歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

松下 良「加賀野菜 それぞれの物語」

2010-04-07 00:15:18 | 読書


 松下 良「加賀野菜 それぞれの物語」を読みました。

 北陸の仕事をさせていただく中で、加賀野菜に興味を持ちました。金沢出張の際に何度か加賀野菜を使っていることを銘打った食事を頂き、先日も加賀野菜のひとつ「五郎島芋」を使用したアキバ系ドラ焼きをいただきましたが(こちら)、確かに美味しいです。「加賀野菜」は、「京野菜」と並ぶ日本を代表する地域ブランド野菜で、たぶん藩政期の頃から加賀で作られている伝統野菜、という程度の認識だったのですが、本書を読んでその認識がかなり異なること、そして野菜そのものの歴史が意外に浅いということを知りました。

 「加賀野菜」は地場産品のブランド化の成功例、という文脈で語られる例を多く見かけます。しかし、「加賀野菜」はブランド化が目的ではなく、伝統を守ろうという生産者たちの一種の文化運動の結果であることが本書を読むと理解することができます。
 また伝統野菜についても少々私は誤解をしていました。確かに藩政期から金沢で作られていた「加賀野菜」もあるのですが、明治維新後に福島県など遠方からの品種が持ち込まれ地元に根付いたものも少なくありません。なお本書によると、そもそも野菜というものが商品として市場で扱われるようになるのは江戸期に入ってからなのだそうです。日本庭園を作る職人集団である植木屋の歴史は1000年に及ぶのに対し、野菜の生産に不可欠な「種」を商売にする「種屋」の歴史はわずか300年でしかなく、しかも明治初期には「種屋」は全国でも20軒程度で、京都、大阪、江戸の3都市以外には金沢に1軒、福岡に1軒しかなかった、というのは意外です。

 本書は「加賀野菜」のみならず、加賀百万石の文化、そして我が国の野菜づくりの歴史について考える上でも参考になります。

井波彫刻ギターが第10回富山県ふるさとCM大賞最優秀賞(一般部門)に登場

2010-04-05 21:26:30 | Weblog
 富山県の伝統工芸、井波彫刻のCMを地元の高校が制作し、富山チューリップテレビの第10回富山県ふるさとCM大賞最優秀賞(一般部門)を受賞したようです。

 その動画がこちら(コメント非表示を推奨)。井波彫刻ギターが登場します。


 このギター、私も井波彫刻協同組合を訪問した際に(こちら)実際に持たせてもらいましたが、かなり重いものです。CMではできればギターをアップで見せて、その伝統の技をアピールすればもっと良かったと思いましたが、CMに登場した女子高生の女の子は手にするだけでも結構大変だったでしょうね。

台湾系EMS、FOXCONN(鴻海)のほぼ公式マスコットキャラクターには驚かされた

2010-04-05 12:51:12 | Weblog
 台湾系EMSのFOXCONN(鴻海)といえば、中国の華南地区を中心としたグローバルな生産・調達ネットワークを活用しながら、iPhoneなどの携帯電話、任天堂WiiやソニーPSPなどのゲーム機、各種ノートパソコンの生産委託を請け負う、世界最大のEMSです。エレクトロニクス業界では売上高で大手有名セットメーカーと肩を並べる規模を持つ巨人であり、しかも金型など上流工程も内製化しておりその設備投資も桁外れであることから、工作機械など産業機械メーカーもその動向には目が離せない存在です。私も同社について何度か過去にこのブログで取り上げました(例えばこちら)。
 そんなFOXCONNが、一般消費者を対象にしたパーツ販売のビジネスも行っていたとは知りませんでした。てっきり大企業を相手にした法人ビジネスしかやっていないものだと・・・しかも、販売の正規代理店がアキバ系のマスコットキャラクターまで制定していたとは・・・

(以下引用)

FOXCONN正規代理店 株式会社リンクスインターナショナルはFOXCONNのほぼ公式マスコットキャラクター(日本限定)として、ふぉっくす紺子ちゃんを採用いたしました。デザインは永野つかささんです。
ふぉっくす紺子ちゃんは、FOXCONNのFOXからキツネをイメージした妖精キャラクターです。妖精の国のPCパーツショップでFOXCONN製品の販売を担当します。PCパーツの中に入って秋葉原に遊びにいったりもします。キャラクター独自の自由な活動展開を予定しています。ふぉっくす紺子ちゃんへの活動依頼はお気軽にご連絡ください。

