近鉄郡山駅ホームに片足を着いた瞬間から懐かしみを覚える。
駅舎はそのまま年月を重ねているかに見えたし、立ち寄ったカバン屋さんも階段を上がった喫茶店もいまなおそこに位置していた。
細部はともかくとして、目前の風景が10年前の記憶の骨格と重なった。
母娘で欲ばりツアーの日程は、郡山城→→ランチ→→市内散策→→→→大和西大寺→→コーヒーブレイク→→「なる」で乾杯ディナー→→→→我家へ。
どこで入手したか思い出せないのだが、我家に眠る郡山市内の散策マップを3枚も見つけた。
その全部を片手にスタートだ。
先に某銀行にちょこっと寄った。
自動ドアが開いた瞬間に、キャッシュコーナーを備えたエントランスホールの広さに唖然とする。
また、店内の待合席はホテルのロビーみたいにゆったりとソファーが置かれ、地元の銀行とは大違いだ。
その話題を引きずったまま郡山城址へ。
開花が遅れているのか、しっかり閉じた蕾が多くみられた。
雲のフィルターを抜けぬけた日差しが、ぷっくりとした小さな花びらを艶やかにコーティングする。
満開もいいけれど、赤く笑い、白く澄み、薄桃にはにかむ、初々しさが溢れ出る今が好き。
梅花を愛でながら、天守台へ向かった。
もうすぐ石垣ってあたりまでくると、シート付きの高いフェンスが巡っている。
工事中のようだが・・・。
間近で立ちはだかったのは、なんと無情の看板だった。
なぜ、この看板を入口にも立てないのだろう。
事情を知らずに訪れる人は多いはずだ。
現に引返す女性にも出くわした。
以前の様子を知る私は、残念だが仕方ないと諦めもつく。
しかし、初回で不意打ちをくらった娘はガックリと肩を落とした。
ところが、立入禁止が解けてからのお楽しみ~と立ち直りは速い。
ランチをはさんで、郡山市内を散策することにした。
「塩町」「魚町」「茶町」「雑穀町」「豆腐町」「紺屋町」「材木町」「車町」「大工町」「鍛冶町」など城下町ならではの町名が残っている。
どこを歩いても、知らぬ街並みはおもしろい。
通りの気になる店を右から左、また右へと蛇行しながらのぞいてゆく。
ふいに、珍しい風景に出くわした。
今じゃめっきり少なくなった公衆電話ボックスだが、この形の物ってまだ残っていたんだ。
近づくに連れて、ボックスの形はさておき、その内部の異様さに気づき始める二人。
御役御免の電話ボックスは、金魚ボックスとして第二の人生を歩んでいた。
ガラスの雛人形も飾られている。
金魚で有名な街とはいえ、これには度肝を抜かれた。
発案者の遊び心が、見る者の心も遊ばせてくれる。
私の故郷とは城下町つながりの大和郡山市。
気持ちが和がれる街。
娘もここが好きになったようで、楽しかったを連発していた。
また二人で来ようね。
違う道筋で新たな出合いが待っているよ、きっと。