カタツムリの富士登山(8)

2020-11-25 08:47:37 | 童話
次の朝、僕は頂上の少し下にある神社を目指して登って行った。
『この神社にも登山者が一杯いるなあ。』
登山者が神社でお参りをしているので、僕もお参りをした。
『無事に山頂まで行って、お父さんとお母さんが待っている所に無事に帰れますように。』
僕は寒くなる前に山の下の方に下りたいので、お参りをしたら、山頂を目指して速く歩いて行った。
『あそこにいる登山者が写真を撮っている。あそこが山頂なんだ。』
山頂に着いたが、僕はカメラを持っていないので、お家に帰った時に、お父さんとお母さんにお話しができるように、山頂からの風景をしばらく見ていた。

『山頂に着いたので、転がり落ちないように注意して下りよう。』
また僕は歌いながら歩いた。
『ランランラン、ランランラン。』
何日か歩いて下りていると、また寒くなってきたので、登る時と同じように、大きな岩の小さな穴を見つけて寝る事にした。前と同じようにコケが生えていて暖かい。
『外が暖かくなるまでおやすみなさい。』
そして、僕は暖かくなるまで寝ていました。

カタツムリの富士登山(7)

2020-11-24 09:37:00 | 童話
僕が立ち止まって深呼吸をしている時に、遠くに建物が見えた。
『あれは山小屋なのかなあ、山小屋だったら温かいし、風で飛ばされる心配も無く、安心して寝られるなあ。』
人間に踏みつぶされないようにして近付いて行くと、やっぱり山小屋で、たくさんの登山者がいた。

僕が山小屋の中でも暖かい高い所で休憩をしていると、登山者の一人が僕を見つけて、
『こんな所にカタツムリがいるよ、風で飛ばされてきたのかなあ?』
『ちがうよ、僕は自分で登って来たんだよ。』
『えっ、こんな所まで登って来たの?』
『うん、途中までトンボ君とチョウチョさんと一緒だったけれど、あとは、ここまでは僕ひとりで登って来たんだよ。』
『どこへ行くの?』
『みんなと同じで、頂上へ行くんだよ。』
『カタツムリさんは、なぜ富士山に登るの?』
『テレビで富士山を見ていたら、どうしても登りたくなったからだよ。』

『ここまで、何日くらいかかったの?』
『1年くらいかな。』
『お家に帰るまで、どれくらいかかるの?』
『これから頂上まで行って下りて来るころに寒くなるので、また岩の穴の中で温かくなるまで寝ているから、お父さんとお母さんのいる所まで、あと2年くらいかかるかな。』
『わぁ、すごい、頑張ってね。そして、気を付けてね。』
『うん、ありがとう。』

カタツムリの富士登山(6)

2020-11-23 10:03:54 | 童話
『あ~あっ、よく寝たなぁ。』
僕は、あまり寒くないので目がさめた。
そして、岩の穴の中から外を見ると、雪はほとんど無くなっていた。
『お父さんとお母さん、僕は約束を守って家の中にいたよ。また今日から富士山を登るからね。』
穴の外でお水をタップリ飲んで歩き始めた。雪の上や、雪解け水の上は冷たいので、乾いている所を歩いて行った。

『ランランラン、ランランラン。』
今度は、僕が歌っても、だれも『ルンルンルン、ルンルンルン。』や『ピッピピピ、ピッピピピ。』と歌ってくれる友達がいません。
『下りる時に、トンボ君やチョウチョさんと一緒に歌えるから、今は僕だけで歌おう。』

そして、僕は何日間も『ランランラン、ランランラン。』と歌いながら登って行った。
また時々寒い日があるので、寒い時は暖そうな岩の穴を探して暖かくなるのを待つことにした。

僕の歩いている所から遠くを見ると、人間が登って行く登山道に、多くの人がリュックを背負って、ツエを持って一列に並んで歩いている。だけれど僕みたいに歌いながら登っている人はいません。

カタツムリの富士登山(5)

2020-11-22 09:43:31 | 童話
『ランランラン、ランランラン。』
『ピッピピピ、ピッピピピ。』
『寒くなってきたね。高い所は、山のふもとよりずっと寒いだね。』
『僕もこれ以上高い所へ登って行くと、他のトンボに会えなくなってしまうので、僕も山のふもとへ下りていくね。カタツムリ君も気を付けてね。』
『僕はまだ登っていくね。ここまで一緒に登ってきてくれてありがとう。僕が下りて来たら、また一緒に下りようね、バイバイ。』
『うん、カタツムリ君、気を付けてね、バイバ~イ。』

そして、ここからは僕だけで頂上を目指して登って行きました。チョウチョさんもトンボ君もいないので、注意して登って行きました。
『う~、寒い。風が吹くと急に寒くなるなぁ。』
僕は、お父さんの言った『寒くなったら、背中の家から出たら絶対ダメだよ。』を思い出した。
『よしっ、今の内に風のこない温かい場所を探そう。』
丈夫な岩の、風のこない場所を探した。
『あっ、ここは丈夫だし、穴もあまり大きく無くて、風が入ってこないや。』
僕が穴の中に入ると、コケが生えていて温かく、コケはお水をもっているので、僕の体も乾燥しないみたいだ。
『よしっ、ここに決めた。僕は温かくなるまでここにいよう。
『コケさん、春まで一緒にいようね。』

そして、僕は穴の外のお水をタップリ飲んで、僕の家に入って寝た。
『温かいなあ。』
そして、僕は暖かくなるまで寝ていました。

カタツムリの富士登山(4)

2020-11-21 10:05:22 | 童話
ある日、チョウチョさんが
『これ以上、富士山の高い所へ登って行くと、他のチョウチョの友達と会えなくなってしまうので、これから高い所はトンボさんと登ってね。』
と言って、富士山のふもとへ帰って行きました。
『バイバ~イ。僕がここに降りてきたら、また一緒に山から下りようね。』
『待っているね、バイバ~イ。』

そして、今度はトンボ君が高い所から僕のために水の付いている草やお花のある所を教えてくれました。
そして、太陽が出ていない朝と夕方は少し寒くなってきました。
『朝と夜は少し寒くなってきたけれど、トンボ君は平気なの?』
『僕達トンボは秋にも飛んでいるので、まだ平気だよ。』
『そうなの、それでは、まだ一緒に登れるね。』
そして、僕とトンボ君は、また歌いながら富士山を登り始めました。
僕は『ランランラン、ランランラン。』
トンボ君が『ピッピピピ、ピッピピピ。』

ずっと登っていると草やお花の生えていない所に出た。そこはゴツゴツとした岩だけだった。
『トンボ君、草が生えている所は無いの?』
『うん、高い空から見ているけれど、そこだけ草やお花が無いね。もう少し登って行くと草の生えている所が有るよ。気を付けて登って来てね。』
『うん、わかった。』
少し登って小さな石の上にいる時に、僕が乗っている石がグラグラして、僕は石と一緒に下へ転がり落ちてしまった。
『うわっ。』
『カタツムリ君、大丈夫?』
『うん、草の生えている所で止まったから大丈夫だけれど、岩の上を転がっていたら、背中のカラが壊れるところだったよ。今度は気を付けて登るよ。』
『そうだね、気を付けてね。』
『うん。』
そして、僕は何日かトンボ君と一緒に登って行きました。