【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

安保法案、再来週13日(月)に中央公聴会で重大局面、成立不可避な情勢に近づく きょうの国会

2015年07月03日 17時33分50秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

【平成27年2015年7月3日(金)衆議院厚生労働委員会】

 「社会福祉法人法改正案」(189閣法67号)が趣旨説明され、その後は一般質疑になり、散会しました。親族経営などで透明性に欠く、社福法人について、財務書類をつくったり、理事の選び方を透明化させたりする内容。

 この法案の審議入りにより、「いわゆる残業代ゼロ法案(労働基準法改正案)」(189閣法69号)の審議入りは来週以降に先送りされました。参議院先議で4月に送られてきた法案っも残っており、9月27日(日)までの延長国会で、衆参両院を通じての審議未了廃案とする、日程闘争が可能な数少ない法案となりそうです。

 なお、社福法改正案には、職員に関する規定もあり、退職金共済が長く務めた人の方がより有利になる改正もあり、どうしてこういう風に細かい改正をするのかというところはやや残念。

【同日 衆議院我が国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会】

 NHK入り総括的集中質疑が行われました。

 「2015年日米防衛協力のための指針いわゆるガイドラインを国内実施する安保2法案」(189閣法73号、189閣法74号)。

 維新の党理事の下地幹郎さんは「ここまでの審議時間は79時間だが、私の質疑で80時間を超えることになる。あと120時間がんばりましょう」と語りました。下地さんの発言はいつも思惑がよく分からない面もあります。維新の党の丸山穂高さんは、近く提出すると思われる同党の対案を示しながら質疑しました。

 首相入り質疑後に理事会。午後5時20分過ぎに、委員会が再開。

 中央公聴会を再来週13日(月)に開くことを採決し、民共の反対、自公維の賛成多数で議決しました。再来週が衆議院通過の重大局目となります。

 次回の委員会は来週8日(水)午前9時から開くことになりました。

 いかんせん95日間延長されてしまったため、日程闘争での審議未了廃案は極めて厳しい情勢になってきたといえます。議論は二進も三進も(にっちもさっちも)いかなくなってきましたが、このような場合、与党に有利になることもあります。局面打開の目途や方法は正直思いつきません。この法案は成立すると、公布の日から起算して6か月以内の政令で定める日に施行されます。つまり今年度中に施行するということです。せめて武力攻撃事態法の首相の防衛出動命令に関する部分だけは整理できないものでしょうか。施行後も粘り強く、必要な部分の改善を求めていくことも大事だと考えます。あきらめたら、人生何事も終わりです。ただ、かなり長いたたかいになりそうだ、と言わざるを得ません。

【同日 参議院本会議】

 まず、農協法改正案(189閣法71号)について趣旨説明がありました。代表質疑では、自民党の野村哲郎さん。JA鹿児島中央会の出身で、同会職員出身の自民党国会議員は複数います。このように、今次改正では、JA全中が力を失うのは確実ですが、JA県中央会がかえって力を増すとの観測もあります。民主党は北海道選挙区で来夏の公認が内定している、徳永エリさんが「地域の協同組合」とTPPをからめて質疑するなど、第24回参議院選挙(2016年7月)がまじかに迫っていることが透けて見える参議院審議になりそうです。

 この後、採決。

 改正特許法(189閣法44号)は投票総数230、賛成214、反対16の賛成多数で可決し、成立しました。

 改正不正競争防止法(189閣法45号)は投票総数230、賛成213、反対17の賛成多数で可決し、成立しました。

 特定船舶入港禁止特別措置法に基づく入港禁止措置の2年間延長の承認を求める件(189承認3号)は、投票総数230、賛成230、反対0の全会一致で両院承認しました。

【同日 衆議院内閣委員会】

 「内閣官房と内閣府をスリム化する、国家行政組織法改正案」(189閣法54号)が採決され、共反対、自公民維賛成で可決しました。内閣官房の「総合調整機能」が、各省庁に写ることになります。ただ、「総合調整」という言葉は日本の行政にしかない言葉とされ、ドイツ語からの輸入語であり、こなれない印象がある「官房」と含めて、終わりなき、不断の行政改革が続きます。

