DV加害者更生プログラム(既婚、未婚、問わず)

DVをしているのではないか、悩んでいる方に心理テスト、グループエンカウンター等を用いて更生の道をお手伝いします

卒業します。リエゾンで学んだこと、気持ちの変化

2023-05-01 19:16:57 | 【DV加害者更生教育プログラム】

Tさん(40代男性)

私がリエゾンに通い始めたのは、別居して離婚調停中に離婚を待つ条件として妻からDV更生プログラム(リエゾン)に通うように提示されたのがきっかけです。妻と別居した原因は、私の妻や子供へのDVでした。直接暴力を振るったわけではないのですが、妻とコミュニケーションがとれず、口喧嘩になって子供の前で壁を叩いてしまって、子供が泣いてしまうということがありました。

 別居直前は、妻の言動に常にイライラしてしまい、自分でも精神状態が普通ではないということはなんとなく気づいていました。しかし、イライラしてしまう理由が分かりませんでした。とにかく、別居から同居に戻りたいという一心でリエゾンに通い始め、このまま離婚したら一生妻と子供に会えず謝り続ける人生になると怖かったのを覚えています。

 

 リエゾンで、まず学んだことは、ストローク(人とのコミュニケーション)と感情についてでした。別居して一人で生活を始めたことでストロークの大切さは改めて分かりました。また、感情の中でも「ラケット感情」という言葉は心に残りました。私は妻にイライラしていましたが、これが本物の怒りではなく、悲しみや寂しさ、恐れの気持ちを怒りで表現したラケット感情であると学びました。

 そして、この怒りの原因は何なのか最初は分かりませんでしたが、インナーチェンジングセラピーを受けることで分かるようになっていきました。

 

インナーチェンジングセラピーは、これまで自分が幼少期から培ってきた経験から決断した人生(人生脚本)でかかえてしまった禁止令をはずしていくカウンセリングのことです。私にはいくつも禁止令がありましたが、特に腑に落ちた2つの禁止令について紹介したいと思います。

1つは、「子供であるな」です。私は嫌なことがあっても、言いたいことがあっても我慢して耐えられる“性格”だと思っていました。なので、私の子供もそうあるべきと思っていました。私の子供はシャワーを頭からかぶるのが嫌いでしたが、強引にかけて洗っていました。このくらいは我慢できるだろうと思っていたからです。インナーチェンジングセラピーを受けたことで、私の“性格”では無く、私が子供の頃に我慢を強いるような親の躾を受けたことで「子供であるな」という禁止令をかかえてしまったことに気づきました。それに気づくと、頭からシャワーを浴びせた時の子供の悲しい顔を思い出して胸が締めつけられ涙が出ました。子供の気持ちに寄り添ってシャンプーハットなどを使ってあげれば良かったなどと、とても後悔しました。

 2つめは、「存在するな」です。義理の両親が毎日のように私の子供に会いに来て遊んだり、料理や洗濯までやったりと、最初はありがたいと思っていました。しかし、次第にイライラするようになり、妻にもう義理の両親が来ないようにと言って喧嘩してしまいました。義理の両親が単純に邪魔だからイライラしたのだと、自分はそういう“性格”なのだと思っていました。インナーチェンジングセラピーを受けたことで、私が子供の頃に親から十分な愛情を受けてこなかったことで「存在するな」という禁止令をかかえてしまったことに気づきました。本当は子供を取られて自分は必要ないと感じてしまったから、いつもやっていた洗濯(料理は元々できませんでしたが・・)を先にやられて自分は必要ないと感じてしまったから、それらを感じて不安になっていたからなのだと気づきました。それに気づくと、あの時妻に不安な気持ちを素直に伝えて、義理の両親との付き合い方をもっと一緒に考えてもらえばよかったと後悔しました。

 インナーチェンジングセラピーでは、今まで自分の性格だと思い込んでいたことが、子供の頃に植え付けられてしまった禁止令が関係していることに気づくことができました。そして、それに気づいたならば、今度はそうならないようにしようという思いが出てきました。

 

 そして、グループワークも私にとって貴重な経験ができました。グループワークは、夫が妻にDVをした事例をとりあげ、その時の夫や妻の気持ちを考え、夫婦の親密な関係を築くために必要な事は何かを話し合うワークのことです。その中でもっとも心に残ったのは「タイムアウト」についてです。タイムアウトは、夫婦が喧嘩に発展しそうになったら一旦話し合いをやめて、お互い冷静になったら再び話し合うというものです。頭で考えると当然だと思いますが、私は妻と喧嘩するまで話してしまいタイムアウトを取ったことがありませんでした。実際にそんなことができるのか正直疑問でした。

