先月の8日から行われた、スウェーデンでの「中国新疆総合文化週間」において、新疆ウイグル自治区からの「新疆歌舞団」がストックホルムの西方150キロの小都市エスキルスチュナを皮切りに公演を行ったことが報道された。
http://news.livedoor.com/article/detail/3301359/
スウェーデンと言えば、各国の難民について非常に寛容な政策を取っている国として知られているが、ウイグル人も例外でなく多くの人々が難民として滞在していると聞く。水谷先生によると語学研修プログラムを受けることが出来て、その間は生活費が保証されているという。
ここで思い出していただきたいのは昨年惜しくもなくなったウイグル人音楽家、クレシ・クセン(スルタン)氏である。彼はこの新疆歌舞団が公演の手始めとした、エスキルスチュナで暮らし現在その地に眠っている。
http://blog.goo.ne.jp/kokkok2014/d/20061106
このエスキルスチュナをあえて中共が新疆の宣伝の地として選んだかは定かではないが、おそらくはウイグル人と接することが多いその地の人々に、「平和な新疆」のイメージをぶつけることで在スウェーデンウイグル人の訴える力をそぐというねらいがあるのではないだろうか。
また、エスキルスチュナはボルボ発祥の地でもあるらしいということも関係あるかもしれない。
下記の在スウェーデンの人権活動家の陳世忠元教授の記事によると、在スウェーデンのウイグル人が何か、新疆歌舞団に接触を持とうとしたが、中国大使館員や現地の警察に阻まれたということである。
中国外交部は4年前のカナダ、トロントでの「新疆雑伎団」亡命事件のことが頭にあると思われる。
陳教授がいうこの中国政府がおこなうイベント等が中国のプロパギャンダの性格を持つという指摘は重要であると思う。日本も以前はパンダなどに代表されるこのソフトパワー戦略で中国に対する警戒感はほとんどなかったように記憶する。インターネットでいろいろな情報が入ってくるといってもこのリアルなものの力というのはまだまだ強い。
UPIアジアオンライン 10月1日 陳世忠元ハルビン大教授(スウェーデン在住)
http://www.upiasiaonline.com/society_culture/2007/10/01/commentary_chineseuighur_culture_clash_in_sweden/
中国の新疆歌舞団はスウェーデンのエスキルスチュナ市で9月8日と9日に二回のすばらしいパフォーマンスを与えてくれた。
当初はこの種の文化的な舞台芸術は非政治的なものであろうと思われた。しかしながら、この市での最も大きな新聞がエスキルスチュナ市文化局がこのイベントを許可したことを批判する全ページの社説を載せた。その社説は市官僚が全体主義的な中国当局に媚びへつらっていると論難した。明らかにその社説は新疆歌舞団の舞台は政治的なものであったと見なしたのである。
その新聞はその芸術団は中国北西部新疆から来たが、新疆はウイグル民族グループの母なる地であり、彼らは中国当局から抑圧されていると指摘した。海外のウイグル人組織は中国がそのような舞台芸術をプロパガンダの道具として使うだろうと警告している。その目的は新疆の人々の中国政府の支配のもとでしあわせなイメージを創出することなのであると。
文化のやり取りは国際的交流の普通の方法である、しかしながら中国当局はそれをプロパギャンダの流布の機会として使う。大抵は中国大使館からのスタッフがパンフレット類、書籍類、CDなどを観客に手渡し、新疆の人々が争いや摩擦なく楽しく生活しているという印象を与える。
同時にスウェーデンに住むウイグル人のグループが彼ら自身の素材を配布しようとすると、大使館スタッフがそれを止める。地方警察までが在スウェーデンウイグル人の行動を阻止する。彼らは芸術団のメンバーと話をすることさえ許されない。
エスキルスチュナ市政府はこの抗議に関して何をしたのか?中国大使館からのスタッフのふるまいを直させようとしたか?ウイグル人活動家に謝罪したか?それどころか多分、市政府はスウェーデンの言論の自由によって攻撃された中国大使館のスタッフに謝罪したかもしれないか?
中国はスウェーデンにとって重要な国である。両国にとって意見を交わし互いに会話を行うことは利益のあることである。商業的および文化的な協力は将来の政治的な協力に伝わっていくであろう。しかしながらスウェーデンの政府職員は彼らがこのような(文化)交換プログラムに参加しているときに現場の裏側では何が起こっているのかをより深く心得るべきである。
中国は来年オリンピックのホスト国となるが、その「開かれた」社会の好ましい構図を宣伝するのに大きな努力を見せている。他の国に文化を輸出するのは中国のプロパギャンダ戦略の一部分である。ゆえに中国がエンターテイメントをスウェーデンに持ち込むとき、スウェーデン政府は単に中国当局の要請に従うべきではない。スウェーデン側の主催者は中国政府の側に立つよりむしろ、多様な意見を尊重する道徳的責任をもつ。
残念なことに、エスキルスチュナ市は民主主義の支持者をドアの前で阻み、中国当局に自由にその意見を表明させている。このことは将来の中国とスウェーデンの文化交換にとって悪い前例である。
ラビア・カーディル紹介サイト↓
このブログに興味をいただけたらblogランキングへクリックお願いします。