 この後、「ドローンの国の重要施設上空の飛行禁止法案」(189衆法24号)が古屋圭司・衆議院議員から趣旨説明されました。古屋さんは、台湾の美術品も保険の対象になる議員立法を主導し、昨年の「台北故宮博物院展」の実現の端緒を開いた経験があります。その一方で、「憲法96条先行改正議員連盟」は法案化されないばかりか、後輩である安倍首相が結果的に迷走するきっかけになったようにも思えますが、後世の判断を待ちたいところです。

 なお、内閣提出法案が出てくるという情報もあります。

 そのせいか、ドローンの法案審査は後日として、残りの時間は一般質疑が行われ、散会しました。

【同日 衆議院経済産業委員会】

 「中小企業経営承継円滑化法改正案」(189閣法61号)が趣旨説明されました。事業承継にあたり、株式贈与の相続税の軽減と、小規模共済の支給額の引き下げが盛り込まれた小幅な改正になります。質疑は後日にゆずり、散会しました。

【同日 衆議院法務委員会】

 「刑事訴訟法改正案」(189閣法41号)が審査されました。来週7日(火)9時からも委員会を開き、さらに8日(水)にこの法案4度目の参考人質疑を行うことが決まりました。奥野信亮法務委員長(自民党、4期)がさすがにうんざりした風情でとりしきっていて、やや同情できる面もありますが、まあしょうがないでしょう、といった感じです。

以上
(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 2007-2015

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日本初のネクスト首相、田辺誠さん帰天 政構研で政権交代ある二大政党政治に礎 羽田孜内閣で筋通す

2015年07月03日 09時22分58秒 | 政権交代ある二大政党政治の完成をめざして

[写真]田邊誠・初代ネクスト首相、衆議院永年在職議員、社会福祉法人恵風会ウェブサイトから。

 日本で初めて「ネクスト・キャビネット(NC)」をつくり、シャドウ首相に就任した、田辺誠元衆議院議員がゆうべ2015年7月2日夜、前橋市で、帰天されたことが報じられました。

 93歳。前橋市市出身。

 心より哀悼の意を表します。

 明治36年(1903年)に創設された、キリスト教系養老施設「社会福祉法人恵風会」を経営する親の下、生まれ、群馬県議を経て、衆議院議員に。

  第29回衆院選で初当選し、第31回~第40回まで、通算11期。衆議院永年在職議員。

 最大野党に属し、政権交代ある二大政党政治のため、「政権構想研究会(政構研)」を結成。

 国際観、時代観にすぐれ、冷戦崩壊を見越し、「日本社会党」の名刺の裏に「Social Democratic Party of Japan」と最初に入れ、政権を目指しました。

 考え方の違う、「社会主義協会」所属の土井たか子党首を支えました。

 平成元年の参院選で改選第1党を勝ち取り、この日以来、参議院はハングパーラメント(宙ぶらりん議会)が続いています。

 土井党首の辞任により、最大野党党首(The opposition leader)に就任。英国議会に範をとり、「シャドウ・キャビネット(現在のネクスト・キャビネット)」を日本で初めてつくり、日本初のネクスト首相に就任しました。現在は岡田克也さんがつとめています。

 後任の山花貞夫さんネクスト首相が第40回衆院選で、ついに政権交代。リアル首相は細川護熙さんに譲り、山花リアル政治改革担当大臣らが入閣しました。

 一方、同じ党の群馬県連のライバル、山口鶴男衆議院議員は、自民党と裏でつながり、羽田孜内閣を裏切り、村山富市内閣をつくり民意を転覆させ、山口鶴男国務大臣・総務庁長官に収まります。一方の田辺さんは信義を守り、入閣せず、その期で衆議院を去りました。

