるだけでエエやろうが、ワシはもぉ辛抱が出来ん」
「差し出がましいようでおますが、そこを何とか辛抱するのが人の道・・・」
「お前に辛抱出来ん言うてるのや!」
「そう、一々怒ってては、人は使えまへんで。
人の上にでも立とうかという人は、心は広く、考えを深く、腰は低く、志は高く、実るほど頭(コウベ)をたれる稲穂かな」
「アホに意見されてりゃ世話は無いわ。早う書け!」
「どないに?」
(はて、困った何んぼにしょうか?百万円では流れに合わん、どっちみち出任せや、エィ十両!)

「使いの者に十両渡せ。さもないと私はひどい目に合う。と、まぁこう書かんかい。」
「不味い文句でんなぁ、色気もシャシャラも有れへんがな。
せめて、『ととさま、まいる』くらいの出だしは考え付きまへんか?
それに十両は安過ぎまっせ、ワタイはもうチョット値打ちがあると思うがなぁ」
「うるさいなぁ!エエから書け、物には頃合いいうもんがあるのや。そら又何を書いてるねん?『と、まぁこう書かんかい』まで書いてどないするんや!」
「私はあんたの言う通り・・」
「お前、ジョ~シキいう言葉を知らんのか?」
「さぁ、聞いた事が有るような無いような」

「頭(カシラ)、頭(カシラ)、落着いて、落着いて、ならぬ堪忍、するが堪忍」
「子分の方が人間が出来てるがな、さてはアンサンが黒幕で影の親分、この頭というのは傀儡か?」
「もぉ~っ、辛抱出来ん!こうなったら金はどうでもエエ。こいつのケツから空気入れて、猪名川に浮かべて石でもぶっつけん事には、腹の虫が治まらん。」
「カエルやあるまいし、そんなことをされてたまるもんかいな。
腹の虫が治まらん時は陀羅尼助かお百草、センブリかゲンノショウコ、海人草でも飲みなはれ」
「頭(カシラ)、泣いたらあかん、泣いたらあんたの負け、男の子でっしゃろ」
「お前までがワシを嬲(ナブ)るか」ポカッ!
「アッ、子分といえば子も同然、組織にとって人は宝。
人は石垣、人は城、その貴重な人材に・・」
「口ごたえするな!」ボカッ!
「暴力はいけません!暴力は」
「暴力や無いわい、愛のムチや」
「生憎そう言う趣味はおまへん」
「オノレ!まだワシをおちょくるか!」ポカ、ポカ、ポカ

「頭(カシラ)横暴、頭(カシラ)横暴」
「お前等ワシにたて突くんか!」
「造反有理!、造反有理!」
「我々わァ、民衆の力を集めェ、旧来の身分制度を打ち破りィ、頑迷固陋、反革命的な勢力を打破しィ・・・・」

「まぁまぁ、仲間割れしてる場合やおまへんやろ。此処は一つ私の顔に免じて」
「私の顔?ボケ、縛られてる身で何を抜かす。お前のその口が原因や!キィ~ッ!」

親分、興奮して泡吹いて倒れてしもた。

「ホレホレ、ボーッと見てんと、気道確保して、帯緩めたりなはれ。
呪(マジナイ)いやけど気は心、そこの草鞋をデコに載せとき」
「いやこれは・・」
「イヤとかオウというてる場合や無いやろが。 縛られててもこういう事にはあんたらより詳しいねん。
黙って言う事聞いて、早よ載せなはれ。
そないに斜めやのうて、真っ直ぐ載せんと落ち、オンヤ?斜めに載せて落ちんとはこれ如何に?あんたは手妻遣いか奇術師か?」
「そやからその草履はワタイがさっきカドで犬のナニを・・」
「そのナニで引っ着いてるのんかいな。それは肥やしが効いて一段と良かろう」

「どれどれ、しょうが無いから身代金の請求書でも書いたろかいな。え~、おとっつあんへ、と・・
ほれ出来た。これをワタイの家に持って行って、お金を取ったら、あんたらの仕事は済むのやろ」
「チョット待っとくんなはれ、手紙を見せた途端に、捕り手がバラバラ、捕まり~の、千日前でお仕置きの、骸(ムクロ)は西道頓堀は幸町の浜で船に乗れられ~の、難波島の先で芦原にポイッと野晒し、カラスの玩具になるのはご免でっせ。
どない書いたか読んどくんなはれ」
「何?お前等無筆かえ?」
「そうですねん、釜から直では余りにも味気ないから言うてるのに、ケチな頭が買うてくれん」
「何んのこっちゃ?」
「お前等、オヒツ買え、と言うたやおまへんか!」

「ワタイも疲れてきた・・。頭もエライ、よう辛抱してるわ。
ちゃうがな無筆というのは、字が読めんというこっちゃ」
「ほんならそうと、ハナからいうたら判るのに、粋がって外国語を使うから判れへん」
「立派な日本語やがな。心配しな、そんな根性の悪い事を書いては無い」
「さぁ、そう言われても、信じてエエもんやら悪いもんやら」
(ヨシヨシ、やっと話が戻ってきたど、一時は何処へ行くんかと気が気や無かったがな。ク~、往生したなぁ・・)

