たとえばこれは、ぼくが子供の頃の話だけど。
近所に同い年くらいの女の子が住んでいて、その子とよく遊んでいた。かわいい子だった。いつも公園で、ままごとをした。子供だったから、全然はずかしくなかった。
でもおかしなことに、その子は結婚したばかりの夫婦のままごとを好んでやった。そしていつも、ぼくに妻役をやらせて自分は夫役ばかりするのだ。
そりゃあ、ぼくは当時から、自分のことを「ぼく」と呼ぶ変わった女の子だったけれど、かわいらしいその子が夫役だなんて見た目にありえなかった。男の子みたいな性格をしたこのぼくのほうが、ずっと相応しいのに。
小学校に入学して、その子と同じ学校に通うようになって、ぼくはそのわけをようやくさとった。
初めて学校へ行くとき、ぼくは赤いランドセルを背負ってその子の家に行ったんだ。一緒に学校に行こうと思って。
でも、ぼくは家から出てきたその子を見てびっくりしてしまった。
その子は、黒いランドセルを背負っていたんだ。
女の子じゃなかったんだよ。
でもね。
その子もその子で驚いていたみたい。
ぼくの後ろの赤いランドセルを見て、びっくりした表情をしていたから。
きっと知らなかったんだね。
ぼくが女の子だってこと。
つまり、性別的にぼくが妻役でその子が夫役というのは、大正解だったわけ。
そして今は、うん。
ぼくは本物の妻で、その子は本物の夫なんだけどね。
さて、今日は何を食べさせてあげようかな。
近所に同い年くらいの女の子が住んでいて、その子とよく遊んでいた。かわいい子だった。いつも公園で、ままごとをした。子供だったから、全然はずかしくなかった。
でもおかしなことに、その子は結婚したばかりの夫婦のままごとを好んでやった。そしていつも、ぼくに妻役をやらせて自分は夫役ばかりするのだ。
そりゃあ、ぼくは当時から、自分のことを「ぼく」と呼ぶ変わった女の子だったけれど、かわいらしいその子が夫役だなんて見た目にありえなかった。男の子みたいな性格をしたこのぼくのほうが、ずっと相応しいのに。
小学校に入学して、その子と同じ学校に通うようになって、ぼくはそのわけをようやくさとった。
初めて学校へ行くとき、ぼくは赤いランドセルを背負ってその子の家に行ったんだ。一緒に学校に行こうと思って。
でも、ぼくは家から出てきたその子を見てびっくりしてしまった。
その子は、黒いランドセルを背負っていたんだ。
女の子じゃなかったんだよ。
でもね。
その子もその子で驚いていたみたい。
ぼくの後ろの赤いランドセルを見て、びっくりした表情をしていたから。
きっと知らなかったんだね。
ぼくが女の子だってこと。
つまり、性別的にぼくが妻役でその子が夫役というのは、大正解だったわけ。
そして今は、うん。
ぼくは本物の妻で、その子は本物の夫なんだけどね。
さて、今日は何を食べさせてあげようかな。
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