市場街に並んだ魚屋はまるで水族館。
ナポレオン・フィシュのでかいの、石斑魚(セッパンユィ)、嘘やろ？と思うほど大きなカラフルな龍蝦(ロンハァ＝イセエビ)。
面白がって見て廻ってると、何じゃ？これはひょっとしてカブトガニ？
オイオイ、こんなもん食べるか？
日本やったら天然記念物やんか、食べたりしたらえらいこっちゃで。
カミさんと呆れていると、ベトナム辺りに居りそうな痩せぎすの兄ちゃんがニッコリ笑いながらやって来て、「好食(ホォセック＝美味しいよ！)」と親指立てて勧めてくれたけれど、値段聞いて止めた。
「この石斑魚は清蒸(チンジャォ)にしたら美味しいやろなぁ、けどきっとエエ値やで。」
すかさず兄ちゃんが「美味しいよ！」。
「あのイセエビ立派やなぁ」
「美味しいよ！」
うるさいなぁ、カミさんに言うてるんやがな！
そやけど、気の良さそうな兄ちゃんやから、この店で買うたりたいなぁ。
次に目にとまったのは、何んや？形はシャコやけど大っき過ぎへんか？
兄ちゃん又もや「美味しいよ！美味しいよ！」。
こう何んでも「美味しいよ！」といわれると、少々信用出来んなぁ・・。
値段を訊いたら、これがホンマかいなと言うほど安い。
まさか殻の中は水ばっかりとチャウやろな？と1っ匹捕まえてみたら、しっかり身が入ってますねん。
よしこれにしよう！と6匹買うて、兄ちゃんに何処の料理屋が美味い？と訊いたら、1軒づつ指差しては「美味しい！」の連発。
何の参考にもならんがな・・。
最初に目に付いた店が小奇麗やったのでそこに入ったんです。
シャコの入ったポリ袋を下げて店に入ったらシ～ンとしてて誰も居てない。
あれ？休みか？と思ったら奥から兄ちゃんが出て来た。
シャコを見せたら「Fry(炒める)？Deep fry(揚げる)？Steam(蒸す)？Boil(茹でる)？」オ～、これは助かった話が通じる！
「貴君は如何なる料理が良いと思うか」
「私は、塩とニンニクで炒めるのをお奨めする。此奴はそれが一番美味である。」
「それをお願いする」
てな具合で、いとも簡単に料理法は決定。
シャコだけではあんまりやから炒め河粉と焼き飯を注文しましてね。
出来てきたシャコは期待通り、イセエビに負けない美味さとボリューム。
窓越しに西貢海を眺めながら、二人だけで貸し切り状態で最高でしたわ。
カミさんがトイレに行っている間に、奥から「あんドーナッツ」みたいな雰囲気のおばちゃんが新聞を小脇に出てきてレジにデンと陣取ったんですわ。
さては、あの客ソロソロ帰るとみたな。
ひょいと見ると読んでる新聞がタイ語？まさかなぁ・・。
いや、どう見てもタイ文字やで。
私の視線を感じたか、おばちゃんが新聞から目を離してこっちを見ましてん。
黙って見詰め合ってるのも何やし、何か言わんとあかんかなぁ？と思いましてね。
「クン・ペン・コンタァイ・チャイマァィ・カプ？(タイ人ですか？)」
一瞬キョトンとしたおばちゃんが顔中でニチャ～と笑って、
「チャイ・カァー！コンタァイ・カァー？(そうよ！タイ人？)」
「マイチャイ。コン・ジップン・カプ(いいえ、日本人です。)」
「タムマィ・プーッ・パサァータイ・タムマィァー(何でタイ語話すの？)」
（こんな書き方は、あまりにも邪魔臭いので、以下日本語で行きます。）
「タイが好きで友達も居たから」
「へぇ～、友達はクルンテェプ(バンコック)？」
「うん、ニューロード。あとトンブリのチャレオナコン、チェンダォにも居てる」
「沢山友達居るのね！香港は仕事？」
「いや、遊び」
「一緒に居るのは奥さん」
「うん」
（やっぱり怪しげなカタカナのタイ語を書かざるを得んねぇ・・。）
「コォイ・ディアウ・ノォイ(ちょっと待ってね)」 と奥へ引き込んでいったと思ったら、サービスやいうて皿に盛ったメロンを運んできてくれた。
多分Honey dew melonやと思います。
帰ってきたカミさんが、ん？と言う顔をしたので、
「サービスやて」
「何で？」
「あのおばちゃんタイ人やねんて、タイ語の片言で話したら持って来てん。」
「へぇ～！タイ語で、ありがとう、てどう言うのん？」
「女の人やったら、コップン・カァーやなぁ」
すかさず、おばちゃんに向かって「コップン・カァー！(ありがとう)」
おばちゃんニッコリ。
このメロンが美味しかったんです。
今度は「美味しいってどういうのん？」
「アロォーィ・マァク・マァクや」
「アロォーィ・マァク・マァク！」
おばちゃんが私の方を向いて、カミさんを指差して、
「スウェィ・マァク」
「何て？」
「きれいね、やて」
「コップン・カァー♪」
もぉ、私は頭がこんがらがりそう・・。
2004/03/19