 引退後は、恵風会理事長を終身つとめました。そのかたわら、民主党群馬県連顧問をつとめ、2009年の再政権交代の精神的支柱となりました。

 私自身、人となりを存じ上げる立場にありませんが、「大臣ごっこ」と自民党やマスコミに揶揄されながらも、1993年、2009年、2012年の政権交代ある政治を作り上げた立役者です。

 衷心より哀悼の意を表します。

 以上


財務省、平成28年度から30年度ないし32年度(2020年度)までの特例公債法案を国会に提出へ

2015年07月03日 05時57分39秒 | 第190回通常国会(2016年前半)

 財務省は、第190回以降の国会(平成27年秋、平成28年)に、平成28年度から30年度ないし平成32年度(2020年度)までの特例公債発行法案を提出する方針を決めました。

 2015年7月3日付日本経済新聞が報じました。

 財務省は2016年4月1日から3年間ないし5年間にわたり特例公債を発行できる法律を今秋に制定したい構え。

 仮に5年間となるとプライマリーバランス(PB)黒字化と東京オリンピック年となる、2020年度予算まで(財政法4条の特例である)赤字国債が発行できることになります。

 平成27年度予算では、平成24年特例公債法により「30・8兆円の特例公債」を含む、60・0兆円の公債発行が可能だと、一般会計予算総則第6条に盛り込まれています。これとは別に、一般会計予算総則第8条に「財務省証券と一時借入金」が20・0兆円可能となっています。財務省証券は、いわゆる「短期国債」であり、一時借入金は、地方交付税の前借り分として、銀行に入札させて借り入れている分です。

 新発債、借換債、短国、一時借入金をあわせた合計80・0兆円は、日本銀行(黒田東彦総裁)による「マネタリーベースの年80・0兆円拡大」の量的金融緩和政策とまったく一致。日銀は、すべての政府の新規の借金を、市中銀行を通して、日銀券で引き換えていることになります。いわば国債の貨幣化です。

 債券市場に、長国、短国を安定的に供給することを法制化することで、債券市場の変動性(ボラティリティ)を抑えたいねらいもあると考えられます。

 特例公債法案は、民主党第1次与党期の衆参ねじれ後である「第45期衆議院第21・22期参議院」時代に、野党・自民党による「吊るし」で政局の最大の的になりました。

 平成23年度の特例公債法案は、野党・自民党の後藤田正純・衆議院財務金融委員会筆頭理事による引き延ばしで、2011年2月23日(水)になってようやく審議入り。ところが3月11日に東日本大震災が発生。4月29日に玄葉光一郎民主党政調会長と石破茂自民党政調会長らにより「3党合意」ができ、「民主党マニフェスト4kの政策効果の検証」の3党実務者協議と引き換えに成立。(関連エントリー)。

 平成24年度の特例公債法案は徹底的な吊るしにあい、11月14日の野田首相の近いうち解散と引き換えに成立。その際、平成25年度~27年度の新規立法を不要とする特例措置が盛り込まれました。

 財務省は法案に財政健全化の長期目標を書き込みたい考えもあると思われます。

 政府・自治体の長期国債の総額のGDP比を指標にして、中長期的なキャップ(上限)をかけた場合、借入金や短国の増大、インフレタックス(物価上昇により債務残高を小さく見せかけること)、通貨安(ドルベースでの債務残高を小さくすること)などの抜け道が拡大しかねません。インフレ、超円安、最悪の場合は「戦争」など、国民生活への負担は甚大になるリスクあり。そのため、公共事業費、社会保障費などの政策経費の歳出のスリム化目標にとどまる、のがベストでしょう。

 第190回国会は平成27年秋に開かれるとは限らず、平成28年1月召集の通常国会に法案の審議がずれ込む可能性もありえます。

以上