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会社にケンカを売った社員たち~リーガル・リテラシー~

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【南海バス事件】大阪高裁判決の要旨(平成29年9月26日)

2019年12月25日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
【1.労基法32条における「労働時間」の意義等】
▼ 労基法上の労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない時間(不活動時間)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである。

▼ 不活動時間においては、その間、労働者が労働から離れていることを保障されて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができるのであって、不活動時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。

▼ そして、当該時間において、労働契約上の役務の提供が義務づけられていると評価される場合には、労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。

【2.本件におけるあてはめ】
▼ 原審は、主として以下の(1)から(3)の要素を勘案して、労働からの解放が保障されていたと評価した。本判決ではこれらの要素に該当する事実等を適宜修正・補足しつつ、(4)を加え原審同様に労働からの解放は保障されているとした。

▼ (1)バスの移動、忘れ物の確認、車内清掃等はバスターミナル到着後2分間および次の運行開始時間前4分間で終わらないことが度々あったとは認められず、基本的にはそれ以外の待機時間について休憩を取ることが可能であったこと、(2)待機時間中、Xを含む乗務員は実際に自由にバスを離れて休憩を取れるようになっていたこと、(3)N社は乗務員が休憩中であることを理由に乗客対応を断ることや貴重品や忘れ物をバス車内に置いてバスを離れることを認めていたことからすれば、乗務員は待機時間には乗客対応、貴重品や忘れ物、バス車体等の管理を行うことを義務づけられていたとは認められない。

▼ (4)運転営業係必携に常に丁寧親切な乗客対応を心掛ける旨の記載があったとしても、それは労働時間中の義務につき定めたもので、休憩中も対応を義務づけられていたわけではないし、そのような対応が度々認められるわけでもなく、現実に対応した際には労働時間として賃金を支払われていたのである。

▼ 以上により、待機時間は労基法上の労働時間とは認められないから、待機時間が労基法上の労働時間に当たることを理由とするXの主張は採用できない。

【3.個別対応に関する時間外割増賃金の有無】
▼ 待機時間が一般に労働時間に該当しないとしても、待機時間中に例外的に業務対応をしたことがあれば、その対応時間については労働時間として賃金を支払う必要があるが、待機時間として主張する時間中の特定の時間にXが乗客対応等の具体的な実作業等に従事したことの立証が不十分であることに加え、具体的な主張もなされておらず、Xの時間外労働を理由とする賃金請求には理由がない。

1)本件控訴を棄却する。
2)控訴費用はXの負担とする。


※なお、上記判決に対し、Xから上告の申立てがありましたが、平成30年4月17日、最高裁判所第三小法廷は本件を上告審として受理しない旨の決定をしています
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【A市事件】最高裁第三小法廷判決の要旨(平成30年11月6日)

2019年07月03日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
[1.原審が考慮した事情について]
▼ 原審は、(1)女性従業員がXの顔見知りであり、身体的接触について渋々ながら同意していたこと、(2)女性従業員および本件店舗のオーナーが処罰を望まず、警察の捜査対象にもなっていないこと、(3)Xが常習として同様の行為をしていたとまでは認められないこと、(4)社会に与えた影響が大きいとはいえないこと等を挙げる。

▼ しかし、次の理由から、これらの事情をもって本件処分が社会観念上著しく妥当を欠くことにはならない。
(1)2人はコンビニエンスストアの客と従業員の関係に過ぎないから、身体的接触に抵抗を示さなかったとしても、客との間のトラブルを避けるためであったとみる余地がある。
(2)処罰を望まないのは、事情聴取の負担や本件店舗の営業への悪影響等を懸念したことによるとも解される。
(3)身体的接触を伴うかはともかく、Xは以前から本件店舗の従業員らを不快に思わせる不適切な言動をし、それを理由の一つとして退職した女性従業員もいた。
(4)本件の行為は勤務時間中に制服を着用してされたものである上、複数の新聞で報道されており、A市の公務一般に対する住民の信頼は大きく損なわれた。

[2.本件処分の違法性について]
▼ 停職は最も重い免職に次ぐ処分であり、その期間は条例上の上限である6ヵ月であって、Xが過去に懲戒処分を受けたことがないこと等からすれば、相当に重い処分であることは否定できない。

▼ しかし、本件の行為が客と従業員の関係にあって拒絶困難であることに乗じて行われた厳しく非難されるべき行為であって、A市の公務一般に対する住民の信頼を大きく損なうものであり、Xが以前から同じ店舗で不適切な言動を行っていたなどの事情に照らせば、本件処分が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くとまではいえない。

1)原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。
2)Xの請求を棄却する。
3)訴訟の総費用はXの負担とする。
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【東和工業事件】名古屋高裁金沢支部判決の要旨(平成28年4月27日)

