古城山の水口岡山城跡への道を歩いた。
レジャー組は、他に2人連れの2組と出会ったのみ。
1人の工事作業員と発掘作業員が4名ばかり仕事中だった。
大量の瓦が出土したらしい。
城跡一帯は、やたらと太い切り株が点在し、伐採のすごさを物語っていた。
そうして手に入れた明るさが、絶対不可欠の現状ゆえ、やむを得ずともいえようが。
残された樹木は伸び放題。
階段の丸太は所どころ朽ちて土が傾れ、危険がいっぱい。
以前は公園だったのか、その名残の木製ゲートが無残な姿で残っていた。
石垣も草木に隠れ、崩れて埋もれていたりする。
1人置いてきぼりにされたら、昼間でもいやだなぁ。
ここまで荒廃すると、地元住民でさえも近づかないだろう。
知らずに来る遠方客は余計にガッカリだ。
お陰さまで見晴らしはよく、ベンチの設置数も申し分ない。
遠望がきくベンチでおにぎりを食む。
吹き抜ける風は、チョッピリ春をはらんで軽くなった気がした。
発掘がより進めば、少しは整備されるだろうか。
ぜひ、そうありたい。
帰りの道すがら、ハッと思った次の瞬間には店の駐車場にいた。
大きな蔵が喫茶店の看板をあげていた。
水口で見つけたんだよ 蔵四季 ”くらしき” をね。
蔵だから店内も和風を想像していたら、アンティークで大人な空間だった。
カウンター越しの壁面には、とりどりのカップがおとなしく出番を待っている。
私のために選ばれたのは、その日の空と重なる色合いのブルー。
手作りのケーキは、甘さ控えめのハートを感じる絶品。
泡のようにスッと溶ける生クリームと、米粉とあずき入りシフォンとの仲睦まじさに心が動く。
手作りクッキーも販売されていたが、食せずとも美味に違いない。
もうひとつの売りは、炭火焙煎珈琲。
神戸の店から取り寄せる、こだわりの珈琲豆が使われている。
ひと口含めば香ばしさが鼻腔を、と同時にほろ苦さが口腔を占拠し、こういうの好きだなぁ・・・陶酔すること暫し。
ケーキと珈琲豆の話の続きに、建物について問いかけた。
蔵を改造したものなのか、はたまた。
建築のさい、町並みの景観からはみ出さないように、外観のみを蔵のイメージにしたそうだ。
1人で入ってきた女性は、出かけたついでのようで常連ぽかった。
日差しをうけた窓際には、主婦のグループが集っている。
蔵四季が愛される店であることは、初めての私にも汲み取れた。