DV加害者更生プログラム(既婚、未婚、問わず)

DVをしているのではないか、悩んでいる方に心理テスト、グループエンカウンター等を用いて更生の道をお手伝いします

殺されなくてよかったじゃない

2016-07-02 23:08:04 | 【DV加害者更生教育プログラム】
40代男性Kさん


2年前の2014年8月、たまたまその日は仕事を早く片付け帰宅すると、パートナーと子供達の荷物がなくなっていました。あわててパート
ナーの携帯電話に電話をしましたが、繋がりませんでした。数時間後パートナーからメールの着信があり内容は「家をでます。数日中に裁
判所から離婚調停の申立書が届くのでそれを見て判断してください。」と記されていました。

パートナーとは出口の見えないパワーゲームを繰り広げていたのは認識していましたが、まさか自分がこのような当事者になるとは思いも至りませんでした。また、パートナーが「モラル・ハラスメント」の本を読んでいたことは知っていましたが、自分が当事者という認識すらありませんでした。

自分にとっては急かつ想像を超える出来事でした。それから数日後インターネットでリエゾン(中島さん)の存在を見つけ駆け込みました。

まず、私がパートナーに対してきた行為(怒鳴る・無視する等)がハラスメントに該当するのか質問したところ、短刀直入にYesの回答がありました。自分の中では、すくなくても暴力はふるっていないので、DV(ハラスメント)には該当せず、正当防衛の一部程度に都合よく解釈していたものが、専門家から客観的にDV(ハラスメント)の烙印を押されたものですから、かなりのショックを受けました。

自分を完全に見失い、何が正しくて、何が悪いか完全に分からない状態になりました。駅のホームで電車を待っていると、無意識に飛び込もうとしている自分に気付くことが何度かありました。また、人生はじめて精神科医を受診すると強制入院するように指示されました。

そんなとき、中島さんから「殺されなかっただけ(パートナーを加害者にしない)よかったじゃない」と言われました。最初はなんてことを言うのだろうと懐疑的に聞いていましたが、その意味が分かるにつれ、自分の行為がどんなに愚かだったかを思い知らされました。

人間は恐怖(支配)から開放されるには、恐怖から逃れるか、または、自ら恐怖を除去するしかないと本能で知っている。しかし、そこの選択は紙一重であり、実際に、この日本でも恐怖から逃れる為に本能的にパートナーを殺害するケースが跡を立たない。

さらにDV被害者が自らの身を守る行為で行ったにも関わらず、報道ではDVのことはほとんど触れられず、ただパートナーを殺害した加害者として扱われてしまう。

かくいう私も以前はニュースで、「妻(夫)が夫(妻)を殺害」との見出しをみると、「どんなに凶暴な妻(夫)なんだ?」または、「保険金目当てか?」程度にしか考えませんでしたが、そこには夫婦だからこそ逃れられない恐怖と支配、そしてギリギリの精神状態の中での判断があることを教わりました。

実際にこのようなケースでパートナーから殺害されるのはインターネット上の情報では毎年数百人を超えているそうです。しかし、単なる事件として(DVのことには一切触れられずに)処理をされてしまうものも含めれば、凄まじい数字となることは想像に難くはありません。

支配されている妻(夫)がその恐怖から抜け出すため、無意識で相手を殺害してしまった瞬間に、社会会的にはDV被害者から殺人犯にかわり、子供達は大好きな両親を一度に失うばかりか、犯罪者の子の十字架を背負わなくてはいけない。

こんなことがあっていいのだろうか?しかも、無意識に殺害してしまうか、または、逃げるかは紙一重の判断であり、極端にいえば現代社会では誰にでも起きうること。「殺されなかっただけよかったじゃない」のた意味がよくわかるようになってきました。

