real SR

引越しいたします。

「東トルキスタンの人々に平和と自由を」サイトの問題点

2005-10-05 23:53:04 | デジタル・インターネット
Monaparteさんに

BBC 中国語サイトの「宣戦布告」がきっかけとなったようで思わぬ調子で「東トルキスタン」の問題がネット上に知られるようになった。
この問題では私のブログもリンクされて、大いに責任がありそうだ。
一昨日は思わず「祝」などと書いてリンクしたがVIPPERの諸君たちが立ち上げている運動にはあえて言うが、かなり問題も感じられるのである。

ひとつにはウイグルの歴史の記述があるだろう。 「平和と自由を」サイトであるが、ほとんどが東トルキスタン情報センター日本語部サイトからの情報を元にしている。たとえば最初の歴史の説明。

この地域は中国、及び中国の歴代王朝の支配下では無く独自の地域として存在しました。
「独自の地域として存在していた」のは正しいが、歴代支配下にあったか、なかったかについては長い歴史上で一概には言えないが非常に微妙な関係であったと思われる。

しかし、18世紀に清朝に征服され重税などを課されました。清朝が倒れ中国で混乱が起きている中東トルキスタンの人々は中国からの圧政から自立する為に1933年東トルキスタンイスラム共和国を宣言、建国しました。1946(49)年まで独立国として存在し、ソ連などと関係を持っていましたが

これは明らかに間違いである。
辛亥革命で清朝が倒れてから、中華民国新疆省として省主席の楊増新、金樹仁、盛世才の三代のもとに独裁的に統治されていた。特に楊の下では独裁政治ではあるものの他の中国の地域に比べれば、きわめて平和であったことが知られている。楊が暗殺された後には当時の新疆は国民党政権、回族軍閥、白系ロシア、タタール商人などの勢力が入り混じって混乱し、その中から汎トルコ主義やジャディード運動などの影響を受けた東トルキスタンイスラム共和国がごくわずかな期間存在した。そして第二次大戦後、混乱の中で第二次の東トルキスタン共和国がソ連の影響もうけながら、後の共産党による「新疆解放」まで存在したのである。この間の歴史はまだわかっていないことも多く単に中国を侵略、圧制者と見るだけでは理解できないであろう。

左サイドバーで歴史一般書などを紹介しているわけであるが、一体どの程度の人が興味を持って深く知ろうとしているのだろうか。残念ながらネット上の議論をみてもそれはあまり感じられない。
また、中国共産党下の人権についても期間、範囲の定義なくこれも東トルキスタン情報センターに頼っているにすぎない。こういう数字は衝撃的であるが問題を多く抱え込んでいる。

もう一つリンク先にある、この正論の論文であるが、非常に問題が多い
http://www.sankei.co.jp/pr/seiron/koukoku/2005/0504/ronbun2-1.html
ウイグル族、ウイグル人の定義からしてあやふやである。
用語の訳間違いも多く見られ、またテロ容認であるような口調も問題である。

梶先生からはメッセージをもらっている。

そこから引用。
マスコミによる情報の欠如を埋めるように多くのウェブサイトやブログが東トルキスタン問題についての言及を始めた-それ自体はもちろん肯定されるべきことである-が、その多くが上記のキムリッカの議論よりもはるかにナイーブな形で「民族自決賛成」と「人権抑圧反対」の立場から独立運動への支持を表明している点である。
このうち「人権抑圧反対」はいいとして、東トルキスタン独立運動をウイグル人による一枚岩の「民族自決」要求の運動としてとらえるのはあまりにナイーブで、危険でもある。簡単に言えば、そういった立場は、地域の中に住む漢族とウイグル人以外の諸民族(カザフ人、キルギス人・・)のことを全く考慮に入れていないし、またウイグル人社会内部に存在するあまりに大きな意識の隔たり(漢族ともなんとかうまくやっていきたいと思うものから、あいつらブッ殺したる、というものまで)も無視されている。要するにその「支持」が本当にそこに暮らしている人々のためになっているのかどうか、という内省がないことが気になるのだ


