1.
▼ 地方公務員法28条に基づく分限処分について、免職の場合には公務員としての地位を失うという重大な結果となることを考えれば、処分の重さの判断については、特に厳密、慎重であることが要求されるものと解すべきである。
2.
▼ 約80件に上る本件各行為のような、9年以上の長期間にわたる悪質で社会常識を欠く一連の行為に表れたXの粗野な性格につき、公務員である消防職員として要求される一般的な適格性を欠くとみることが不合理であるとはいえない。
▼ 本件各行為の頻度等も考慮すると、上記性格を簡単に矯正することはできず、指導の機会を設けるなどしても改善の余地がないとみることにも不合理な点は見当たらない。
▼ 本件各行為によりN市の消防組織の職場環境が悪化することは、公務の能率の維持の観点から看過し難いものであり、特に地域住民の生命や身体の安全を守る必要がある消防組織においては上記職場環境悪化を重視することも合理的であるといえる。
▼ 本件各行為の中には、Xの行為を上司等に報告する者への報復を示唆する発言等も含まれており、現にXが復帰した後の報復を懸念する消防職員が相当数(消防職員約70人のうち16人)に上ること等からしても、Xを消防組織内に配置しつつ、その組織としての適正な運営を確保することは困難であるといえる。
▼ 以上の事情を総合考慮すると、免職の場合には特に厳密、慎重な判断が要求されることを考慮しても、Xに対し分限免職処分をした消防長の判断が合理性を持つものとして許容される限度を超えたものであるとはいえず、本件処分が裁量権の行使を誤った違法なものであるということはできない。
3.
▼ 以上によれば、本件処分が違法であるとした原審の判断には、分限処分に係る任命権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、原判決は破棄を免れない。
▼ 上記事実関係等の下においては、本件処分にその他の違法事由も見当たらず、Xの請求は理由がないから、原審判決を取り消し、同請求を棄却すべきである。
1)原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。
2)Xの請求を棄却する。
3)訴訟の総費用はXの負担とする。