正直言って最初に聞いた時はあまりよく理解できていませんでした。それは支配とか恐怖という言葉に自分は一切縁がないという意識を持っていたからだと思います。サラリーマンの夫(妻)が、専業主婦の妻(夫)に生活費を渡しあれこれ細かく指示をする。これだけでも妻の自尊心が失われ次第に支配の関係となり、経済的DVに発展していく。暴力を振るわなくても、パートナーに恐怖を与えそれを利用して支配すれば、それが正にDVになることを深く学びました。

以前の私は口撃に対しては口撃で対抗して何が悪い?手を上げているわけではないから、DVにもあたらないのはもちろんのこと、むしろ正当防衛の一部であると都合よく解釈していました。そんな無知の甘えた考えをしていた私でも、中島さんから言われた言葉がきっかけで、他人の心を思いやる大切さ(当たり前)ということに気づくことができました。

相手を尊重すればするほど、今までどれだけ自分が外面だけの人間だったのか、また、自分の行動がどれだけ家族を苦しめてきたかを思い知らされました。自分のしてきた行為に向き合うというのは、やればやるほどつらいことです。正直言って何度逃げ出そうとしたか分かりません。

一度壊れてしまったものを元に戻すことが簡単ではないことぐらい分かる年齢です。だけど、生きていれば、自分がかわることができれば元に戻る可能性が0%から1%にはなるかもしれない、そう信じてリエゾンで修行しています。正直リエゾンでの修行はそんなに甘いものではありません。但し、同じような境遇で、同じようにあきらめずに頑張っているメンバーと本音で語り合っていると、そこから一筋の光が見えることがあるのです。

自分達が犯してしまったことを反省するのは当然ですが、犯してしまったことからこそできることもあると思うのです。今、ここにいるメンバーは「妻(夫)が夫(妻)を殺害」とのニュースを見る度に、DV被害者を殺人犯にしてしまい、その結果、何の罪もない子供達から未来を奪うような社会を変えなくてはいけないと本気で考えています。




リエゾンからのコメント

年間DVで殺されている妻の数をご存じでしょうか?ほとんどがニュースで流れていないのですが100人前後になります。DV防止法が無かったころは120人前後にもなるのです。ニュースに流れる事件は元夫からとか、彼氏からとか、現婚姻関係にないものばかりです。

では、妻から殺される夫の数をご存じでしょうか?これは50人から60人にもなります。そんな馬鹿な、と思えるくらいの数字です。
ネットの中で確かめることができます。内閣府の女性への暴力、親密な相手からの家族内殺人で、ネットに毎年計上されています。

一体、夫を殺害している妻は一体どのような妻でしょうか。それは夫からDVをされている被害妻なのです。DV加害妻たちではありません。(少しは入ってきますが)
この恐るべき数字があまり日本の皆さんに知れ渡っていないのです。男性の100人前後に対して半数強女性が自分や子どもを守るため夫に過剰な防衛、反撃をしています。反撃という簡単なことではないかもしれません。
生きるか死ぬか、殺されるか、殺すか、のギリギリのところで生きている妻たちもいるのです。
人生を自ら潰さないで、逃げないとだめです。自分を自分の人生を大事にしないと誰も大事にできません。


Kさんがリエゾンに来たとき、彼は蕁麻疹で顔から首から腕まで真っ赤でした。
なんでこんな状態になるのだと混乱していたのでしょう。蕁麻疹は2か月くらい出たり引っ込んだり続いていました。
彼がしたDVは経済的なDVと言葉でのDVでした。身体的なDVでなくとも相手が鬱などになり、精神的に追い込まれていたら
充分すぎるDVです。

今では蕁麻疹が出ることもなく、子どもを優先に、そして別居中の妻を思いやれる男性に成長しています。
彼の記事を読むと成長の変化を感じることができます。
よくここまで書けるようになったなあと感心します。
グループにおいても他者の気持ちを汲める人に成長しています。
妻の戻る可能性を信じて頑張り続けている人です。
子どもたちはパパが大好きです。

人は成長します。DVをしてしまった人もあきらめないで「変わりたい」と思うことが変われる力になるのです。

男性も女性もあきらめないこと、それが大事なことなのです。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする