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【オリエンタルモーター事件】東京高裁判決の要旨(平成25年11月21日)

2014年11月12日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
▼ ICカードは施設管理のためのものであり、その履歴は会社構内における滞留時間を示すものに過ぎないから、履歴上の滞留時間をもって直ちにXが時間外労働をしたと認めることはできず、ICカード使用履歴記載の滞留時間にXが時間外労働をしていたか否かについて検討する。

▼ Xは残業の内容として日報を作成していた旨主張するが、日報は実習の経過を示すものでO社の業務に直接関係するものではないこと、提出期限もなかったこと等から残業が必要であったということはできず、またO社がXに対し日報作成のために残業を命じたことを裏付ける証拠はない。

▼ Xは残業の内容として営業課における電話応対およびコンピュータシステムへの入力を主張するが、後者は電話相談実習としてお客様相談センターにおいて行われたものであり、営業課において行われていなかったのであるから、そのために残業が必要であったと認めることはできず、また上司がXに対し電話応対のために残業するよう命じたことを認めるべき証拠はない。また、Xは時間外労働として翌日訪問する営業先の下調べ等をしていた旨主張するが、Xが実習中であって、1人で営業先に赴くこともなかったというのであるから、下調べをしていたとしても、これをもって労務の提供を義務づけられていたと評価することはできない。

▼ Xは残業として発表会への参加を強制されていた旨主張するが、発表会はO社の業務として行われたものではなく、これに参加しないことによる制裁等があったとも認められないから、同社が業務として発表会への参加を指揮命令したものということはできない。以上のことから、XがICカード使用履歴記載の滞留時間に残業して時間外の労働をしていたものと認められない。

▼ チューターの指示を受けてXは退社前にICカードにより退場時刻を記録した上残業しており、自己の手帳に実際の退社時刻を記録していたと主張するが、ICカード使用の指示については、終業時刻後も会社内に滞留しているXに対し、帰宅を促すためにICカードを使って退場するよう声をかけたという態様のものであったことが認められるから、これによりチューターがXに対し残業を強制したということはできず、Xの手帳の記載は曖昧である上全ての日についての記載があるわけでもなく、信用できない。

▼ 着替えや朝礼、朝のラジオ体操への参加は任意であり、着替えや掃除が義務づけられていたことを認めるに足りる証拠はない。

▼ Xが実習期間中である22年7月1日から12月28日までの間に、就業規則で定められた所定労働時間外に労務の提供をしたとの事実または労務の提供を義務づけられていたとの事実を認めることはできず、Xの時間外労働を理由とする未払賃金の支払請求は理由がない。

▼ Xが時間外労働に従事した事実は認められず、また飲み会への参加や一気飲みを強要されたことを認めるに足りる証拠もないから、使用者責任に基づく損害賠償請求は理由がない。

1)原判決中O社敗訴部分を取り消す。
2)上記取消部分に係るXの請求を棄却する。
3)訴訟費用は第1、2審ともXの負担とする。
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1 コメント

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ひぇ~! (メルマガ読んでます)
2014-11-12 08:53:57
いつもメルマガ拝見しています。
パワハラ被害を受けたとはいえ、最近は1年しか働いていない輩が未払い残業代。しかもたった15分の法内残業の分まで含めて分捕れるものはとことん分捕ろうと請求してくる怖い時代になったんですね。
勿論知恵は弁護士がつけているのでしょうが、このトンデモ地裁判決 高裁でひっくり返って本当に良かったと思います。
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