あたかも琵琶湖の延長上にあるかのような、湖面に浮かぶ佐川美術館。
入口で、出てくる一人とすれちがった。
そのあと、出会うのはスタッフばかり。
きっと貸切り状態にちがいない。
館内は、くまなく程よい空調管理がなされている。
エントランスホールの高い天井を見上げつつ、ふと数年前の夏がよみがえった。
あの日の館内は、冷えすぎで困ったなぁ。。。
鎌田敏夫の「京都の恋」に、琵琶湖畔の素敵な美術館が登場する。
気になって調べるうちに、そのモデルは佐川美術館であろうとの思いが強まった。
行きたいなぁ・・・行かなきゃ・・・必ず行こう!
念願かなった初訪時は、想像以上の佇まいに度肝を抜かれた。
小説の中の情景と現実がおもしろいように合致し、妙に感動した覚えがある。
今回は二度目だが、また違う角度から楽しめた。
十分すぎる遊び空間を持って、展示された作品群。
隣りの作品に一切じゃまされることなく、個々の奥深くにまで感情移入できる。
その器である、建築物そのものが芸術作品ともいえよう。
美術館と言う大きな作品の中で、こころ泳がせる。
観覧者、来訪者の好きかってな感性にまかせた美術館はめずらしい。
ピアノの調べにのって、喫茶コーナーの特等席にすすむ。
他に客はなく、初めてとまったく同じ事の運びだ。
ケーキセットでまったりと過ごす。
ガラスの向こうでは、何もかもが水上に浮かんでいる。
水面に降る陽光を細波が切りきざみ、辺りに放つ。
壁や天井をキャンバスに、光のかけらが揺らめきだす。
ここでは、自然までがアーティストだ。
水上の美術館で、贅沢きわまる時が積もりゆく。
このまま身を委ねていたい昼下がり。
・・・視線をなげれば
・・・そこが、すべてが
・・・アートな空間
・・・そこで
・・・わたしもアートになる