「ワタイは人に嘘をつかれて騙されて、嘘をついたり、つかれたり、騙しあいの町中の暮らしにホトホト愛想が尽きて、正直者が住んでるところを探しているうちに、おまはん等に捕まったのや。
その私が嘘を言う筈が無いや無いか」
「その話が嘘では無いという証拠は?」
「そんなもん有るかいな」
「それでは信用できんなぁ!」
「疑り深い奴やなぁ、そない言うんやったら、ワタイの目を見なはれ、嘘をいうてる目かそうでないか」
「目脂(メヤニ)が付いて、血走ってますなぁ、ちょっとやぶ睨み?」
「そうや無いがな、目には真(マコト)が現われる言うやろな」
「見えん、目玉が乾くほど根を詰めて見てるけど、マコトも何にも現われて来まへんで」
「困ったもんやなぁ、嘘をつくと目が泳ぐ言うやろ、ワタイの目は泳いで無いやろ!」
「確かに、抜き手もクロールもしてまへん、それにしても、今まで目玉の水泳は見たことが無い」
「どう言うたら信じてもらえるんやろなぁ?」
「どう聞いたら信じさせてくれますねん」

いままでやったら、困った振りをしてたら、親切ごかしの世話焼きが、しゃしゃり出てきての援護射撃、どうにかこうにかなって来たけれど、こうして知る辺も無い所でたった一人になるとそうはいかん。

くっさ~!くっさ、くっさ、くっさ~!
「アッ、お頭(カシラ)お目覚めでっか。おはようございます!」
「アホンダラ、犬のナニをワシのデボチンに塗ったんはドイツや!」
「ドイツやのうて日本人のコイツ」
「いや、それは悪気が有ったんやのうて、良かれと」
「良かれと思うはそっちの勝手、されたワシはエエ迷惑、
臭っさ、臭っさ、ワッ!臭っさ~!こんな事してくれと、何時ワシが頼んだ?」
「あんさん泡吹いてたから・・・」
「頼みもせんことをようもしてくれたなぁ、ワシに何ぞ恨みでも有るのか」
「いや、そやから良か・・」
「良かれと思うてしたら、どんな事でも許されると思たら大間違いじゃわい。
狭苦しそうやと亀を甲羅から引きずり出したら生きては居れん。
溺れたらイカンと金魚を水から出したら死んでしまう。
腰が曲がって気の毒にと、バアサンの腰を無理から伸ばしたら、これまた大事(オオゴト)。
相手の事情をよう聞いて、エエか悪いか考えてからせなアカンのじゃ、判ったか!」

パチ、パチ、パチ、パチ!
「いやいや、さすがは山賊、追剥とは言え、親分ともなると大したもんや、感服仕った。時に、お主(ヌシ)、心学を何処で学ばれた」
「まだ居ったんかいな、このアホは。あッイカン、こいつの顔見ただけで頭が・・」
「あんたも人を使うて、気苦労が多おますねんやろ。
此処はワタイにまかせて、無理をせんと休んどきなはれ。
身代金はキッチリ取って上げるから」
「おい、こいつ自分の言うてる事が判ってるのんかいな?
ドコゾの世界に自分で自分の身代金を取る奴があるもんか」
「へぇ、それが、さっきお前等では頼りない言うて、親元への手紙を書きよりました。
恥かしながら、ワタイら皆んな字が読めん。
此処の事をお上に知らせる手紙やもしれず、もしもそうなら一網打尽、雁首並べてサラシ首、団体割引で死出の旅路」
「難儀やなぁ、キッチリ、アホが伝染(ウツ)ってるがな。
どれ、その手紙とやらを見せてみ」
「それはエエけど、その額のナニを何とかして貰わんと、顔を向けられると、臭うて、臭うて」
「ウッ、思い出した!臭っさ、臭っさ~!ウワ~!臭っさ~い!

て~事で続く。(始めたもんはしょうが無い。何処の野面で果てるやら、行ける所まで行こかいな、)


正直者探し又は嘘つき探し 其の三

2015-02-03 16:11:07 | 支離滅裂-迷想迷夢-正直者探し

さて、どないしょう?
結末を考えたんでは前に進まん。書いてるうちにどうなと始末は付くやろう。
山よりデッカイ猪(シシ)は出ん、海より大きな魚は釣れん。

そこへ帰ってきた住職、「あら?お弟子さんですかいな、確り修行してエエ植木屋さんになりなはれや」
「いえ、ワタイはこのお寺に弟子入りしょうかいな、と考えてただけやのに、この慌てもんがこんな事にしてしもたんです。こうなったら何が何でもこのお寺に弟子入りを」
「そう簡単に考えて貰ろても難儀やなぁ。物の弾みで頭を丸めたからとて、俗世に未練が有っては修行が成り難い。未練は無いのか?」
「厭になっただけで、未練はおます」
「そないハッキリと未練があると言われると却って気持がよろしい。何が厭になったんかいな?」
「皆んながワタイに嘘をついて騙しますねん、これは大阪の町中やから人情が世知辛うなって、我が俺がでないと生きられん、騙した者が責められず、騙された方が馬鹿にされる。
ワタイ嘘をつかれるのも厭、つくのも厭。町を離れて純朴素朴な正直者の居るところで暮らしたいと遥々旅してまいりました」
「遥々言うて、ものの四里そこそこやがな。するとあんさんは今までに嘘をつかれても、ついた事は無いのかいな」
「おません!」

「ホゥ、それは立派な事じゃ、それなら今更修行せずともよかろう。拙僧なんぞ、未だにその時は正しいと信じておったのが、別の時、別の見方をしたらそうや 無い、どちらが正しいとも言えず、どちらが間違っているとも言えず、心ならずも嘘をついたようなことになる事が有る、まだまだ修行が足りんなぁ、と反省す ることがしばしばじゃ。
それを何んのためらいも無く、『無い!』と言い切れるとは大した物、とても拙僧ごとき未熟者がお教え出来るような事は無い。
まして俗世に未練が有るとあっては、尚更此処に居てもらうワケには行かず、どうぞ、何処へなとお引取りを」

