【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

TPP国内実施法案を束ねないよう政府を牽制 枝野幸男民主党幹事長、仮にTPP合意なら

2015年07月29日 17時24分14秒 | 第190回通常国会(2016年前半)

[画像]枝野幸男さん、2013年11月7日、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 民主党の枝野幸男幹事長は、第189回通常国会中の、平成27年2015年7月29日(水)の定例記者会見で、大筋合意が近づいているとみられる、

 自由貿易条約、「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)条約」について、仮に締結した後に、予想される、条約と国内実施法案を審議する「TPP国会」「通商国会」

 について、「秋の臨時国会に一括法案などということがないようにしてほしい」と語りました。

 TPPによる国内実施法案を束ね法案として提出しないよう、安倍自民党政府を牽制しました。

 内閣官房TPP本部での情報集めには、ほぼ全省庁、防衛省・警察庁・消費者庁をのぞいた、ほぼ全省庁が参加しています。

 このため、衆参外務・外交防衛委員会での条約の承認審査と、ほぼ同時期に、TPP国内実施法案が、衆参のほとんど委員会にかかるのではないかとの観測が出ています。審議本数、審議時間はかなり長期間になるとみられます。

 民主党としては、国内実施法案に是々非々でのぞみ、ていねいな審議をすることを、枝野幹事長は強調しました。

 条約の締結自体は、11月になる可能性もあり、国内実施法案が2015年秋に出るとは限りません。 

[枝野幹事長の発言要旨=2015年7月30日午後10時追記]

 私から最後に、三つ目。TPP閣僚会合がスタートしました。いろいろな報道が飛び交っておりますが、交渉内容については、国民の皆さんも、それから我々国会も一度も説明を受けておりません。TPP関連情報が特定秘密に指定をされているのかと疑いたくなるような状況でございます。

 安倍内閣はこのTPPの交渉入りに際して、自動車の関税に関し、TPP全体の中で最も長い期間をかけて撤廃するということで米国と合意しました。つまり最も先送りするという話であります。

 私自身その直前まで経済産業大臣として、この問題の直接の担当者でございました。が、まさにこうした妥協は、わが国の国益を考えたら、するべきではない。ましてや百歩譲っても入り口で妥協するようなテーマではないということで、私は経済産業大臣として入り口でこの問題を譲ることについて一切否定する中で、交渉参加についての協議を進めてまいりました。

 本当に守るべきものを守り、取るべきものを取っているのか。この入り口のところで数少ない明らかになっている内容からも、はなはだ疑問である。徹底的な情報公開と議論が必要であると思います。

 仮に今回大枠合意に達したとしても、秋の国会で関連法案等、審議をもし求めることになった場合であっても、徹底した審議が必要であるということ。そしてこれこそ間違いなく一括法案だなんていうバカな出し方をしないようにとあらかじめ申し上げておきたい。

[終わり] 

このエントリー記事の本文は以上です。
(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 2007-2015

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安保法案で参11会派が一巡、「自公21名以上欠席で否決」の高いハードル 衆委、正常化し、法案可決

2015年07月29日 17時16分51秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

【平成27年2015年7月29日(水)衆議院厚生労働委員会】

 社会福祉法人の経営の透明化にむけて、バランスシートの作成、役員の選出のガバナンスを強化する、「社会福祉法改正案」(189閣法67号)が審査されました。

 民主党からは、自らが社会福祉法人理事長である中島克仁さんが質疑しました。

 質疑終局の後、討論。共産党が反対しました。党と密接な社福法人があるという背景があるのかもしれません。民主党の岡本充功さんが修正案を提出しましたが、民主党のみの賛成にとどまりました。政府原案は、共反対、自公民維賛成多数で可決しました。附帯決議も共反対、自公民維でつきました。

 この後、「医療法改正案」(189閣法68号)が趣旨説明されました。

 当初会期末前週には、強行採決による混乱がありました。この日は委員長、与野党とも和やかなムード。衆・厚労委は昨年の今の時期も、閉会中にかかわらず、井坂信彦さんら、民維共など野党全党が共同で危険ドラッグ法案を作成して、秋の臨時国会で成立。自民党の厚労相からも感謝されました。