これはそのとおりで何も付け加えることはできない。ネットの住民は単に「反中国」、「地政学的重要性」などの感情から明石大佐気取りで、本当にウイグル人のことを思っているのかわからない人も多い。

市民が主体的に考えるための情報提供を放棄したマスメディアと、その反動としてのネット上でのベタな独立運動への支持。今後このあまりに大きな「落差」を埋めていくことは可能だろうか。
そうなのである、そこでうちのブログでは欧米サイトでのウイグル、東トルキスタン問題の紹介を中心にしてきたつもりであったのだが、あまり理解はされていないようである。「平和と自由」サイトではレビヤ・カディールさんのインタビューがリンクされているようであるがほとんど反応は見られないのが残念だ。

他にも言うべきことはあるが今日はここまで。



最新の画像もっと見る

13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
2ちゃんねるサイト内でも独立に関してはナイーブ... (Unknown)
2005-10-06 05:11:10
2ちゃんねるサイト内でも独立に関してはナイーブな問題であることは度々指摘されています。
また東トルキスタンの内情や、中国の人権抑圧についての情報や数字の正確さなどもまだまだはっきりとしておらず、サイト製作者の方が領事館などにアポをとって確認するという話も出ているようです。
上記で指摘されているように、マスコミではこの手のニュースはほとんどふれられることが無いので知識の蓄積がまったく無いのが現状ではないでしょうか。
もしウイグル人の問題について知識がおありで、これだけは気をつけたほうがいいという注意事項や予備知識等ありましたら是非忌憚なく指摘されることを望みます。

返信する
被害者の数などはVipperのなかでも眉唾程度で確実... (Unknown)
2005-10-06 05:33:51
被害者の数などはVipperのなかでも眉唾程度で確実なものとは考えていない場合が殆どです。件の情報センターを通じてや書籍を探すなどして検証はしていますがやはり限界があるが現状でしょう(なので我々の掲示板での話し合いやサイトの内容などに関してのご指摘はもっともだと思います)

確かに私たちは事実に対してあまりにも無知であるのは否めません。しかし、私たち全てが反中や安っぽい感覚で今回の問題に首を突っ込んでいるわけではないのです。どうか、その事だけは理解していただけないでしょうか?

彼らの文化や歴史について表面的なことしか知ることが出来ません。私たちは情報を求めています。よろしければあなたの知識で我々を手助けし、暖かく見守ってはくれないでしょうか?手前勝手なお願いだとは思いますがどうかよろしくお願いします。
返信する
御指摘有難うございます。 (Monaparte)
2005-10-06 07:06:33
御指摘有難うございます。
サイト製作者のモナパルトです。
確かににわか仕込みの知識で作ったのは
否めませんし
被害の衝動に駆られて十分な準備も無いまま行動を起こし
それが予想をはるかに超えて大きな影響を受けました。
これによって本来ずっとトルキスタンの惨状を訴えてきた方などの信頼性
方向性を害された場合があるとは思いますが
この場をお借りしてお詫び申し上げたいと
思います。

現在色々と領事館の方などとお話をし
指摘を頂いていますが具体的被害の資料がOPACやMagazine+等の
論文データーベースにも北京経由のもの以外なく
手にある限りの資料の共産党の素行から見て
とりあえずはトルキスタン情報センターの情報を信じる以外術は無いかなと思い
あの形にさせていただきました。