2019年05月08日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
[総合職の賃金を支払わないことの違法性]
▼ 不法行為の成否につき、本判決は原判決をほぼそのまま引用し、T社の取扱いについて労働基準法4条による不法行為の成立を認めている。

[損害額]
▼ 損害額につき、本判決は退職金差額の算定を見直すほかは原判決を維持しつつ、理由の一部付加、控訴審等での新主張への判示をしている。

(1)年齢給・職能給差額
▼ 年齢給に関し、T社はXとほかの設計部員とでは職務内容等に相違がないのにこれを無視して同等の年齢給を支払うのは同一労働同一賃金の原則に反すると主張するが、年齢給は年齢との対応関係のみで金額が定まり、人事考課の査定等の裁量的判断は介入しないという賃金体系に照らして採用できない。

▼ 職能給に関し、Xは総合職主任の職能給を受領できる高度の蓋然性があったと主張するが、総合職主任と一般職主任とでは役割、責任等が実質的に異なり、昇格にはT社の裁量的判断を含んだ人事考課の査定等を経なければならないから、そのような蓋然性は認められない。

(2)慰謝料・弁護士費用
▼ 原判決と同様、慰謝料100万円、弁護士費用30万円を損害と認める。

(3)退職金差額
▼ T社における退職金額は、退職金基本給に勤続年数から「1」を減じた数を乗じて算出される。Xの勤続期間のうち、本件コース別雇用制の導入以降に関しては総合職として勤続したものと扱い、その余の期間については一般職として勤続したものとして扱った上で、上記の「1」を減じるに当たっては、上記の両期間に按分して減じるのが相当である。以上に基づいて計算した退職金額から既払退職金を控除した差額108万8822円を損害と認める。

(4)Xの新主張(特別支給老齢厚生年金)
▼ Xは賃金の差別的取扱いの結果、生涯にわたり受給する特別支給老齢厚生年金が少額となり、それによる損害を被ったと主張する。しかし、賃金の差別的取扱いがなければ支払を受けられた賃金額は消滅時効にかかっていない年齢給の差額分のみであり、Xが主張する金額とは大きく異なる。

▼ また、時効にかかっていない年齢給の差額分があることにより、本来支給を受けられるはずの特別支給老齢厚生年金の額がいくらとなるかは、Xの主張からも証拠関係上も明らかとなっていない。

▼ 厚生年金の負担額は労働者の賃金額とその時々の情勢を勘案して定められる保険料率によって定める。そして、Xが実際に負担していた保険料と差別的取扱いがなかったとした場合の賃金額に基づく保険料とは当然に異なる。

▼ さらに、上記保険料率が一定期間ごとに見直されることを考え合わせると、年金の差額分の損害をいうXの主張およびその立証は不十分であるといわざるを得ず、裁判所がその金額を適切に認定することも証拠上困難である。したがって、Xの新主張については理由がない。

1)本件控訴に基づき、原判決主文4項、5項を次のとおり変更する。
(1)T社はXに対し、108万8822円およびこれに対する遅延損害金を支払え。
(2)Xのその余の主位的請求を棄却する。
2)その余の控訴および附帯控訴をいずれも棄却する。
3)Xの当審における追加請求を棄却する。
4)訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを5分し、その1をT社の負担とし、その余をXの負担とする。


※上記判決に対し、Xから上告および上告受理の申立てがありましたが、平成29年5月17日、最高裁判所第一小法廷は本件上告を棄却し、本件を上告審として受理しない旨の決定をしています。
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【医療法人 K会事件】広島高裁判決の要旨(平成29年9月6日)

2018年11月28日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
[本件貸付1の免除]
▼ K会はXに対し、本件貸付1は全額免除する旨通知しており、これによって、本件貸付1に係る貸金債務については全額免除したものと認められる。この点、K会はXらが本件貸付規定の効力を争ったことによって、免除の前提事実が失われ、同会の免除の意思表示に錯誤があったと主張する。

▼ しかし、本件では免除の前提事実は表示されていないから、要素の錯誤が成立する余地はない。そして、本件貸付規定を合理的に解釈すれば、Xは本件貸付1の免除条件を満たしていると認められるから、K会の上記主張は採用することはできない。

[本件貸付の有効性]
▼ 本件貸付に係る諸般の事情に照らし、貸付金の返還義務が実質的にXの退職の自由を不当に制限するものとして、労働契約の不履行に対する損害賠償額の予定であると評価できる場合には、本件貸付は労基法16条に反するものとすべきである。

