真面目に。

　歌い手を辞めようと思う。
　アパートの隣人から苦情が来たからとか、１周年でキリがいいからとか、それも理由だけれどそれだけではない。
　単純に、歌いたい歌がなくなったから、というのも理由のひとつだ。
　歌いたいメジャーな曲、ならある。
　だけれどそれらには版権があって、おいそれとは使えない。
　これはボク（私ではなくボク）の勝手な意見だが、基本的に歌ってみたをやっていいのはボカロとかだけだと思う。
　と、言いつつ、ボクがデビューした時の曲はボカロではなかったが(苦笑)。
　まだ知らなかった。
　そのときはボカロをあまり知らなかったし。
　何でも歌えばそれでいいと思っていた。
　ボクはボカロは実は好きじゃない。
　あの機械的な音声は慣れない。
　だから歌い手の動画ばかりを再生し、本家を聞かないでカラオケで歌う。
　すると点数が出なくなる。
　上手く歌ったはずなのに全国平均と大差ない。
　結構、歌に関してのプライドが高い私にとって（ボクにとっても）かなり悔しい結果だった。
　それでも原曲(本家)を聴かないという意地っ張り。
　いや、単純に聞くのが億劫だと考えただけである。
　本家を歌うなんて、普通すぎてつまらない。
　本家は本家、私は私。
　私は私の好きな歌い手さんを真似て歌いたい。
　ワガママ。
　そんなだからボカロはやっぱりちょっと自分には合わないな、と思った。
　そんな色々を考えてみても、やっぱり自分は歌い手には向いていない気がする。
　私が歌い手を辞めたところで悲しむ人間なんていないし、むしろ近所迷惑していたお隣さんが助かる。
　また逃げてる……。
　青い人ならそう言うだろう。
　でもそれが、逃げるのがボクの本分だ。
　熱しやすく冷めやすい。
　すぐ飛びついてすぐ飽きる。
　少ない賃金を消費経済に貢献する男。
　もういいよ。
　かくれんぼ本番開始。