ただ、被害の実態把握は微妙ですし
また数ではなく行動自体が非難されるべき事態だと思いますので
これからも改良、訂正を重ねていきたいと思っております。
これからも御指摘宜しくお願いします。
返信する
 コメントを書こうかどうか2~3日迷っていまし... (トルファン)
2005-10-10 09:21:52
 コメントを書こうかどうか2~3日迷っていましたが、一言だけ書かせてもらいます。
 東トルキスタンに住む人々はウイグル人だけではないのはいうまでもないことです。カザフ、モンゴル、キルギスなど、もちろん漢民族も含めて他民族が混在している地域であるわけです。この地域で問題が発生するとすべてウイグル人に話が帰結してしまう傾向があるようですが、そんなに単純なものではないとかねがね思っています。
 東トルキスタンと呼ばれるこの地域、私はあえて新彊ウイグル自治区と言いたいと思いますが、この地域では人権抑圧を受けているのがはたしてウイグルの人々だけなのか、カザフやモンゴル、あるいはキリギスの人々などはこの地域で人権抑圧を受けているのか、あるいは漢民族を含めた民族間の対立の構図はないのかといったことを含めて、もっと多角的にこの地域のことを知る必要があると思うのです。そういう点では、梶先生のスタンスはとても共鳴させられます。
 情報量が圧倒的に少ない地域だからこそ、この少ない情報をどう扱うかが大切なことだと私は考えます。憤りや怒りというのは、行動を起こすときの大切かつ重要な起爆剤ではあります。しかし、取り扱いがまた難しいのも事実です。「東トルキスタンの人々に平和と自由を」のサイトがそういうことをふまえた上で、この地域の情報を丁寧に発信してくれるサイトになってくれることを切に望みます。
全然ひとことでは無くなってしまった、藁。
 
返信する
非常に難しい問題ですね。ウイグル族以外の少数民... (通りすがり)
2005-10-18 00:18:12
非常に難しい問題ですね。ウイグル族以外の少数民族もモンゴル族を除けば、大体イスラム教というのは共通するのではないでしょうか?同時テロ以降、イスラム教に対する中国政府の弾圧が厳しくなり、圧迫感が強くなったというのは共通に感じていると思うのですが、どうでしょうか?大体、この地域に対する情報が少なすぎます。
返信する
こんにちは。 (across the yellow earth)
2005-10-19 14:14:01
こんにちは。

「東トルキスタンの人々に平和と自由を」のサイトを拝見しました。

ウイグル族をはじめ、東トルキスタンに住む人々の情報は圧倒的に少ないですね。新聞を読んでいても、めったなことではお目にもかかれません。
ただ言えることは、9・11以降この地域に対する締め付けが厳しくなったんだろうということです。そして、少なからぬ人々がこの地域の人々の身の上を心配しているということです。

ところで、先日の「宣戦布告」のその後はわかりますか?マジで心配なのですが…
返信する
中央アジア内陸部に興味をひかれるものがあり、イ... (S.N.)
2006-05-05 19:43:28
中央アジア内陸部に興味をひかれるものがあり、インターネットでたまたま東トルキスタンで検索して見つけました。自分の目でみたわけではないのでなんともいえませんが、中国もチベット・ウイグルといった「爆弾」を抱えているという感じがします。現に中国でも都市暴動が多発しているようです。
返信する
Monaparteさん (Unknown)
2006-05-10 09:08:34
Monaparteさん
不正確な情報であっても別にいいと思いますよ。中国政府の公式発表に比べれば多少の事実誤認など存在しないに等しいです。

小生もあちこち探していますが、なかなか正確な情報がないですね。チベットのようにしっかりした亡命政府があれば、東トルキスタン側の観点からの歴史もまとめられるんでしょうが。

ちなみにここなどどうでしょう?
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/7712/dogu_turkistan.html
返信する
東トルキスタンのある武装勢力は「人民解放軍に対... (S.N.)
2006-05-22 11:13:31
東トルキスタンのある武装勢力は「人民解放軍に対し戦争をも辞さず。我々には味方になってくれる国がいる」と何ともブッソーな発言をしているようですが。あるホームページで見つけました。この「味方になってくれる国」とはどこのことかは知りませんが。敵の敵は味方という論理からすれば、日本・アメリカ・トルコあたりが考えられそうですが。

返信する
当サイト「東トルキスタンの人々に平和と自由を」... (東トルキスタンに平和と自由を)
2006-07-26 16:19:10
当サイト「東トルキスタンの人々に平和と自由を」紹介して頂き、誠にありがとうございます。
当サイトは移転しましたので変更をよろしくお願いいたします。

移転先:
http://saveeastturk.org
返信する

コメントを投稿