「アッ、イヤ、それは、待って、」もう手遅れ。
態(テイ)よう断られてしもた。
さすがは住職、一目でこの男の腰の据わらん、甘ったれた根性を見抜いた。
ヤドリギの寄生虫、エエ所取りの責任取らず。
人に頼って己の力以上の事をして、我の手柄顔でおお威張り。
人が誉めんと機嫌が悪い。
抱っこしてくれ、おんぶしてくれ、やれ抱きかた悪いの、おぶり方が悪い。
当て事とフンドシは向うから外れる、というのを聞いたことが無い。
自分が思うようにならんと、そらもう大騒ぎ。
あいつが悪い、こいつが悪い、ワタイはちっとも悪う無い、何で皆んなして苛めるねん。
得意の「のに」「くれへん」の大安売り。
「住職やと思うたのに」
「出家しようと思うたのに」
「お寺に置いてくれへん」
「誰も助けてくれへん」
さすがの住職もアホらしなって逃げてしもた。
こうなったら植木屋に、と思えば、触らぬ神に祟りなし、纏(マト)わり付かれては身の破滅、雲を霞と失せにけり。

行く先々で悪い奴にばっかり出会うのは、何ちゅう悪い星の巡り合わせやと、不平不満ではち切れそうになって歩いているけれど、その悪い奴等が寄り集まって、毎日殺し合いもせんと、仲良う楽しく暮らしてるのは何でか?とまでは考えん。

別にこれと言う当ても無く、岡上の町を通り過ぎ、千里川のたもとで一休み。
「何じゃい、千里川?江戸と大阪でも百五十里も無いぞ。折れて曲がって渦巻いてるようにも見えん、ようもこないな見え透いた嘘の名前を付けたもんじゃ、世の中に真実いうのは無いもんか」と川にまで八つ当たり。
刀根山の坂を休み休み登り切り、万葉集にも詠われた、月の名所は待兼山。
山と山との谷間へと差し掛かった頃は日もとっぷり暮れて、間(マン)の悪い事に月も無く、風に葉音がザワ、ザワ、ザワ、どこやでキツネかケェ~ン。

「気色悪!こんなとこに追い剥ぎでも出たらワヤやがな。何処ゾに家でも無いもんか?」
出たら厭や、出んといて、と思うたら、キッチリ出るのが世の常。
ガサガサッと音がしたかと思うと「オイ、待たんかい」
大体こういう所で「またんかい」などと言われて素直に待ったら、ご馳走になって、小遣いくれて「又お越し」てな訳が無い。
判ってはいるものの、足がすくんで待ってしもた。

顔を明かりで照らした追剥の手下が「アカン、カス引いた」
「何がカスじゃい?」
「坊主やがな、坊主殺せば七生祟るいうで、後生が悪いから仕事にならん」
「どれ、ホンに頭は坊主やが、身なりは違うぞ、町方の扮(ナリ)やがな?見たところ座頭でもなし医者でもなし。お前何もんや」
「問われて語るもおこがましいいが、」
「判った、皆まで言うな。タダのアホやな」
「ウヌ、そう簡単に見破られては、無念残念、口惜しや」

「おい、手下共、笑ろてんと仕事せんかい!」
ワッと集った(タカッタ)手下に身ぐるみ剥がれてフンドシだけのスッポンポン。
「何とにやけたフンドシをしてるや無いか?チリメンのフンドシとは奢ったもんやなぁ!」
「自慢や無いが新町の虎菊が若旦那にと、首尾よく貰うまでの艱難辛苦はいかばかり、そもそも事の始まりは・・」
「そこで気の済むまで一人で言うとり!どや、金は持っとったか?」
「へい頭(カシラ)!」
と差し出す巾着を見てみれば、其処ら辺の貧乏人が持つような物と物が違う。
京あたりの偽物の和桟やなしに本物の唐桟留、サントメ縞に伊賀組紐の緒がついて、結構毛だらけ、ネコ灰だらけ、ケツの周りはXXX。

これはひょっとしたら親からも、一稼ぎできるぞと、隠れ家さして引っ立てて行かれたんですな。
軒が落ちかけのあばら家の、土間の黒木柱に縛り付けられてしもた。
「お前、何処の誰じゃい、正直に言え、いわんと段平(ダンビラ)で切りちゃちゃくりにしてまうど」
「一日に二回も縛られるとは、ワタイがどんな悪い事をした言うねんな?」
「ゴチャゴチャ言うてんと早よ吐きさらせ」
「生憎腹が減ってて、吐くもんが無い」
「何を抜かすか、親は何処の何者じゃい」頭を一つどやされた。
「ワ~ン、何にも叩かんでも・・ワ~ン」
「難儀な奴やなぁ、エエ年こいた大人が泣くな!」
「親は大阪は道修町、神農さんの一本南筋で薬種問屋。ワタイは二十二で一人息子、鱧(ハモ)皮のキュウリ揉みが好きで、納豆が嫌い」

「イラン事言わんでもエエのや、薬種問屋と言うからにはおアシは仰山あるのやろな?」
「何ぼ問屋でもムカデやあるまいし、テテ親と母親に二本ずつ、番頭、手代、丁稚、飯炊きのオハルはんを入れても全部で十二本、犬を手伝いに呼んでもやっと十六本」
「アホ、ワシは下駄屋や無いねんぞ!足の数聞いてどないするねん!」
「そやけどお足と・・」
「ゼゼの事やがな」
「ゼゼといえば、あらわれわたる、ぜぜのあじろぎ?ウチは大津やのうて大阪」
「おちょくってたら、承知せんど」
「ワタイもこんな目に遭わされて不承知」

