暇人に見て欲しいBLOG

別称(蔑称)、「暇人地獄」。たぶん駄文。フリマ始めました。遊戯王投資額はフルタイム給料の4年分(苦笑)。

ショートショート「コピーライターという仕事」

2006年12月20日 21時31分24秒 | 小説系
 コピーライターという職業がある。
 わたしはずっと、人間がものすごい速度でコピー(複製模写)するのだと思っていた。だからわたしの中で、コピーライターの人は腕から先が卓越しており、しかしペンだこと汗疹(あせも)で大変だというイメージだった。
 それは間違いだよ、と言ったのは父だった。
 父というのは、わたしの人生の師匠であり、ときどきお金をくれる愛すべき人である。
 父は得意げに言った。
「いいかい、ライターは書く人のことじゃなくて、火をつけるあのライターのことなんだよ。つまりコピーライターというのはライターを量産する仕事なのさ」
 わたしの中で、大量のライターが多くの大人の流れ作業によって生産されている光景が映った。機械をほとんど使わずに簡単な道具だけで作っているのがミソだ。
「すごいねお父さん。お父さんは物知りだね」
 わたしは自分の父親を尊敬した。父はえへへと照れながら頭をかいた。
 そこに、洗い物をすませた母が付け加えた。
「それはこの国の重要機密なのよ。普通の人は知ってちゃいけないの。だから他の人には内緒よ? わかった?」
「はーい」
 わたしは重要な秘密を知ってしまったことに興奮しつつ、秘密を守るぞと誓った。
 母の言うことは絶対なのだ。


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