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いまのウイグルは偽って、そりゃないと思う。森安孝夫先生。「シルクロードと唐帝国」

2007-04-21 00:06:46 | 学問

<iframe align="left" marginwidth="0" marginheight="0" src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=truthofsilkro-22&amp;o=9&amp;p=8&amp;l=as1&amp;asins=406280705X&amp;fc1=000000&amp;IS2=1&amp;lt1=_blank&amp;lc1=0000FF&amp;bc1=000000&amp;bg1=FFFFFF&amp;f=ifr" frameborder="0" scrolling="no" style="WIDTH: 120px; HEIGHT: 240px"> </iframe>いかに栄え、なぜ滅んだかをテーマとした「興亡の世界史」シリーズが講談社から発行されている。古代ソグド、ウイグル史を中心においた中央アジア史を専攻する歴史学者の森安孝夫氏が「シルクロードと唐帝国」をそのシリーズのひとつとして出版された。

森安氏はまずはじめに序章として、「真の自虐史観とは何か」と命題を立て、近代歴史学の動向を追い、国民国家とはひとつの概念に過ぎず、その枠組みを守るために一国史、国民史が存在し、それは近代市民社会によって創られたものだとする。そして20世紀になって他方あたらしい進歩主義の唯物主義史観が大きな影響を歴史学に与えたがソ連崩壊と共に影響力が弱まった。そして現在は歴史学の方向として比較史、関係史という視点を踏まえたグローバル世界史が叫ばれている。そして日本では未だに西欧中心の近代史が日本人の歴史観に影響を与えていてそれが「真の自虐史観」であるとする。
そしてこの書の目的として西洋中心主義や中華主義思想とも異なる中央ユーラシアからの視点で前近代の世界史を見直すこととしている。ユーラシア世界史の提唱といえるであろう。
実際、この本のコンテンツの中心をなすのは1.ソグド民族東方発展史、2.唐史での突厥の動向3.安史の乱での(古代)ウイグルの活動の三本立てで新しく定説化しているがいまだ一般にはよく知られていない事実の紹介である。

その序章の中で民族、国民などの概念を説明する部分に気になる記述がある。

「古い時代のウイグルが民族集団として活躍するのは唐からモンゴル帝国の時代までであり、それ以後はウイグルの名はいったん消滅する。
ウイグルの流れを汲むがモンゴル時代以降徐々にイスラム化していった東トルキスタン東部のトルコ人たち、並びにそれより早くカラハン朝治下にイスラム化した東トルキスタン西部のトルコ人たちはオアシス都市群ごとに自己認識し、トルファン人とかクチャ人とかカシュガル人という風に出身地に応じてバラバラに呼ばれるようになる。
それが20世紀前半になって東トルキスタンの政治的統一の必要に迫られたとき、かつて栄光に包まれたウイグルの名前を全体名称として採用するのである。本来ウイグルでない旧カラハン朝下のカシュガル人、コータン人までもウイグルと呼ぶようになったのであり、古代ウイグル史を専門とする私に言わせればこうした新ウイグルは偽ウイグルである。しかも古ウイグルはイスラム教徒ではない。」

私は森安先生のこの偽という言い方はないだろと思う。確かに現在のウイグル族が古代ウイグルの直系であるというのは問題がある考え方である.しかし森安氏は東トルキスタン東部のトルコ人が「(古代)ウイグルの流れを汲む」ということを認めている。これは「偽」という表現と矛盾はしていないだろうか。また東トルキスタン西部のトルコ人がカラハン朝下でイスラム化したとしている、確かにそのカラハン朝の起源は歴史学上定説はないしかし著名な中央アジア学者の羽田明氏ははっきりと「(古代)ウイグル亡命者」としている。(面白いことに中国の学者やウイグル独立派もカラハン朝は古代ウイグル起源説をとっているらしい。)(つづく)

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本:中国少数民族 農と食の知恵

2006-07-26 00:02:22 | 学問

新疆ウイグルにおける学術調査ものの本というといわゆる「シルクロードの仏教遺跡」「砂漠の古代の墓や都市」がやっぱり主なものであるのだろうが、現代の新疆ウイグルの人々の生活をあつかったものも見られる。
その一つに静岡大学農学部学術調査隊の「中国少数民族 農と食の知恵」という本を見つけた。中国の少数民族における「文明社会」とは違った人々の生き方を学び遺産として伝えていく試みなのであると言う。

<iframe align="left" marginwidth="0" marginheight="0" src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=truthofsilkro-22&amp;o=9&amp;p=8&amp;l=as1&amp;asins=4750315591&amp;fc1=000000&amp;IS2=1&amp;lt1=_blank&amp;lc1=0000ff&amp;bc1=000000&amp;bg1=ffffff&amp;f=ifr" frameborder="0" scrolling="no" style="WIDTH: 120px; HEIGHT: 240px"> </iframe>

この本の第一章は「新疆ウイグル自治区の少数民族」である。「少数民族」といっても中国では人口一千万を超える巨大グループから、数千人の集団まで同じように漢族以外は少数民族である。あまりにも「漢族」が巨大なのでそういうことになってしまう。この本でのウイグル族の説明はさすがに学術物で正確を期している。
「ウイグル人はトルコ系のウイグル語を話すが、顔つきはいろいろで、皮膚の色や体型もさまざま。人類学的にはコーカサス系白色人種にモンゴロイドが混血したものと言われている。」
「オアシスの農耕民族でイスラム教を信仰する人たちは、もともとカシュガル人とか、トルファン人とか、住んでいる土地の名前で呼ばれていた。」
「現在のウイグル族がかつての遊牧勢力、回鶻(ウイグル)の直系かどうかは疑わしい点であり、またウイグル族という名称で一括りとすることにも問題は残っている。」
個別の記述はまず、「リンゴの故郷の小さな植物園」という章からはじまるが、そこで新疆には氷雪帯から砂漠、農耕地帯、草原、森林と大きく異なる自然環境が至近距離間にあり、動植物が多様に富む地域をなしている。そして複雑で険しい山岳地帯は深い谷がつくられ、谷の向きにより特有の異なる環境を形成している。そういうことが生態系にかかわり、多様な種を生み出す温床になったと言う。
新疆はその環境が天然の「種の保存場」である。
地下資源の豊富さが新疆ウイグルでクロースアップされるが、生物資源の宝庫であることはあまり知られていない。
イリ地区新源県では日中共同で「有用植物資源圃」がつくられている。

豚とイスラム教についての記述も面白い。
「イスラム教徒は豚を食べない。しかしこの地方の人々はイスラム教徒になる前から豚肉を食べていなかったはずである。」
「新疆ウイグル自治区の面積は日本4倍もあるが大部分は砂漠と荒漠と草原で高知はオアシスの周りの限られた部分であり、豚のえさとなる作物を栽培する余地はない。」
「豚は草を消化することができない。乳はすこししか出ない。毛も貧弱で荷物も運べない。乗ることも出来ない。さらに困ったことに豚を飼うには水がいる。豚は暑くなると水浴びをし、水がなければ自分の糞尿に浸かってでも暑さをしのぐ。新疆ウイグル時地区のような乾燥地帯では家畜の糞はすぐに乾き、尿は地中に吸い込まれていく。こんなところでは豚は飼えない。だから豚は食べない。」

新疆生産建設兵団への直接取材もある。はじめは取材者は新疆イリ地域の少数民族の家庭訪問を中国側に申請していたが許可が下りないで兵団農場への見学になったところがまた新疆らしい。

このように取材目的は「生活」なのであるが、新疆ウイグルの生の姿を垣間見させることに成功している。
お奨めしたいと思います。

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