しかし、あるグループワークで私が参加者に対して私の意見・考えを強いるような言動をしてしまいました。参加者はそれに納得がいかず、タイムアウトを宣言して出て行ってしまいました。その直後は、私の気持ちの中で何が悪かったのか分からず混乱してしまいました。しかし、しばらくすると(半日くらいかかりましたが・・)相手の気持ちを冷静に考えるようになり、私の言動が悪かったことに気づくことができました。そして、次のグループワークの時に謝ることで、また普段どおり話し合いができるようになりました。むしろ、その後の方が素直に言いやすい感覚になりました。この時に、タイムアウトの大切さを実感しました。今後は話し合いで喧嘩しそうになったらタイムアウトをとるようにして相手の気持ちも考えようという思いが出てきました。

 最後に、もうひとつ心に残った学びは「家族の共生関係」です。私と妻の2人の時はなんとかうまくいっていたのに、子供が生まれてから夫婦関係がうまくいかなくなりました。“子供が生まれると女は変わる”ということは世間から聞いていたので、理由も分からず単純にそういうものだと思っていました。しかし、リエゾンでは、妻は子供が生まれると子供のC(Child)をサポートするためにかかりきりになり妻のCが不安定になること、そして、夫が妻のCをサポート(家事や育児など)しないと夫婦関係がうまくいかなくなることを学びました。夫婦2人の時はお互いのCをサポートできますが、子供ができるとその関係が変わるということでした。これを学んだ時に、私の家族の関係が腑に落ちました。私の家族の場合は、私が妻のCをサポートできず、妻の両親がサポートしてしまったことで夫婦関係が壊れてしまったことに気づきました。

 これを学んだことで、妻のCをきちんとサポートできるように妻の気持ちを常に考え、料理などの家事も夫婦平等にできるようになりたいと思うようになりました。

 

 リエゾンでは健全な夫婦関係を築くための大切なことを他にも沢山学ぶことができました。しかし、結果的には妻に認めてもらえず離婚することになってしまいました。自分は幸せな家族を持つことが夢でしたが失敗してしまいました。

でも、リエゾンに通ったことで、毎日料理を作るようになりましたし、相手の気持ちをよく考え、自分の気持ちもよく考えて言動や行動をするようになりました。そしてなにより、またもう一度自分の夢(家族を持つこと)を追いかけてみようという気持ちが出てきました。これもひとえに、リエゾンがただDVを反省することを促すだけでなく、よりよい人生を歩むことを後押ししてくれたおかげだと思っています。

中島先生やグループの皆様、大変お世話になりました。リエゾンの経験を絶対に忘れずによりよい自分の人生を歩んでいきたいと思います。新しいパートナーを見つけることができた時には報告したいと思います。

本当に皆様、ありがとうございました!

 

リエゾンからのコメント

 本当にこんなに努力する人を今まで見たことがありませんでした。毎週毎週少し遠い他県から来て、個人面談とグループへの出席は一年間ほとんど休まず通いました。前の日に車で来て中で寝たり、めちゃくちゃ朝早く出たりして通ってきました。

個人面談、グループで何を気づき、これからどうしていくのか報告書を毎週作り妻へ送りました。

妻から加害者プログラムに行けと言われ、離婚したくないからただ通うだけ、成長がみられない人もいる中
Tさんはよく努力しました。そして変わりました。

でも残念ですが、妻から許されることはありませんでした。

私はこの努力は通じるのではないかと思っていました。甘かったです。

家族の修復を目指すリエゾンでも、頑張っても男性が許されない、修復の叶わない場合もあります。

許さないのは被害者の自由です。心の中では許さなくても同居に戻る方もいます。別居のまま

別れを選ぶ方もいます。同居のまま別れず許す方もいらっしゃいます。別居・同居に関わらず仕返しが始まる方もいらっしゃいます。

女性がどのような心模様であっても、リエゾンで学びの終わった男性の心模様はただ一つなのです。

それは「対等・尊重をもってして、自分の人生を大切にしていく」ことなのです。

夫婦の親交親密を目指し努力を続ける、その先に心地の良い関係性があるということを学んだことで確信したからです。

Tさん、卒業おめでとう!自信を持って送ります。今のTさんと出会える方はどの様な方なのでしょう。きっと争いのない穏やかな夫婦関係をもてるに違いありません。

 

 

 

 

 

 

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