▼ 労基法14条は契約期間中の労働者の退職の自由が認められない有期労働契約について、その契約期間を3年(特定の一部の職種については5年)と定め、労働者の退職の自由を上記期間を超えて制限することを許容しない趣旨であるから、上記の「退職の自由を不当に制限する」か否かの判断においては、事実上の制限となる期間が上記の期間を超えるか否かを基準として重視すべきである。

▼ Xの看護学校進学はK会における正看護師確保に向けた養成の一環と位置付けられるものであり、正看護師の資格取得はまさに同会の業務に直結するものであること等からすると、本件貸付2の実質はむしろ賃金の補充として位置付けられるものであったというべきである。

▼ 本件貸付規定は返還の事由が勤務の継続と直接的に関連づけて定められており、本件貸付規定の返還免除期間についても、看護師について労基法14条が労働者の退職の自由を制限する限界としている3年間の倍の6年間であり、同条の趣旨からも大きく逸脱した著しい長期間である一方で、勤務年数に応じた減額措置もなく、本件貸付2の要返還額はXの基本給の約10倍の108万円であって、この返還義務の負担が退職の自由を制限する事実上の効果は非常に大きい。

▼ しかも、本件貸付規定の返還免除期間は本件病院の近隣の病院と比較しても倍となっており、このことからも本件貸付規定により労働者の退職の自由について課す制限は目的達成の手段として均衡を著しく欠くものであって、合理性があるとは到底認められない。

▼ 加えて、K会の管理職はXが退職届を提出するや、本件貸付の存在を指摘して退職の翻意を促したと認められる上、本件貸付規定は労働者にとって更に過酷な解釈を使用者が示すことによってより労働者の退職の意思を制約する余地を有するものともいえる。

▼ 以上により、本件貸付2の返還合意部分は実質的には経済的足止め策として、Xの退職の自由を不当に制限する、労働契約の不履行に対する損害賠償の予定であるといわざるを得ず、本件貸付2の返還合意部分は労基法16条に反するものとして同法13条により無効であり、本件貸付2は返還合意なき給付金契約になり(したがって、給付金は不当利得とはならない)、本件貸付2に係る貸金債務は返還合意を欠くため成立しない。

1)本件控訴を棄却する。
2)控訴費用はK会の負担とする。
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【X社事件】東京高裁判決の要旨(平成28年1月27日)

2018年06月06日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
▼ Aの請求はいずれも理由がなく、追加請求も理由がない。

▼ X社は給与規程に定められたとおりに業務手当を支給し、割増賃金が業務手当の金額を超えていた場合には超過分を支給していたことが認められる。

▼ 各月の未払割増賃金の金額と業務手当の金額の比較からすると、業務手当は実際に生じた各月の割増賃金の金額または相当の割合を賄うものと認められ、業務手当の金額は不適切とはいえない。

▼ AはX社が業務手当は月当たり時間外労働70時間、深夜労働100時間の対価として支給されていることに関して、平成10年12月28日労働省告示第154号所定の月45時間を超える時間外労働をさせることは法令の趣旨に反するし、36協定にも反するから、そのような時間外労働を予定した定額の割増賃金の定めは全部または一部が無効であると主張するが、上記告示の基準は時間外労働の絶対的上限とは解されないし、X社は36協定において、月45時間を超える特別条項を定めており、その条項を無効とすべき事情は認められないから、業務手当が月45時間を超える70時間の時間外労働を目安としていたとしても、それによって業務手当が違法になるとは認められない。

▼ 業務手当が常に36協定の特別条項の要件を充足しない時間外労働を予定するものであるということはできないし、また、仮に36協定の特別条項の要件を充足しない時間外労働が行われたとしても、割増賃金支払義務は当然に発生するから、そのような場合の割増賃金の支払を含めて業務手当として給与規程において定めたとしても、それが当然に無効となると解することはできない。

▼ 業務手当は時間外労働の有無にかかわらず、すべての従業員に支給されているから、定額の割増賃金に当たるとはいえないとXは主張するが、X社は経営する店舗の営業日や営業時間との関係で従業員の時間外労働や深夜労働が避けられないことから、正社員に対して業務手当を支給しているものと認められ、X社の業務の態様に照らし、正社員に業務手当を支給することには合理性があると認められるから、Aの主張は採用することはできない。

1)本件控訴を棄却する。
2)Aの当審における追加請求を棄却する。
3)本件附帯控訴に基づき、原判決中X社敗訴部分を取り消す。
4)前項の取消しに係る部分につきAの請求をいずれも棄却する。
5)訴訟費用(控訴費用、附帯控訴費用を含む)は、第1、2審を通じ、これを10分し、その9をAの負担とし、その余をX社の負担とする。


※その後、平成28年7月12日、最高裁判所第三小法廷は本件を上告審として受理しない旨の決定をしています。
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