カタツムリの富士登山(6)

2020-11-23 10:03:54 | 童話
『あ~あっ、よく寝たなぁ。』
僕は、あまり寒くないので目がさめた。
そして、岩の穴の中から外を見ると、雪はほとんど無くなっていた。
『お父さんとお母さん、僕は約束を守って家の中にいたよ。また今日から富士山を登るからね。』
穴の外でお水をタップリ飲んで歩き始めた。雪の上や、雪解け水の上は冷たいので、乾いている所を歩いて行った。

『ランランラン、ランランラン。』
今度は、僕が歌っても、だれも『ルンルンルン、ルンルンルン。』や『ピッピピピ、ピッピピピ。』と歌ってくれる友達がいません。
『下りる時に、トンボ君やチョウチョさんと一緒に歌えるから、今は僕だけで歌おう。』

そして、僕は何日間も『ランランラン、ランランラン。』と歌いながら登って行った。
また時々寒い日があるので、寒い時は暖そうな岩の穴を探して暖かくなるのを待つことにした。

僕の歩いている所から遠くを見ると、人間が登って行く登山道に、多くの人がリュックを背負って、ツエを持って一列に並んで歩いている。だけれど僕みたいに歌いながら登っている人はいません。