「電力の供給は大丈夫」
同志社大学教授の山口栄一氏は、電力が今は、東日本ーー50ヘルツ、西日本ーー60ヘルツと別々になっているけれど、ヘルツを統一しなくても、電力の不足分を補うことは可能だ、と述べておられます。 (全文、4/2、読売新聞)
「電力融通60ヘルツのままで」
関東には、現在の主流の半導体と、5年後に主流となる次世代半導体の約5割が集積している。東京電力の計画停電の影響で、日本を支えるハイテク産業が「壊死」する瀬戸際に追い込まれている。
半導体の製造工程は極めて精密で、不純物が混じらないよう設定された「クリーンルーム」が欠かせない。だが、1日に3時間停電して空調が働かなくなると、不純物が入り込む。
連続送電を前提に設計しているため、不純物を取り除くのに相当の時間がかかり、1日3時間の停電で稼働率0%が続くこともある。
政府が腰を据えて、「逃げ出さなくても大丈夫、我々が何とかする」と言わない限り、関東から逃げ出すところが出てくると見ている。
逃げ出す先として西日本ならまだ良いが、海外に流出するとなると問題だ。すでに検討を始めている企業もあると聞く。台湾や中国・蘇州など、ハイテク産業の集積を図るところが補助金を出すといえば、流出が現実味を帯びる。
日本にしかできないハイテクの物作りは、日本の大学を出た超優秀な人材が集まる分野だけに、そうなれば日本にとって大きな打撃だ。夏場の電力不足の問題は、政府が言うような「ライフスタイルを変えてくださいね」という、家庭のレベルの話に収まるものではないのだ。
夏場の電力需要のピークは、過去5年間の平均で、6100万キロワットに上る。東電は、4650万キロワットしか供給できないため、不足分の1450万キロワットをどうするかが喫緊の課題だ。
まず周波数が60ヘルツの西日本から、50ヘルツの東日本へ融通するために、周波数変換所を増設する案だが、変換所1箇所で最大60万キロワットしか賄えないため、24箇所必要で、夏には到底間に合わない。
次に、東京電力や独立系の電力会社が発電所を増設することも考えられるが、住民の同意を得て行政手続きを進めるだけで、相当の時間を費やすだろう。
そこで提案したいのが、西日本の電力を60ヘルツのまま東電管内に供給する方法だ。
東電の鉄塔を借りて西日本から送電線を延ばし、60ヘルツの電力を東日本に送る。東電の供給能力が落ちているから、余裕のある送電線を借りることも可能だろう。変電所は新設する必要があるが、東電の変電所の敷地内に作ればよく、周波数変換所や発電所を新設するのに比べれば時間もコストもかからない。
60ヘルツの送電業務を担うのは、北陸、中部、関西、中国、四国、九州の電力6社と、電源開発、日本原子力発電が共同で作る新会社などが考えられる。西日本の既存の発電所をフル稼働すれば、不足分を十分補うことができる。
東電は日本の電力の1/3を供給しており、「縄張りに入ってくるな」とばかり、地域独占を守ってきた。しかし、今回は東電から「助けてくれ」と言うべきだ。
日本には本来、競争原理が働いているのだから、顧客にだって、50ヘルツが良いか、供給の安定している60ヘルツが良いかを選ぶ権利がある。
同志社大学教授の山口栄一氏は、電力が今は、東日本ーー50ヘルツ、西日本ーー60ヘルツと別々になっているけれど、ヘルツを統一しなくても、電力の不足分を補うことは可能だ、と述べておられます。 (全文、4/2、読売新聞)
「電力融通60ヘルツのままで」
関東には、現在の主流の半導体と、5年後に主流となる次世代半導体の約5割が集積している。東京電力の計画停電の影響で、日本を支えるハイテク産業が「壊死」する瀬戸際に追い込まれている。
半導体の製造工程は極めて精密で、不純物が混じらないよう設定された「クリーンルーム」が欠かせない。だが、1日に3時間停電して空調が働かなくなると、不純物が入り込む。
連続送電を前提に設計しているため、不純物を取り除くのに相当の時間がかかり、1日3時間の停電で稼働率0%が続くこともある。
政府が腰を据えて、「逃げ出さなくても大丈夫、我々が何とかする」と言わない限り、関東から逃げ出すところが出てくると見ている。
逃げ出す先として西日本ならまだ良いが、海外に流出するとなると問題だ。すでに検討を始めている企業もあると聞く。台湾や中国・蘇州など、ハイテク産業の集積を図るところが補助金を出すといえば、流出が現実味を帯びる。
日本にしかできないハイテクの物作りは、日本の大学を出た超優秀な人材が集まる分野だけに、そうなれば日本にとって大きな打撃だ。夏場の電力不足の問題は、政府が言うような「ライフスタイルを変えてくださいね」という、家庭のレベルの話に収まるものではないのだ。
夏場の電力需要のピークは、過去5年間の平均で、6100万キロワットに上る。東電は、4650万キロワットしか供給できないため、不足分の1450万キロワットをどうするかが喫緊の課題だ。
まず周波数が60ヘルツの西日本から、50ヘルツの東日本へ融通するために、周波数変換所を増設する案だが、変換所1箇所で最大60万キロワットしか賄えないため、24箇所必要で、夏には到底間に合わない。
次に、東京電力や独立系の電力会社が発電所を増設することも考えられるが、住民の同意を得て行政手続きを進めるだけで、相当の時間を費やすだろう。
そこで提案したいのが、西日本の電力を60ヘルツのまま東電管内に供給する方法だ。
東電の鉄塔を借りて西日本から送電線を延ばし、60ヘルツの電力を東日本に送る。東電の供給能力が落ちているから、余裕のある送電線を借りることも可能だろう。変電所は新設する必要があるが、東電の変電所の敷地内に作ればよく、周波数変換所や発電所を新設するのに比べれば時間もコストもかからない。
60ヘルツの送電業務を担うのは、北陸、中部、関西、中国、四国、九州の電力6社と、電源開発、日本原子力発電が共同で作る新会社などが考えられる。西日本の既存の発電所をフル稼働すれば、不足分を十分補うことができる。
東電は日本の電力の1/3を供給しており、「縄張りに入ってくるな」とばかり、地域独占を守ってきた。しかし、今回は東電から「助けてくれ」と言うべきだ。
日本には本来、競争原理が働いているのだから、顧客にだって、50ヘルツが良いか、供給の安定している60ヘルツが良いかを選ぶ権利がある。