暇人に見て欲しいBLOG

別称(蔑称)、「暇人地獄」。たぶん駄文。フリマ始めました。遊戯王投資額はフルタイム給料の4年分(苦笑)。

【目眩く儚い日々はこんな】第壱夜

2009年09月23日 23時36分29秒 | 小説系
--めくるめくはかないひびはこんな--




 気がつくと、ここにいた。
 どこなのかはわからない、黒の世界。闇の中。
 ただ、自分には複数の人間が、見てとれた。
 複数人を同時に眺めることも、一人だけに意識を集中することもできた。
 小説で言うところの神の視点とかいうやつか。
 私にはそれができた。
 一人の人に意識を集中させてやると、その人のステータスがわかった。
 たとえば疫幽伸子(えきゆらのぶこ)81歳。女性。血液型はO型。娘と孫が一人ずついる。
 と、この程度の情報なら、難無く読み取ることができた。
 無論、性別は見れば判別できるだろうが。
 しかし最近の人といったら、見た目と中身が違う場合も少なからずあって。
 腐男塾の緑川狂平くんなんて、その最たるものだ。顔も声も完全に女の子なのに、性別はと聞くと、「自分、男っす」と言う。
 いやいやどう見たって女の子なんである。
 細いし。
 それはさておき。
 私(自分では性別もわからない)に見えるのは、どうも疫幽家だけらしかった。
 伸子の娘の貞子(さだこ)42歳に、婿養子の好男(すきお)40歳、ペットの霊(たま)1歳。
 私に見えるのは彼らより他なかった。
 ただし、彼らのうちの誰かだけに意識を持っていくと、その人の世界のすべてが見て取れるのである。
 どうして自分にそのような能力があり、食事もせず休みも取らずに活動できるのかは判然としないのだが。他人の世界を体験できるというのは、いやに面白いもので……。
 そして一つだけはっきりしていることがある。
 私は猫ではない。
 吾輩は猫である、ではないわけだ。
 なぜそれがわかるのかというと。
 それは霊(たま)1歳に意識を落とした時の世界の在り方が、ひどく滑稽だからである。


     つづく

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