 もっとも勤務時間が長い委員会である、厚労委から、与野党協調が始まることはよくあります。

【同日 衆議院法務委員会】

 刑事訴訟法改正案(189閣法42号)の質問時間は60時間を超えているようですが、さらに審議が進みます。

 きょうも参考人質疑で、通信傍受拡大について。

 このなかで、共産党国際部長時代に神奈川県警による盗聴にあい、その後、参議院議員をつとめ、現在はふたたび党職員になっている緒方靖夫さんが登場。


[画像]参考人として意見を述べる、緒方靖夫さん、2015年7月29日、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

 有権者の1割が属する、東京選挙区で当選していたので、見覚えがある人が多いでしょう。

 共産党の委員が「警察庁長官は国会で盗聴未遂事件と答弁したが、9カ月間にわたり、神奈川県警に盗聴されており、国家賠償請求では勝訴している」としました。緒方さんは「警察にはまず謝罪してほしい。(警察を許すかどうかは)それから考えます」としました。

 第189回通常国会の隠れた重要法案ですが、かなり存在は知られてきて、「安保法制と労働法制だけでなく大事だよね」「安倍自民党はひょっとして刑訴法隠しで安保、労働法案を出しているのではないか」といった話を側聞します。まあ、安保法案が刑訴法改正案隠しということはさすがにないでしょう。

 次回の開催は公報で知らせることになり、散会しました。

【同日 衆議院経済産業委員会】

 前回質疑を終局していた「中小企業事業承継円滑化法改正案」(189閣法61号)を採決。全会一致で可決しました。今次改正は小幅な改正にとどまります。

  この後、一般質疑をしました。

 最後に、「外為法にもとづき、北朝鮮船舶の輸出入禁止の承認を求める件」(189承認4号)が趣旨説明され、きょうは散会しました。次回はあさって31日(金)午前9時から。

【同日 参議院我が国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会】

 「2015日米防衛ガイドラインの国内実施のための安全保障2法案」(189閣法72号、189閣法73号)の基本的質疑の2日目が終わり、11会派が一巡し、各会派の立場が鮮明になりました。

 与党・公明党の与党協議会メンバーだった西田実仁さんが質疑。公明党は法案決定時に「例外なき国会承認」を宣伝しました。

 西田さんは「存立危機事態であり、武力攻撃事態でない、極めてレアなケースでは、事前の国会承認が必要なのか」と問い、安倍首相(自民党総裁)は、「存立危機事態で自衛隊の防衛出動する場合は、事後承認の場合がある」と答弁しました。武力攻撃事態法(が仮に改正されたら)、日本平時の存立危機事態で、首相が国会の事前承認なしに、自衛隊を地球の裏側まで防衛出動させられることが明らかになりました。

 維新の党の参議院責任者である、片山虎之助さんは、「衆議院で包括的な対案を出した。野党の安保法案では初めてではないか。だが、衆議院では5時間しか質疑がなかった」としました。安倍首相は「政府原案と維新対案の両案を見て、国民の理解が深まることになる。大きな方向性で自民党と維新の党は一致している。衆議院での対案は採決直前まで誠実に修正協議が行われた。今後も議論は継続する」とし、衆で提出された対案(189衆法26号)は採決し否決・廃案になったものの、対案の修正協議は参に行った現時点でも続いている、との認識を強調しました。

 片山さんは「(武力攻撃事態法第9条により)政府が国会に対処基本方針を出した場合は、本会議だけでなく、特別委員会で審議するようにした方がいい」と提案しました。また、衆に残っている民維共同提出の「領域警備法案」(189衆法27号)について政府自民党が賛同したり、提出したりしないのは、「(海上自衛隊、海上保安庁、警察庁の)セクショナリズムではないか」と指摘し、首相からもとくに強い反論はありませんでした。

