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クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

“一青窈”と“小林武史”のスキャンダルは? ―愛人の資格と作法―

2007年01月26日 | 恋部屋
少々スキャンダラスな話題と、
日本人の恋愛観に触れてみたいと思います。
「波の塔」や「今週、妻が浮気します」のドラマにちなんで、
“不倫”に関する記事(※)をいくつか書いたせいか、
この頃不倫の言葉に敏感になっている気がします。
gooニュースを見ると、一青窈(歌手)と小林武史(音楽プロデューサー)の不倫騒動が報じられていました。
一青窈にとっては初のスキャンダルとのこと。
これまで“妻”の視点が何かと多かったため、
独身女性の既婚男性に対する恋愛が懐かしくさえ感じられます。

一青窈さん30歳、小林武史氏47歳。
後者の妻は「マイ・リトル・ラバー」のボーカル“akko”として知られています。
芸能人はスキャンダルが発覚すれば世間に知れ渡ってしまうので、
華やかな一方で大変な商売だと思います。

さて、妻の不倫が主流(?)になりつつある現代ですが、
『マディソン郡の橋』や『失楽園』がこの流れを引き起こした(かもしれない)ことは、
以前の記事で述べました。
ただ、公になっていなかっただけで、
ずっと昔からあっただけのことかもしれません。
夫も妻も不倫をするのです。
ところで、2000年になってから早くも7年が経つ現在。
過去を少し振り返ると、1990年代最後に不倫の特集を組んだ雑誌がありました。
それは新刊書籍情報誌「ダ・ヴィンチ」です。
1999年12月号に「「愛人」の資格と作法」と題して、
独身女性から見た不倫を特集しました。
そこに掲載された不倫に関するデータを少し見てみたいと思います。

〈相手はどんな人?〉
会社の上司・先輩42.7%
仕事関係者20.2%
見知らずの他人14.0%

〈相手の妻に対しての気持ちは?〉
何も感じない54.0%
申し訳ない18.2%
憎い5.7%

〈(男の本音)愛人とは将来どうしたいか?〉
ずっと愛人としてそばにいてほしい47.1%
妻と別れて家庭を持ちたい17.6%
別れたい5.9%

〈(男の本音)妻との離婚は考えているか?〉
いない86.7%
考えている13.3%

あくまでも1999年のデータです。
これによると、既婚男性の不倫はおおよそ身勝手な場合が多かったようです。
年の差は10~19歳年上が多く、女性の場合愛人としての自覚は、
どちからというと希薄というデータも出ています。
愛人期間で最も多いのは1年未満。
ただ、男と女の「不倫」の考え方はまるで違っていて、
男の場合いい加減さが目につくようです。

さて、こうした不倫の根幹にあるのは“モラル”だと思います。
モラルの侵犯、すなわちタブーを破ってしまうことで、
「資格」や「作法」という概念が発生するのでしょう。
しかし、かつての日本はこの手のモラルは希薄で、
男女の交歓はかなり自由でした。
この日本人の恋愛について、作家の京極夏彦氏は、
著作の登場人物に次のように語らせています。

 ムラの女達は積極的に夜這いをした。娘組の者だけでなく、後家や出戻りにも夜這い
 はかかる。夜這いは自由恋愛に近いものだったのです。
 ムラには百人斬りを自慢する親父も居れば百人抜きを自慢する人妻も居た。
 若者は筆下ろしと称して後家や親戚の人妻に手解きを受け、
 娘は初潮があれば娘宿に通わせて男遊びをさせた。
 こと程日本とはそう云う国だったのです。

“戸主がいて妻は貞淑で家を守る”という概念は武家の作法であり、
それの一般化は男を皆武士にするためだったと、その人物は言います。

 徴兵するのに都合良い戸籍制度、戦闘意欲を削がぬ貞淑な妻――
 これらの常識は男は外で戦って無自覚に死んでくれとと云う制度なんです。

村における自由恋愛は明治から大正にかけて衰退し(家制度の確立に伴って)、
戦争によって現代に繋がるモラルが確固として作られました。
それ以前の男女の交歓は至って自由であり、
かのフランシスコ・ザビエルは風紀の乱れた国として嘆いたそうです。
昔の人の結婚というと、全てが親に委ねられていたイメージがありますが、
むしろ古い時代の方が現代よりもさらに自由だったのです。
今回の一青窈と小林武史の不倫騒動に似た話題など、
日常茶飯事だったのでしょう。
「百人抜きを自慢する人妻」というのも凄いものです。
とは言え、いつの時代もスキャンダル(=刺激)の話題に人々は敏感なもの。
モラルを守ることに越したことはありません。

※参照記事
 「高貴な不倫のおかしなオチは?」(06.12.28)
 「今週、妻が浮気します」の“妻”に当てはまる女は?」(07.1.17)
 「「今週、妻が浮気します」の妻は“だいたひかる”か?」(07.1.18)
※画像は「ダ・ヴィンチ1999年12月号」の表紙を飾る高橋克典氏です。
 本文と高橋氏は特に関係ありません。

参考・引用文献
「ダ・ヴィンチ1999年12月号」メディアファクトリー
京極夏彦著『絡新婦の理』講談社文庫


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