「もうエエ、ほれ此処に矢立と紙があるよって、親に一筆書け」
「縛られてては書けん」
「おお、そらそうや。おい、手だけ解いたれ。こんな腰抜け何もようせんやろうが、油断はするな」
「早よ、一筆書け」
「ちょっと手が痺れて」
「一々文句の多い奴やなぁ、素直にハイと言えんか」
「ハイ、ハイ」
「馬子やあるまいし、ハイは一回でエエ、オイオイ、そら又何を書いてるねん?」
「仰せの通り、『一筆』と草書で、我ながら惚れ惚れするほどの出来、何やったら行書でも書きまひょか?」
「これは、これは、思わず拝んでしいまそうな程、果てしの無いアホやなぁ!出来の悪い子ほど可愛いと言うから、親はすんなり金だすじゃろ」

て~事で続く。(ホホー、どんどん違う方向に行きますなぁ!最初に筋も何も考えんからこういう事になるねんなぁ・・。)


正直者探し又は嘘つき探し 其の二

2015-02-03 16:09:02 | 支離滅裂-迷想迷夢-正直者探し

うかっと始めた与太話、どう納まりがつくのやら、

頭から出来そこないのウドンを掛けられた出来そこないの男、瘤にウドンの汁がしみるやら、熱いやら、側のお宮さんの北の鳥居の傍らの手水の水で頭を冷やして顔洗うて、一息ついた。
むさんこな奴に出食わしてエライ目に遭わされてワヤ苦茶、それにしても腹が減っては戦が出来ん。
何ぞ無いのんかいな?と見回して、ひょっと目についたのは「名物ドジョウ寿司」。
ドジョウと寿司の組合せは想像がつかんけれど、これなら頭から掛けられても熱うは無いやろう。
注文して出てきたのは、寿司飯を四角に押した上に、何やら焦げ茶色のソボロ風の物が薄っすらと載った代物。
恐る恐る茶色の物体の正体を問えば、其れこそがドジョウやそうで、いわれてみれば開いてつけ焼きにしたドジョウ。
名物に美味い物無しという言葉に間違いないのを改めて思い知らされたが、美味い不味いは二の次で、ともかく腹ごしらえは出来たものの、さてこれからどっちへ向こうか?
左へ行ったら伊丹、右は熊野田上新田、真っ直ぐ行ったら能勢街道。
町方のモンはすれててイカン、何かと言うたら人をだまくらかそうと油断がならん。
どっちへ行ったら、すれてない純朴な正直者が多いのやろか?
こうなりゃ神頼みや、ひとつ神さんに訊いてみよう、と社殿の前で「なにとぞ正直者の居る場所をお教えください、たのんます」とぶつぶつやっておりますと、 「あんさん何をさっきからお願いしてはりますねん?よっぽど難しい事でっか?」としがんだようなバアサンが声を掛けてくれたのにすがりついた。
他力本願、人頼り、お前の頭は何処にある。
地獄で仏、原田神社でババァ、溺れる者は藁をも掴む、オゴル平家は久しからず、聞くは一時の恥じ、聞かぬは一生の恥じ、もっと効かぬは豆腐に釘、このバアサンに教えて貰お。
実はコレコレしかじかで、と話した所がバアサン横手を打って「それなら此処やがな」
「此処?って此処の此処でっか?」
「此処が此処やのうて何処が此処やねん、此処は此処に決まってますがな」 とココ、ココと名古屋コーチンの寄り合いのような按配ですなぁ。
半信半疑で「ホンならおばあさんは正直者でっか」
「当たり前の突き当たり、正直バアサンポチ連れて、敵は幾万ありとても、桃からカラスがハトポッポ」

さすがのアホも考えた、チョッと待てよ、あのむさんこなウドン屋が居るようなところが正直者の集まりとは、これは俄かに信用出来ん。
このバアサンがホンマに正直者ならそれで良し、嘘つきやったら「私は正直者」と嘘をつく筈。
嘘つきが正直に「私は嘘つきです」と言うたら其の途端に正直な嘘つきになって、嘘つきな嘘つきやなくなる。
すると正直に「私は嘘つきです」と言うた言葉が嘘になる。
「私は嘘つきで」までは嘘つきやけど「す」と言うた途端に正直者になって、その途端に嘘つきになるやないか。
待て待て、ココは肝心なところやぞ、逆に嘘つきが「私は正直ものです」嘘を言うたら、これは立派な正真正銘の見上げた嘘つきやけど、その言うた言葉が嘘やとどうして判る?
あ~いたまがあたい・・・、ちゃう!頭が痛い。

「そらアンサン痛かろう、瘤に血が滲んでまっせ」
「そうや無いねん、バアサンあんたが嘘つきやったら『私は嘘つきや』というはずがない。ホンマに正直やったら、これもまた『私は嘘つきや』という筈がな い。してみると『あんさんは正直者でっか?』と世間の誰に聞いても、答えは一つ『私は正直者でっせ』そうなると何を信じてエエか判らんがな」
「ヌワニィ!この正直者の年寄りを捕まえて嘘つき呼ばわりするんかいな!この世に生を受けてより、人様に嘘つき呼ばわりされた事がないのに、こんな若僧青二才に嘘つき呼ばわりされたる口惜しさ、おのれ、タダでは置かぬ、其処へなおれ!」
「ちょっと待ちなはれ、あんたが嘘つきやと言うたんやないがな、例え相手が正直者でも嘘つきでも、『正直者でっか?』と尋ねたら、返る答えは一つ『私は正直者』これではどっちか判らんなぁと言う一般論を言うただけ」

