kyon's日誌

つれづれに・・・

「桜子は帰ってきたか」

2016年12月20日 | 日記

今年の締めくくりに凄いサスペンスを読んでしまった気がする・・・いや、これをサスペンスとして括っていいのかはワタシには分らないけれど。
題名からして戦時中の話だろうと踏んでいたが・・・まぁ、大筋ではその話がベースである・・
中学生の時だったか読んだ「流れる星は生きている」というイメージと少しダブった感じもしたのだが、これがねぇ・・・それどころじゃないのね・・・ドンドン引きこまれてね・・・
作家が凄いのだわ・・・
既に亡くなっているようだが、在日韓国人作家で、作家名は麗羅(レイラ)さん、日本名は松本修幸さん、本名は郭埈汶(チョンジュンムン)さんと言う。
解説から要約すると・・・・
1934年に出稼ぎに来ていた父親に呼び寄せられた。1944年に陸軍志願兵で入隊、一か月で除隊して日本に帰還。その後終戦の混乱に乗じて再度故郷の咸陽に戻り、小学校の教師をする。韓国で左傾し、南朝鮮労働党の秘密党員(22、3歳頃)工作員としてアメリカの傀儡である李承晩政権転覆のために暗躍。1947年に韓国警察に逮捕され激しい拷問の末に背骨を三か所折られ死を覚悟、父親が田畑を売り払って工面した金で警察を買収し死者として棺桶に入れられそのまま親族に引き渡されて九死に一生を得た・・・・傷が癒えてからは密航船で単身日本へ渡り、パチンコ店員、不動産業者、高利貸しなどを経て執筆活動を始めた・・・云々・・・いやはや、何ともすさまじい経歴だ!(東山彰良氏の解説から引用)

作家自身が凄い経歴だからなのか・・・本の読後感が重い・・・が、終わりまで読んでスッキリする。不思議な感覚であったなぁ・・・・
奇しくも、田辺聖子氏が読後感を述べている文を拝借する・・・

「読み終わり、巻を閉じて私たちはそこに、人間の運命と歳月の流れをみる。
歳月の川に浮き沈み、輪廻する人生曼荼羅を見る。
結末は悲劇であるが、悲しみは昇華され、喨々たる唄声が余韻にひびいて、すがすがと心は洗われる。」

そうなのだ・・・ワタシの心にも余韻は深かった。人の運命に翻弄され悲惨な生き方をする、なのに桜子の夫との約束を守ろうとし続けるクレは如何なる運命の残酷にも耐える・・・クレの生き様は壮絶だが粛々と耐え抜く・・・何十年という時間をも超える・・・
先だって、命より大事なものが他にもあるとある方が呟いていたのがずっと心に引っ掛かっていた答えが・・・これだろう、と思ったのだった・・・解説者も一読を願うと書いてあった。
ワタシにもそう思える作品だった。。。。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« クー太郎の後始末 | トップ | バス停のお爺さん »

コメントを投稿