ふぉっくす紺子ちゃんについて

名前   ふぉっくす紺子ちゃん
生年月日 12月9日
役割     妖精の国のPCパーツショップでFOXCONN製品の販売担当
設定     狐の妖精。身長112cm。
好きな食べ物 甘いもの。コーンクリーム。

(引用終わり)

出所:http://www.links.co.jp/info/2010_03/foxconn-2.html

 「ふぉっくす紺子ちゃん」って・・・そもそも「ほぼ公式」とはどういう意味なの・・・上記の出所のリンク先にそのイラストが掲載されていますが、もうこれは完全にパーツユーザーの中核を成す(と思われる)オタク層を狙っているとしかwww
 世界規模の企業になっても正規代理店のこんな取り組みを容認するFOXCONN、やはり只者ではありません。

アメリカの州別に素形材の出荷額を調べてみた

2010-04-05 00:12:40 | 海外ものづくり事情
 我が国の工業統計調査に相当する、U.S. CENSUS BUREAU, Annual Survey of Manufacturesでアメリカの州別に素形材の生産状況を調べてみました。かなり細かく産業が分類されているのですが、州別の統計(Geographic Area Statistics)では、4桁の分類でしかデータが取れません。
 素形材はどれだろうと調べてみると、Foundries(3315)、Forging & stamping(3321)がそれに該当します。前者は鉄鋳物、非鉄鋳物、ダイカストが合算されており、後者は鉄及び非鉄の鍛造、金属プレス、そして粉末冶金などが合算されていますが仕方ありません。両者の2008年におけるTotal value of shipments ($1,000)を表にしてみました。


出所: Sector 31: Annual Survey of Manufactures: Geographic Area Statistics: Statistics for All Manufacturing by State: 2008 and 2007

 両者とも自動車産業と深い関係がある産業ですから、オハイオ、ミシガン、ウィスコンシンといった五大湖地域の州が上位に来ることは頷けます。西部はカリフォルニアがFoundriesで9位、Forging & stampingで5位、オレゴンがFoundriesで10位に入っているほかはほとんど登場しませんし、中西部もForging & stampingでテキサスが2位に入っているほかはぱっとしません。テキサスで自動車を生産しているというイメージがあまりないので、航空宇宙産業や石油産業の関連かなあ、と想像しました。なんだかんだでやはり素形材の生産は五大湖地域を含む東部に集中していますね。
 衰えたとはいえ依然として巨大な存在であるアメリカの機械工業は、調べてみると意外に面白いのではないかと思います。

光州金型産業振興会東京事務所を訪問しました

2010-04-04 23:36:11 | 海外ものづくり事情


 この3月末に東京・虎ノ門の光州金型産業振興会東京事務所を訪問しました。
 光州の金型メーカーは219社と全国(4995社)の4.2%に過ぎないのですが、試験生産を行うための大型のプレス機、射出成形機が備えたトライアウトセンターを設立したほか、産学官連携による人材育成、技術開発、企業経営に対する支援など、韓国政府は光州市の金型産業の育成に相当に力を入れています。長年にわたって光州市を含む韓国南西部は産業の発展が遅れた地域でしたが、同地域を地盤とする金大中氏が大統領に就任して以来、風向きが大きく変わったようです。

 しかし驚いたのは、光州市という韓国の一地方都市の業界団体が、海外にビジネスチャンスを求めて拠点を設けているということです。光州金型産業振興会は2007年に東京事務所を開設し、2008年にはフランクフルト、マレーシア、トルコに駐在員を置いています。彼らは現地で金型メーカーの営業窓口機能を果たしているのですが、この海外ネットワークがお互い連携することで金型ユーザーの海外事業展開も支援できる仕組みになっています。例えば、日本の某大手自動車部品メーカーは金型を光州で起こして全世界に供給しており、欧州の某国での生産ラインを立ち上げる際には、光州の金型メーカーの技術者に加えて光州金型産業振興会の東京事務所の職員とフランクフルトの駐在員が立会い、彼らが日本語と現地語の通訳を行うことで円滑な生産の立ち上げを実現したとのことでした。
 私はこれまで韓国のものづくりについてあまり注目していなかったのですが、韓国政府の産業振興策、そして金型業界の海外戦略に対する力の入れ方の本気度を知り、いろいろと考えさせられました。