「イッパンもヤッパンもあるかい、ヤッパンマルスは軍楽隊、嘘と一番札はついたことが無いこの清く正しい手弱女に何ちゅう事を言いさらす、ワタイは正直者と思うのか嘘つきと思うのかキッチリ、ハッキリ返答せぇ。事と次第によってはただ置かん」
「そないに青筋立てていわれても、どっちがどうとも決めかねる」
「大人しいに聞いてたら、このアチャラモクネンのドガシンタレが、人を嘘つき呼ばわりして、年よりやと思うて茶の子にするか。麻田の殿さんにご奉公した折 りに、習い覚えた薙刀の腕は年は取っても鈍りはせんわい、今家に帰って伝来の薙刀持って来て、千六本に切り刻んでやるほどに、覚悟定めて其処に待ちゃれ い!」
「まぁまぁバアサン一寸待ちなはれ、そないにイキリ立たれてはどうにもならん、わたいの言いようが悪かった」
「い~や、この年になるまで嘘つき呼ばわりされた覚えはない、この恥そそがで置いてはご先祖様に顔向け出来ん、見ん事恥をそそぐ程に原田大明神もご照覧あれ」
「いや、もうそないに大層に」
「何を抜かすかこの下郎が、こうなったらお前と刺し違えてワタイも死ぬ、覚悟!」
いきなり胸倉を掴むと見るや、なけなしの毛を束ねた髷から、剥げちょろけて真鍮色が出た銀かんざしモドキ、抜く手も見せずに逆手に持って、悪鬼羅刹か般若の面か、目を吊り上げた形相の凄い事。

「待った、待った、どうぞ了見しておくれ、どんな事でもして謝る。若い娘となら辛抱もできるが、おまはんと刺し違えは許してくれい」
「其処まで言うなら、考えんでも無いが、口先だけで謝られてもこのババァの壱分が立たん。何ぼ出す?」
「ヘッ?」
「魚心有れば水心、地獄の沙汰も金次第、出すもん出したら許さんでもないぞえ」
「ヘッ?」
「屁の病で死んだ亡者やあるまいし、ヘッばっかり言うてるんやないわいな、何なら息子を呼んで落とし前つけさせようか?」
「ヘッ?」
「お前ウドン屋から飛び出して来たやろ、あそこに居てたんがワタイの息子」
これはいけません、前門のウドン屋、後門のババァ、空でカラスはアホ~、アホ~、進退此処に極まれリ。
またウドンでリンスはしとうないでありんす、ババアと心中はもっとしとうない、虎に跨る和藤内。
懐から巾着を取り出して、一枚、二枚、三、四、五枚、手元を見てるバアサンが振りかざす簪がだんだん下がってきた。
一枚財布に戻したら、腕がピョンと元の位置に上がったから、泣く泣く五枚差し出したら、礼も言わずに引ったくって、スキップ踏んでウドン屋へ駆け込んだ。
行きがけに「アホを嬲って小遣いもろて、これで寿命が三年延びた♪」憎らしいやら悔しいやら。
「もうこんな世間に一時も居りとう無い、そうや出家しょう。何処ぞにお寺は無いかいな?」

あても無く池を巡れば瑞輪寺に行き当たった。
嘘か本当か、あの一休禅師も居たという地元だけで有名なお寺。
竜宮城の紛い物みたいな山門を入ると、折り良く一人のお坊さんが。
「えらいすんまへん、実は出家しようかなぁ、と思うて居るんですが、出家はどんな段取りでしたらエエもんか、ヒトツお教え願いとうございます」
「ホゥ、ホゥ、それはお若いのに感心なこっちゃ、先ずは頭を丸めて下働きから修行しなはれ、ちょっとお待ち」
庫裏へ引っ込んだかと思うと、手桶、剃刀、数珠一連もって出てきた。
「ハイハイ、この数珠を手に掛けて、中では掃除が面倒なから、此処で得度剃髪して進ぜまひょ」
気軽と言うか、イラチと言うか、数珠を手に掛けさせると委細構わずゴリゴリ剃りだした。
「あの~」
「ハイハイ、宗旨は違うても御仏は只一人、「ア~ノクサンマンダラ」でも「オンコロコロオンコロコロ」でも「ナンマンダブツ」何でもエエから御仏を念じなされ」
「いや、ちゃいますねん、まだ決めた訳や、ア痛ッ!」
「痛かったか?修行修行、瘤があって剃りにくいから、間を剃刀の峰で叩いて平らにした」
「そんな無茶したらあきまへんがな、なにやら額にタラ~ッと流れてきたような」
「見たらイカン、見るから痛い、知らぬは極楽、知るは地獄。ちょっと瘤を削っただけ、骨までは行ってないから安心おし」
「安心出来るかいな!」
「このくらいの傷でヤイヤイ言うもんや無い、切腹したらもっと血が出る」
「土佐の侍やあるまいし、なんでワタイがお寺で切腹せんならん!」
「ほれ、じぃっとしてへんよって今度は耳切ったがな、此処に経文を書き忘れたんが不覚やったなぁ」
「それは耳無し芳一・・」
「黙ってんと切り落としまっせ」
「切り落とされて堪るもんか、眼鏡を掛けられへんようになるやんかい!」
「ハイできた、しかし見れば見るほど格好の悪い不細工なシャレコウベじゃのう」
「そないに悪し様に言わんでも、ところで修行は何しましょ、檀家の法事に呼ばれて、ご馳走ずくめのお布施をグッスリ、まぁこの坊んさんのお姿のエエこと、どうぞ還俗してうちの婿に、てな辛い修行も覚悟してます。何しまひょ?」
「先ずは井戸から水汲んで、掃除、洗濯、炊事から始めなはれ」
「ホンで修行は?」
「それが修行や」
「いや、もっと色々教えて貰えるのとちゃいますのん」
「人に習うて修行になるかいな、沈思黙考、森羅万象、生、老、病、死、愛別離苦、怨情会苦、求不得苦、五陰盛苦に思いを致し自力で悟りを開くのが修行じゃな。禅は自力本願、自助努力してこそ道は開けるのや」
「へへぇ、さすがはお住職」
「いや、ワシャ住職ちゃうで」
「ほんなら役僧さん」
「ブー、役僧はずれ!」
「エ~ッ、ほんならアンタ何ですねん」
「出入りの植木屋、今は休憩タイム」
「其の頭は?」
「のぼせ性やから剃ってんねん」
「ようも人を騙して」
「オヤ?それは聞き捨てならんぞ、何時私が住職やと言うた?着てるもんが見えんかぇ?ハンテン着た坊主が居るもんか!あんたがどう思い込もうが、言わん限 りこっちには判らん、自分の早合点が間違うてたからとて、騙されたとは何ちゅう言い草、事と次第によってはタダでは置かん」 「そやかて」
「そやかても、赤勝て、白勝ても有るかい」
「先の難しいお話は?」
「門前の小僧と言うやろが、長年出入りしてたら厭でも耳に入って覚えるがな」
「こないに丸坊主にしてしもて」
「夏は熱がこもらんでエエぞ、雨が降り出したら直ぐ判るし、床屋に行く手間もない」
「うそぉ~!」
「ほんと!」

