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【医療法人 K会事件】広島高裁判決の要旨(平成29年9月6日)

2018年11月28日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
[本件貸付1の免除]
▼ K会はXに対し、本件貸付1は全額免除する旨通知しており、これによって、本件貸付1に係る貸金債務については全額免除したものと認められる。この点、K会はXらが本件貸付規定の効力を争ったことによって、免除の前提事実が失われ、同会の免除の意思表示に錯誤があったと主張する。

▼ しかし、本件では免除の前提事実は表示されていないから、要素の錯誤が成立する余地はない。そして、本件貸付規定を合理的に解釈すれば、Xは本件貸付1の免除条件を満たしていると認められるから、K会の上記主張は採用することはできない。

[本件貸付の有効性]
▼ 本件貸付に係る諸般の事情に照らし、貸付金の返還義務が実質的にXの退職の自由を不当に制限するものとして、労働契約の不履行に対する損害賠償額の予定であると評価できる場合には、本件貸付は労基法16条に反するものとすべきである。

▼ 労基法14条は契約期間中の労働者の退職の自由が認められない有期労働契約について、その契約期間を3年(特定の一部の職種については5年)と定め、労働者の退職の自由を上記期間を超えて制限することを許容しない趣旨であるから、上記の「退職の自由を不当に制限する」か否かの判断においては、事実上の制限となる期間が上記の期間を超えるか否かを基準として重視すべきである。

▼ Xの看護学校進学はK会における正看護師確保に向けた養成の一環と位置付けられるものであり、正看護師の資格取得はまさに同会の業務に直結するものであること等からすると、本件貸付2の実質はむしろ賃金の補充として位置付けられるものであったというべきである。

▼ 本件貸付規定は返還の事由が勤務の継続と直接的に関連づけて定められており、本件貸付規定の返還免除期間についても、看護師について労基法14条が労働者の退職の自由を制限する限界としている3年間の倍の6年間であり、同条の趣旨からも大きく逸脱した著しい長期間である一方で、勤務年数に応じた減額措置もなく、本件貸付2の要返還額はXの基本給の約10倍の108万円であって、この返還義務の負担が退職の自由を制限する事実上の効果は非常に大きい。

▼ しかも、本件貸付規定の返還免除期間は本件病院の近隣の病院と比較しても倍となっており、このことからも本件貸付規定により労働者の退職の自由について課す制限は目的達成の手段として均衡を著しく欠くものであって、合理性があるとは到底認められない。

▼ 加えて、K会の管理職はXが退職届を提出するや、本件貸付の存在を指摘して退職の翻意を促したと認められる上、本件貸付規定は労働者にとって更に過酷な解釈を使用者が示すことによってより労働者の退職の意思を制約する余地を有するものともいえる。

▼ 以上により、本件貸付2の返還合意部分は実質的には経済的足止め策として、Xの退職の自由を不当に制限する、労働契約の不履行に対する損害賠償の予定であるといわざるを得ず、本件貸付2の返還合意部分は労基法16条に反するものとして同法13条により無効であり、本件貸付2は返還合意なき給付金契約になり(したがって、給付金は不当利得とはならない)、本件貸付2に係る貸金債務は返還合意を欠くため成立しない。

1)本件控訴を棄却する。
2)控訴費用はK会の負担とする。
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