昨夜から降り続く雨を恨みつつ我が家をあとにした。
だが、車窓に描く雨水の筋は次第に細くなり、少しずつ気分も乾き出す。
日帰り鳥羽グルメの母娘2人旅は始まったばかり。
「近鉄電車の旅」春夏号に掲載の、往復近鉄切符と食事がセットのお得プランを申し込んだのが2日前の夕刻。
ほとんど下調べもせずに、賢島行の近鉄特急に乗り込んだ。
鳥羽駅に着くと霧雨が風に飛ばされ、カサを支えるのさえ困難を極めたが希望はあった。
午前予定の鳥羽湾めぐりの半ばごろから、雲が切れかけ予報通りの展開だ。
1時間ほどのクルーズを終え、鳥羽駅前に戻ると迎えのリムジンが待っていた。
リムジンだよ、リムジン。
このVIP待遇は、食事場所「胡蝶蘭」のおもてなしのひとつ。
黒色で統一された車内のシートに身体ごと沈み込み、初めてゆえの物珍しさからキョロキョロする私たち。
車は道をすべるように移動して、わずか数分で旅館の玄関先に到着した。
運転手の男性がカメラマンを買って出て、支持される通りにモデルとなる。
日々の繰り返しで、撮り慣れた様子。
和ダイニング「游」でいただいたのは海鮮丼。
数組の客には、贅沢すぎるほど広やかで落ち着きあるフロアだ。
魚貝が新鮮で美味しい。
食後。
鳥羽駅へ向かう送迎バスの発車までには時間があり、躊躇っていると、運よくリムジンが戻ってきた。
運転手さんにとっては不運だったかもしれない。
次の仕事が控えているにも拘らず、時間を工面してリムジンを走らせてくださった。
二度も夢心地を味わえるなんて予想外のこと。
そして、鳥羽水族館へ。
3度目だが、ここに限らず何回訪れても飽きないのが水族館。
岩肌が見えないくらい、ぎっしりとイセエビがひしめき合う水槽の前で思わず笑ってしまった。
近くの海そのまんまなようで。
もちろんペンギンは見逃せない。
サービス精神旺盛な子がいて、カメラ目線でポーズをとってくれる(と私は思いたい)。
いつでも、どの子を見てもかわゆい~
ジュゴンは食事の真っ最中で、エサ場に顔を突っ込んだまま。
どの角度からも動かぬ丸い背中しか見えなかった。
カピバラを至近距離で凝視する。
とてもおとなしいと言うか、のんびり屋さん。
なかには抜け目ない子もいて、隣のエサ箱を口で引き寄せ何食わぬ顔で食べたりもする。
でも、お惚け顔が憎めないやつだ。
館内には芸達者がたくさんいて、食事中だというのに技を披露してくれる。
セイウチは、岩場のてっぺんまで上りエサをもらうと水槽にダイビングし、また上ってを繰り返す。
エサが尽きてしまうと、その巨体は拗ねるようなしぐさを見せた。
圧倒される迫力の持ち主が、実は甘えん坊だったなんてね。
ラッコの得意技がジャンプだとは、まったく知らなかった。
飼育員が水槽のガラス面高く何やら投げつけると、三角形の物体がへばり付いた。
お腹を上にして気持ちよさそうに泳いでいたラッコは、それを察知するや否や素早く潜り勢いをつけてジャンプ。
みごとに手指でつかみ取ったのはイカのみみ。
どの高さでもピッタリ飛んで射止める。
イカの胴はお腹の上でじっくりと味わって、再びジャンプでゲソを取る。
ラッコも飼育員の彼も、仲良く楽しげに遊んでいるように見えた。
打算もなく、自然まかせの人気者たち。
12のゾーンに分けられているが順路はない。
人だって、思いのままに、マイペースで、命の輝きに感動を得られるところだ。
==よそのペンギン==