森の空想ブログ

「廊下」が展示空間となる時/「神楽」と「仮面」の民俗誌(11)[展示品解説⑪]/オンライン展覧会<4-11>]

この廊下は、かつてこの家に住んだ子どもたちが走り回った板張りの空間である。

「この家」というのは、石井記念友愛社を戦後復興した児島虓一郎(こじまこういちろう)・先代理事長が手がけた建築物だ。およそ100年前にこの地を拓き、孤児たちと暮らし、農業・教育・芸術が出会う理想郷づくりを目指した石井十次の事業は、十次の早逝と太平洋戦争によって中断されたが、終戦後、復員してきた虓一郎氏によって再開された。その虓一郎理事長が建てた施設群が、「石井記念友愛社」の事業を引き継いできた。友愛社の歴史の中で、戦後復興の拠点となった記念すべき建物がこの家なのである。

私どもは、新館が完成して空家になっていたこの家を、20年前から使わせていただき、「森の空想ミュージアム/九州民俗仮面美術館」として修復を重ねながら運営してきた。古民家の再生と再利用が現代アートのテーマの一つとなり、コロナ後の地域再生の手法の一つとなるのは必須であるから、この仕事も激動する時代の中で一定の役割を果たすものになる。

これまでの20年間に、ここには、画家・音楽家・工芸家・舞踏家・オーガニックの生産者・神楽の伝承者や研究者など、多くの仲間たちが集まってきてくれた。そして2年半ほど前、この家で暮らしたことのある林田浩之君が長い旅を続けた後、「帰って」来た。いま、彼は、この建物の一角、写真の突き当りに見える小部屋で暮らしながら、里山の森の再生や仮面美術館の修復・展示などの作業をしてくれている。子どもの頃に過ごした懐かしい部屋や廊下が、彼の帰る場所だったのであり、そこがこのような「仮面美術館」としての空間に生まれ変わり、再生されてゆく過程を共有するのは、彼にとっても手ごたえのある仕事なのである。

空間を変える力は「仮面」に負うところが大きいのはいうまでもない。玄関を入った正面で、翁と媼の一対が来客を迎える。そして「猿田彦」の一群が、展示室へと案内する。それから鬼神のコーナーがあり、若男や翁面、「岩戸開き」の神々などが鑑賞者をあたかも夜神楽の一場面のような主展示室へと誘導する。ここはすでに「廊下」ではなく、神々の宿る神秘空間なのだ。


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