▼ A社においては、派遣社員の受入れ時にポルトガル語を併記したテキストを用いて安全教育を実施し、異常が生じた際には機械を止め、上司を呼び、上司を待つことを指導するほか、動いているものや動こうとしているものには手を出してはならないことなどを「安全三訓」として強調し、毎日の作業開始時に「安全三訓」を唱和させて、これを徹底していたこと、平成22年6月にXを受け入れた際、派遣会社が通訳を同伴させて安全教育に臨んでいたことが認められることなどから、A社が機械操作時に機械内部に手を入れないよう指示指導する義務やチョコ停が生じた場合に上司を呼ぶように指示指導する義務を怠ったとはいえない。
▼ A社において、作業員が本件旋盤機の内部に手を入れた状態でボタンを操作し、さらにその操作を誤って、当該作業員の身体に危害が生じることを予見することは困難であった。
▼ A社は本件事故後、本件旋盤機に補助ボタンを設置し、両手で操作しなければ作業しないよう改良を加えたことが認められるものの、これは本件事故を受けて、徹底した事故防止を講じたものであって、当初の本件旋盤機に安全上の不備があったことを基礎付けるものではない。
▼ 本件旋盤機に補助ボタンを設置して両手操作でなければ作動しないよう設定した上でXに作業をさせる義務やワークと治具との間に覆いを設置するなどして、Xの右手が挟まれないようにするまでの義務がA社にあったとはいえない。
▼ A社にはXの主張する安全配慮義務違反があるとは認められないから、その余の点を判断するまでもなくXの請求には理由がない。
1)Xの控訴を棄却する。
2)A社の控訴により、原判決中、同社敗訴部分を取り消す。
3)上記の部分につき、Xの請求を棄却する。
4)訴訟費用は、第1、2審ともXの負担とする。
※ なお、本件は最高裁第3小法廷において上告が棄却されています(平成28年7月5日判決)。
▼ A社において、作業員が本件旋盤機の内部に手を入れた状態でボタンを操作し、さらにその操作を誤って、当該作業員の身体に危害が生じることを予見することは困難であった。
▼ A社は本件事故後、本件旋盤機に補助ボタンを設置し、両手で操作しなければ作業しないよう改良を加えたことが認められるものの、これは本件事故を受けて、徹底した事故防止を講じたものであって、当初の本件旋盤機に安全上の不備があったことを基礎付けるものではない。
▼ 本件旋盤機に補助ボタンを設置して両手操作でなければ作動しないよう設定した上でXに作業をさせる義務やワークと治具との間に覆いを設置するなどして、Xの右手が挟まれないようにするまでの義務がA社にあったとはいえない。
▼ A社にはXの主張する安全配慮義務違反があるとは認められないから、その余の点を判断するまでもなくXの請求には理由がない。
1)Xの控訴を棄却する。
2)A社の控訴により、原判決中、同社敗訴部分を取り消す。
3)上記の部分につき、Xの請求を棄却する。
4)訴訟費用は、第1、2審ともXの負担とする。
※ なお、本件は最高裁第3小法廷において上告が棄却されています(平成28年7月5日判決)。