 共産党の小池晃さんは「国会外での抵抗運動の盛り上がっており、これまでこんなことなかった」としました。そして、衆での強行採決の後に、防衛省が墨塗りを消して出した、イラク復興支援活動行動日誌によると、ロケット弾が宿営地を通り抜けていくといった記述がある、と指摘し、「安保論議の前に、情報を出すべきだ」と強調しました。

 日本を元気にする会の松田公太さんは「このような法案で、国会で国民が理解するのは無理だ」とし、法案に反対したい方向性で、審議に臨むことを明らかにしました。

 次世代の党は和田政宗さんが質問しましたが、ちょっとこの部分は、筆者が所要のため聞けなかったので、後で補えたら補います。

 無所属クラブの水野賢一さんは法案に欠陥があると指摘しました。この部分は、別エントリー記事で速報として出しましたので、そちらをご覧ください。

 社民党の吉田忠智さんは「党として初めての質疑だ」とし、「経済的理由のみで存立危機事態を認定できるのか」と問いただしました。

 生活の党と山本太郎となかまたちの山本太郎さんは「憲法違反である法案の対案はなく、対案でなく廃案だ」と、民主党の北澤俊美さんの本会議質問演説を引用し、共同歩調を示唆しました。

 新党改革の荒井広幸さんが「対案や修正案が出たら、柔軟に対応していく気に変わりがないか」と問いました。安倍首相(自民党総裁) は「政府案がベストだと考えているが、真摯に謙虚に受け止めたい」として、参での修正に含むを残しました。

 各会派としては、民共日無社生が廃案で共闘、維改が修正路線、自公次が賛成の方向性となりそうです。この場合、賛成が131、反対が110の勢力図となっており、自公から22人以上の欠席(あるいは11人以上の造反)がない限り採決で否決することは難しくなりました。今後は、維改による、修正協議も横目に見ながらも、廃案に向けた、壁が高く9月上旬以降までの長い院内外での闘争が続くことになります。

 なお、来夏改選の埼玉選挙区(改選定数3)では、公明党の西田実仁さんと民主党の大野元裕さんがライバル、千葉選挙区(改選定数3)では、民主党の小西洋之さんと無所属クラブの水野賢一さんがライバルなので、その辺の人間関係も面白いかもしれません。きのう、大野さんが創価学会の池田大作名誉会長が集団的自衛権に(少なくとも過去には)反対していた、と指摘したのは、公明党参議院幹事長である西田さんを牽制する意味合いも含んでいた、と考えられます。 

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水野賢一さん「自衛官の銃の不正使用の国外犯処罰規定が無い」として法案出し直しを要求

2015年07月29日 15時43分34秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

(暫定版)

【平成27年2015年7月29日(水)参議院我が国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会】

 無所属クラブの水野賢一さんが、安保2法案(189閣法72号、189閣法73号)について、自衛官による銃の不正使用について、国内犯処罰規定があるのに、国外犯処罰規定が無いと指摘しました。

 これに対して、安倍晋三首相は「国内犯と国外犯の処罰所定の均衡を考慮して盛り込まなかった。今後、自衛隊法の検討の中で盛り込んでいきたい」と答弁しました。

 今次改正法案は「公布の日から起算して6か月以内の政令で定める日から施行」となっており、施行は来年3月ごろとみられます。

 水野さんは「法案に不備がある。欠陥法案だ。国家公務員の中でも武器を持つ自衛官は特別な存在だ。一発の銃声から泥沼になったこともある。盧溝橋事件もそうだ。自衛隊員が武器を不正に使ったら、国外犯の規定が無くてどうする」としました。

 水野さんは「これ以上質問できません」として、「法案の出し直し」を要求しました。

 この日は、水野さんの後に、社民党、生活の党と山本太郎となかまたち、新党改革の衆参含めて初めての質疑があり、テレビ中継されていることから、委員会そのものの中断は避けたとみられます。

 国会法59条は、衆議院で可決した法案を、政府は参議院で修正したり、撤回したりできないことになっています。

 今後、法案の与党修正は、附則への盛り込みも含めて、仮に修正可決した場合は、衆議院への回付が必要になることから、水野指摘が波乱の要因になる可能性が出てきました。

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