病室を覗いたとき、点滴の針を刺したまま、夫は静かに眠っていました。
私は、何となくホッとして、ベッド脇の椅子に掛けようとしたのですが、ふと、その点滴の針を刺した夫の腕を見てビックリしました。
だって、腕全体がパンパンに腫れているんですもの・・・。
私は、夫を起こし、ナースコールをしました。
「あらあら、液が漏れちゃったのねぇ・・・」
やってきた看護師さんは、腫れた腕の様子をみて、こともなげにそう言うと、それでも、すぐに、ドクターに連絡をしてくれました。
そして、若いドクターが、反対側の腕に点滴のやり直しをしてくれることになったのですが・・・。
ところがところが・・・・。
何回やっても、上手に点滴の針がさせないのです。
額に汗を浮かべながら、必死で頑張っていましたが、結局、最後は他のドクターに変わってもらうことに。。。。
このドクターは、以前にも二回、同じことがありましたので、失礼を承知で私は聞きました。
「先生は、お医者様になって、どのくらいですか?」・・・と。
「僕は、この春、国家試験に合格したばかりなんです。 だから、まだ、3カ月です」
そのあとで、少し、彼と話しました。
自分は、医療関係者が身内に多い同僚と違って、全く違う世界からこの道に入ったので戸惑うことが多い・・・とか、まだまだ患者さんに針をさすのが正直言って怖い・・・とか、出身は栃木の田舎だとか・・・。
彼の話を聞いていたら、点滴の失敗をなじる気にはなれませんでした。
まじめで素直そうな青年です。
失敗を繰り返しながもら、きっと、将来は立派なお医者様になることでしょう。
『頑張れ!』 と、私は心の中でエールを送りました。
それにしても、新米医師には 『指導医』 がつくはずだと思うのですが、私の認識違いだったでしょうか・・・?
ちなみに、点滴のやり直しは、先輩医師が来て、ものの数分で完了しました。
医局に戻ってから、この新米医師が、先輩医師に叱られないとよいのだけれど・・・と、余計な心配をしている私です。