らびおがゆく Vol.3

山形県を中心とした演奏活動等

マタイ受難曲

2013年01月25日 23時59分39秒 | お気に入りのCD
 今週の山形響は、ブルックナー定期演奏会の余韻もなく、山梨~東京~千葉と文化庁の派遣で関東の方に行っていました。私は憲法で保障されている休息権を行使して、実はお休みをいただいていました。オケの仕事プラス冬の大切な仕事の雪かきで、少々体が参っていた(主に腰)ので、ちょうど良い休暇になりました。皆さんが多少暖かい関東に遠征に行っている間に、私はあいにく、せっせと雪かきをする毎日でした。しかし、温泉にも行ったので多少腰の方は改善しつつあります。

 せっかくのお休みなので、普段出来ないことを「たったひとつ」で良いから実現してみようと思っていました。美味しいモノを食べに行く?誰かとデートする??

 全然違います!

 J.S.バッハのマタイ受難曲を全曲通して聴いてみるという行為でした。

 何度か演奏はしたことがあります。CDを聴くこともあります。しかし、全曲通すと約3時間弱なので、いつも細切れなんですよね。演奏会に行って聴く人より遙かに演奏家は、なかなか音楽を静かに聴く機会に恵まれていません。うちの奥さんが仕事で関東に行っているので、良い機会だと思って実現させました。

 CDを聴くにしても楽譜を見ながらとかではなくて、BDで映像を見ながらぶっ通しで演奏を聴きました。リヒターにするかこれにするか迷ったのですが、2012年に創立800周年を迎えた名門、聖トーマス教会少年合唱団とG.クリストフ・ビラー指揮ゲヴァントハウス管弦楽団による演奏を選択しました。聖トーマス教会合唱団での演奏で、教会も美しくずーと飽きないで聴く(見る)ことが出来ました。

 約3時間の演奏中にトイレにも行かず、演奏に集中していました。演奏者として参加してみたり、教会内の聴衆になってみたり色々な立場で聴いていました。実は、マタイ受難曲をこうやって通して聴くのは人生初なんですよね。名曲なのは分かっていても人生の貴重な3時間を、その「聴く」という行為にあてることが、今まではなかなか出来なかったのでした。3時間と言えば、100回聴くとして、300時間~約12日間です。これだけの長大作ですから100回位聴かないと曲の隅々まで理解するのは難しいという仮定の下での計算ですが、限られた人生でマタイ受難曲に12日間もかけられるでしょうか??

 話が飛躍しすぎましたが、音楽を聴くという行為は、多かれ少なかれお客様の時間を頂戴して、演奏を聴いてもらうという行為なんだとあらためて思いました。勿論お客様は喜んできてくれる人も付き合いの人も色々いますが。

 だから演奏家としては、1回ずつが命がけ(大げさですが)の演奏で、お客様にぶつかってゆく(提供する)のが、本当の音楽家なのでしょう。そこには見栄・はったりのたぐいは邪魔ですね。真摯に音楽と向き合う姿勢で常にいなければと思うわけです。

 最初辛いかもと思っていた3時間でしたが、心が軽く透き通っていったような気がしました。死ぬまでに、後何回聴けるかな・・・・。
HMVジャパン
コメント (2)
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