て~事で続く。(やろか?これはますます収拾がつかんぞ・・)
フィクションですので其のお積りで(言われんでも判ってる?そうやねぇ・・・)


正直者探し又は嘘つき探し・其の一

2015-02-03 16:04:59 | 支離滅裂-迷想迷夢-正直者探し

なるべく共通語に近い大阪語で書く心算では居りますが、ひょっとしたらお読み辛いかと思います、その際はご勘弁ください。
また、実在の地名店名に似たものが出てまいりましても、虚構中の偶然の一致、全く他意、悪意はございません。
どのみち、妄言ですよって、其処のところはお目こぼしをお願いします。
と逃げを確り打っといて、ボチボチ行きまひょか?

正直者を探すのはいかにに難しいか、昔から笑い話で良く言われとりますが、

ある男、(別に女でもエエんですが、女言葉を打つのんは慣れてないから此処は男で行きまっさ)
周りの人間共に騙されて、自分も人間である事を棚に放っぽり上げて、人間不信に陥りましてね。
まぁ、しょっちゅう騙されるというのは、本人にも騙される素地があるというか、自分勝手に都合のいいように思い込んで、相手の考えと違ってたら「騙された!」と騒いでいることも往々にして有るんですがね。

広い世間やから、どこぞに正直者ばっかりが住んでる所がある筈と旅に出たんですなぁ。
こういう事を考えるのが、そもそも「正直者」で無ければ「嘘つき」と単純明快に割り切れるという薄っぺらな考えで、片面印刷のスーパーのチラシを見てるように世の中を眺めてる証拠。
人間という融通無碍、変幻自在、善悪虚実を内包した玉虫色のシャボン玉を判って無いのか、判ろうとせんのか。

天満橋を朝立ちして、これも日本橋でも、思案橋でもエエんですが、土地鑑がないから天満橋。
お初天神、中津の渡し、三国の渡しを越えて、能勢街道を何の当てもなく歩いてきたんですわ。
これ又、別に東海道、山陽道、南海道でもエエけれど、手近な所で間に合わせただけでおます。

天竺川の土手を歩いていると、京街道との分かれ道に程近い服部は浜までやってまいりました。
浜という地名は今でも残っておりますが、この頃の天竺川は今より水量があったんでしょうなぁ、水運に使われてたそうです。
ふと見ると、道端に可愛い祠のお地蔵さんが、見れば旅の災いからお守りしてくれる有り難~いお地蔵さんやと書いてある。
あても定めもない、心細い気持になってるところやから、「これは丁度エエ、何処まで行かんならんか判らん旅や。怪我や病気は願い下げにしたいなぁ。まして 追剥、盗人(ヌスット)、山賊、お化けユーレン、物の怪、納豆、何んかに出会いとうないし、狐狸(コリ)にたぶらかされるのも風(フウ)が悪い。ヨシ、お 賽銭奮発しょ、頼んまっせ!確り守っとくんなはれや、お賽銭のタダ取りしたら、罰(バチ)が当たりまっせ」

罰当たりな事を言いながら、ドサッ!とまでは出さんけれど、チャリ~ンと澄んだ音のするのを上げて、一応は神妙にお願いしよった。
お地蔵さんに一体誰が罰(バチ)を当てられるんか?
菩薩、観音、如来といえども仲間内に罰(バチ)を当てたというためしは無いで。
充分念を入れたから、これで安心、と立ち上がったら、お乳母日傘で育った町方で足が頼んない、オットとよろめいた拍子に、小さいお堂のひさしでアタマをゴンッ。
罰当たりな事を言うもんやから、天網カイカイ、水虫痒い痒い、因果報応、イングリモングリ、きっちり自分に罰が当たった。

「ア痛イタタタ、旅の災いから守ってくれる言うから、お賽銭まで上げたのに、早速災いに出喰わしたがな。賽銭タダ取りか、いっこも守ってくれてへんやないか!エエ、お地蔵さんまで人を騙すか、さっきの賽銭どうしてくれるねん?」
契約違反は倍返しが通り相場やけど、其処まではいわん、せめて出しただけでも取り返えそうと、賽銭箱から取り戻そうにもがっちり固定してあって、逆さにして振る事も出来ん。
アホが止めときゃエエのに、木の枝を探してきて、賽銭箱に突っ込んで、何とかして取り戻せんかとゴソゴソしてたんですな。

急に後ろから頭を思いっきり張り飛ばされて、その弾みで、今度は賽銭箱の角へゴチン。
目出度くタン瘤で夫婦岩の出来上がり。

「誰や!何さらすねん?」
「何さらすやと?ようもそないなふてぶてしい頬ゲタ(セリフ)が叩けるこっちゃ。ワレどこのデンコ(チンピラ)や知らんけど、ウチのお地藏さんの賽銭をどうする気じゃい!」
「なにぃ?お前はこのクソ腐れ地蔵の身内か?ええとこに来くさった!さっきワシから騙し取った賽銭をまどえ!」
「又、盗っ人猛々しいとはオンドレのことやなぁ!口もきけんお地藏さんがどないしてお前から賽銭を騙し取れるもんか。賽銭泥棒の癖しやがって、大人しいに 謝ったら放してやらんでも無かったが、しょうもない言いがかりつけて、ワシから金をせびろうちゅうのんか。そういう了見やったら勘弁できん。そのど腐れた 根性を叩き直したろかい。オーイ」
川べりで船に荷を積んでた在所の若いもんが「オヤッサン、どないした!」ドヤドヤっと土手を駆け上がって来て、持ってた荒縄でギリギリまきに縛り上げてしもた。

「一寸の虫にも五分の魂」というけれど、五尺五寸の体の中を何ぼ捜しても魂の影も欠片も見付からんほどの、到って根性なし。
達者なんは口だけで、うるさいだけで何の役にも立たんデンデン太鼓みたいな男。
並木の松に縛られて、「正直に白状せんかい!」と取り囲まれただけで、座りションベンしてアホになるほどビビッテしもた。
それでも「賽銭は上げたけど、盗って無い、盗る気も毛頭無い。返して貰お思ただけや」と口ごたえ。
「ようもこの後に及んでまで、そんな白々しい嘘がつけたこっちゃ。正直に白状するまで許さんからそない思え。おい誰ぞお住持っさんに札書いてもろて来い」
「何の札?」
「お前もドン臭いやつやなぁ。『私は賽銭泥棒でございます。言い逃れをして白状せんので、こうして縛られて居ります』と書いてもらうのやがな。コッチも忙 しいのにこんなアホの見張りもしとれん。街道通る人がこいつの嘘に乗せられて、ひょっと縄でもほどいたら逃げられてしまうがな。此処で懲らしめとかんとこ いつは一生、賽銭泥棒の嘘つきで身を誤るで。可哀想でも本人の為や」
「おっさん判った、ほな行ってくるわ」と若い衆が土手下の松林寺へ飛んで行った。

これこれこうでと、若い衆がお住持っさんに説明すると、さすがは御仏に仕える身、「そんなくらいのことで人を曝しもんにしたらいかん。お地蔵さんは人を救 うのがお仕事、決して喜ばはりまへんで。どれひとつ私が行っていうて聞かせよかいな」と、わざわざ土手に上がって来はった。

「これこれ、こないに酷い(ムゴイ)事したらイカンがな。早よ縄を解きなはれ。アンタも泣きじゃくってんとワケを話してみなはれ」
「ワタイ何にも悪い事してまへん。悪いのんはこのクソ地蔵、オ~ィ、オ~ィ、オイ」
「このワロはまだそんな事をいいくさるか!」バシッ!脳天を思い切り叩かれた。
「これ、乱暴はいけまへん。なぁあんさん、ここは昔から奈良の春日さんの御神領。在の人は到って穏やかな人ばっかりや、それがこないに怒るからには何もしてないはずが無い。どないしましてん」

「そやから、騙し取られた賽銭を取り戻そうと・・」
「騙し取られた?それは穏やかでない。お地蔵さんがモノでもいいましたんか?」
「石のお地蔵さんが物いうかいな、ボンサンの癖に物知ら・・」ゴン!
こんどは拳骨でどやされた。
「オドレはどこまで根性が捩曲がっとるんや。お住持っさんにまで悪垂れほざくとは勘弁できん」
「まぁまぁ、待ちなはれ、あんたも乱暴な。そないにキツう叩いて、凹(ヘコ)がいったらどないしますねん」
「お湯に浮かべたら戻りまへんか?」
「ピンポン玉やセルロイドのキューピーやあるまいし、とにかく乱暴は止めなはれ」
「お住持っさんのお言葉やけど、どないもこないも、こいつは口でいうても効かん、身体で覚えささんとあきまへんねん」
「あんたも、此処はとにかく謝りなはれ」
「悪い事してへんのに、何を謝りますねん?」ボカッ!

「これ、叩きなはんな、というのに!見なはれ瘤と瘤の間に瘤が出来てつながってるやないか」
「ついでにマンベン無うどやしつけて、頭を一回り大きゅうしたら、瘤が目立たんようになりまっせ。」
「そんな無茶いうたらいかん。したか、してへんかはさて置いて、『李下に冠を正さず、瓜田に沓を直さず』と言いまっしゃろ、疑われるような事をしたあんたも悪い。謝って放して貰いなはれ。あんたらも、素直に謝ったら放してやりなはれや」
「なんですその『リカちゃんは無理を通さん、家電は靴を修繕せん』いうんは?」
「どんな耳してるねん?何でもエエから謝りなはれ」
「そら、最初から正直に素直にあやまったら、こんなことはしとう無いんでっせ。それを何のかんのと嘘をいうよって」
「嘘はいうて無い」
「まだいうんか」ベシッ!
「さぁさぁ、意地張ってんと、謝らんと頭が保ちまへんで」
「すんまへん」
「それだけか?『二度と盗人の真似はいたしません』といわんかい!」
「しやけど、やってない・・」ペチン!
「二度と盗人の真似はいたしません」
「声が小さいなぁ!」
「二度と盗人の真似はいたしません」
「最初から正直にそないいうたらエエのに、要らんいい逃れをホザクよってエライ目に遭うんじゃ。何処えなと行きさらせ」

ドツかれた頭は痛いは、口惜しいは、無理やり嘘はいわされるはで首うな垂れて差し掛かったのは住吉さん。
正直者を捜しに来たのに、出足から自分が嘘をいわんならん羽目になって、もうわやくちゃ。
何ぞにすがらんと、情けのうて足が進まん。
お地蔵さんはあてにならんが、神さんはまさか人を騙すような事は無かろう、と神前に拍手打ってお祈りをしたけれど、お賽銭は首尾よく験(ゲン)があってからの後払いと、せこい事。
足の神さんの天神さんにもお参りして、無事に正直者が見付かりますようにと、ここも賽銭は出来高払いの後払いでお願い。

岡町さして坂を上がって大きな池の土手を空き腹抱えてトボトボ行くと、ウドン屋がおました。
嘉兵衛(ヨシベェ)さんが土手でやってるから、土手嘉(ドテカ)。
モッサリした名前で、味も愛想もモヒトツでも何とかやってゆけるのは、一見さんの多い街道筋のおかげ。
知らんと一回食べるのはしょうが無いけれど、二回三回となったら、これは病気か物狂い。
「名代うどん、名物」の幟に引かれて店にはいったら、客の姿は一人も無く、イカツイおっさんが渋い茶色の前垂れでヌッと立ってるだけ。
よくよく見れば渋い茶色と見えたのは、よごれで端の方には在りし日の白い色が・・。
これはイカンと出ようとすれば、素早く出口を遮断しておっさんが仁王立ち。
「何しまひょ?」
「何が美味しおます?」
「どれでも美味しおます」
「中で一番は?」
「人夫々に好みがあるから、どれが一番とは言いかねますけど、シッポクなんかは人気がおます」
「ケツネより美味しおますか?」
「ケツネも美味しおまっせ」
「ほんならアンカケはどないです」
「それも美味しおます」
「オッチャンそれでは決められんがな、正直にどれが一番旨いかキリキリ白状せんかい」
「あんた酔うてるようにも見えんが、絡んでるのんかいな、ゴジャゴジャ言うてんと、なんなと決めなはれ」
「ほんなら・・・と、ケツネ!」
空きっ腹に不味いもの無しというけれど、人の言う事を鵜呑みにしたらイカン。
世間には有るんですなぁ、空きっ腹でも不味いものが。

この男、幸運というか不幸というか、その滅多に無い逸品に、盲亀の浮木、優曇華(ウドンゲ)の華が咲くまで待たんでも、見事に回り逢うことが出来ました。
このまま此処で一生を終えるかと思う程、待たされた挙句に威風堂々とお出ましになったのは、他所では先ずお目に掛かれん、凶暴かつ獰猛なる怪しの代物。

ダシはダダ辛(カラ)く、うどんはボワ~っとふやけて、今まさに溶け崩れるかという、春の淡雪の風情。
早う食べんと、何時何時(イツナンドキ)糊にならんとも限らんのをギリギリ寸止めの名人芸。
キツネというからにはアゲは何処、アゲ恋しやと尋ぬれば、尋ね来て見よ、信太なるあはれ葛の葉でも有るまいに、捜せど捜せど面影もなし。
アゲが無ければケツネや無い、ただの素ウドンやないかいな。
素ウドンならばまだ辛抱できるけど、箸にも掛からんこの面妖なる代物は一体何や?

「大将、わたいケツネを頼んだんやけど・・・」
「其処に出したがな、目の前にあるのんが見えんのかいな?」
「はて?目の前に出てるといえば、ひょっとしてこの醤油味の糊の出来掛けみたいなんがそうでっか?」
「それがキツネやのうて、何がキツネやねん」
「そないおっしゃっても到底そうは思えんのやが」
「はは~ん、難癖つけて金を払わんととタダ喰いしたろという魂胆か?」
「いや、例えお金を貰ろても、これだけはよう喰わん」
「何?喰えん?親子代々の味自慢のウドンに何処が不服でケチをつけるのや?」
「確かに珍しくはあるけれど、食い物とは到底お見受けしかねる」
「ようぬかしくさった。金は要らん、こうでもして喰らわしたら!」
丼鉢を持つが早いか、頭の上からぶっ掛けた。
「熱ツツツ!何をするねんな、是は又乱暴な!」
「乱暴も、三宝もあるかい、トットと去(イ)にさらせ。ウロウロしてたら湯掛けるど!」
瘤だらけの頭にウドンをブチマケられて、是がホンマのコブウドン、さながら枯れ山水の出来損ね。

て~事で続く。(やろか?これは収拾がつかんぞ・・)

2003/07/15