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米は「台湾海峡有事」で軍事不介入を決定、それでも「島嶼防衛」戦術を続ける日本政府 ―その理由は利権確保もしくは移転のためー

2023-12-04 | 小日向白朗学会 情報
 日本政府は、2022年末に日本の安全保障の指針として「防衛三文書」を閣議決定して、莫大な防衛予算を獲得することに成功した。この防衛三文書は、麻生太郎自由民主党副総裁、秋葉国家安全保障局長、日本国際問題研究所理事長佐々江賢一郎を中心とした外務省と野党に籍を置く「教育無償化を実現する会」前原誠司等が共同歩調をとって出来上がった典型的な外務防衛利権である。
 2022年8月2日、アメリカのナンシー・ペロシ(Nancy Patricia Pelosi)下院議長がロシアによるウクライナ侵攻を口実に台湾を訪問し台湾有事を演出して極東問題に介入を開始した。このペロシ訪台で極東情勢が流動化したことを原因として、日本政府はNATOとイギリス王立防衛安全保障研究所(RUSI:The Office of Distinguished Ambassador to Japan Royal United Services Institute for Defence and Security Studies, UK)の協力で新しい安全保障政策、いわゆる「防衛三文書」を作成することにした。その際にアメリカのバイデン政権は、マッチ役をペロシ元下院議長が、ポンプ役に国務省という役回りで、日本政府が始める防衛費拡大政策に積極的に協力した。
 新たに決定した防衛指針「防衛三文書」では、その骨幹は「アメリカの核の傘」と「アメリカ軍来援」による仮想敵国中国、北朝鮮、ロシアに対処すること、とした。その論法は、ロシアがウクライナに侵攻したことの次は、中国が台湾に侵攻すると同時に尖閣諸島に攻めてくるという、因果関係のない事象を、あたかも関係があるがごとく言いくるめ、「台湾海峡の平和と安定は、国際社会の平和と安定そして繁栄に不可欠」という、巧妙な虚言で、国会議員も国民もだましてしまった。そして、中国が台湾に侵攻を開始した場合に、日本は国際社会の平和と安定という大義名分で自衛隊を台湾有事に参戦させることにした。
 アメリカは「日米地位協定」と「国連軍地位協定」で、自衛隊をアメリカ軍の指揮下で運用する特殊権益を取得しているが、漸く、台湾有事や朝鮮有事に自衛隊を投入することが可能となる体制が整ったわけだ。残る障害は、憲法が自衛隊の海外派兵を禁じていることだけとなった。
 一方、近年のアメリカ政府は、オバマ元大統領やバイデン現大統領が私的な利害関係で戦争を繰り返すという危険な世界外交を繰り広げていて、ついに、アメリカ軍を台湾有事に介入させることまで想定するようになった。ところが、戦争利権屋であるバイデン大統領、ブリンケン国務長官、サリバン大統領補佐官、ヌーランド国務副長官代行らが、ロシアによるウクライナ侵攻を絶好のビジネスチャンスとして捉え、莫大な軍事資金をゼレンスキー政権に投入してきたものの、その結果、中国と北朝鮮をロシアに接近させる結果を招いてしまった。それまでの世界の核バランスは「1位ロシア約4500発、米国は次いで約3700発で、3位中国の410発」が「中露で4910発vs. アメリカ3700発」と変化してしまうことになった。この事態に危機感を抱いたキッシンジャー氏は訪中、中国とアメリカともに「一つの中国」政策に回帰することに尽力したのだ。そして、2023年10月に王毅外相が訪米し、米中の関係は「一つの中国」政策に回帰することに正式に同意した。この同意を受けて、直ちに米中は2023年11月7日に核協議を開始するまでになった。
 米中が「一つの中国」政策に回帰したことで、アメリカは台湾有事に軍事介入しないことになった。アメリカが「一つの中国」に回帰したことは、日本の安全保障に重大な影響を及ぼす。日本の安全保障は「アメリカの核の傘」と「米軍来援」を基盤として組み立てられて、その根本は「防衛三文書」にも引き継がれている。したがった、アメリカは台湾有事に不介入を中国に約束したことから、日本政府が「防衛三文書」で想定する台湾有事及び尖閣領有問題で中国が侵攻してきたとしても米軍は介入しないことになった。
 つまり、日本政府は国民に日本の安全保障は「アメリカの核の傘」に守られていることとアメリカ軍が駐留することとであるとしてきたことが、嘘であり、幻想だったことが明らかになってしまったのである。
 愚かにも、日本政府は、自衛隊だけで台湾有事と尖閣で戦うことになってしまった。
これをビゴー風ポンチ絵にするならば、核保有国である中国に、「アメリカの核の傘」ではなく「唐傘」と竹やりで戦うと言っているに等しい。
 日本は、麻生太郎元財務大臣、秋葉国家安全保障局長、日本国際問題研究所理事長佐々江賢一郎を中心に野党党首前原誠司等が遮二無二進めた安全保障政策は瓦解してしまった。
 もはや中国に白旗をあげる以外にない。
 日本外交敗北の調印式が、2023年11月16日、サンフランシスコで行われたのが、習近平国家主席は岸田文雄首相と会談なのである。
この時の会談内容について、NHKは『【詳細】日中首脳会談“意思疎通重ね 新時代の関係切り開く』[i]のなかでつぎの様に述べている。
『……
岸田総理大臣は訪問先のアメリカで、中国の習近平国家主席と会談し「戦略的互恵関係」の推進を再確認するとともに、新たな時代の日中関係を切り開いていくため、意思疎通を重ねていくことで一致しました。
……
台湾海峡の平和と安定が日本を含めた国際社会にとっても極めて重要だと強調するとともに、台湾との関係に関する日本の立場は、昭和47年=1972年の日中共同声明にあるとおりで、一切変更はないと伝えました。
……』
岸田首相は、アメリカが「一つの中国」政策に回帰したと同様に、日本政府も「一つの中国」政策に回帰することに同意した。ここで両首脳による会談で出てきた「戦略的互恵関係」は何かといえば、外務省HPに「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明」[ii]にその詳細を知ることができる。
『……
胡錦濤中華人民共和国主席は、日本国政府の招待に応じ、2008年5月6日から10日まで国賓として日本国を公式訪問した。胡錦濤主席は、日本国滞在中、天皇陛下と会見した。また、福田康夫内閣総理大臣と会談を行い、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関し、多くの共通認識に達し、以下のとおり共同声明を発出した。
 1、双方は、日中関係が両国のいずれにとっても最も重要な二国間関係の一  つであり、今や日中両国が、アジア太平洋地域及び世界の平和、安定、発展に対し大きな影響力を有し、厳粛な責任を負っているとの認識で一致した。また、双方は、長期にわたる平和及び友好のための協力が日中両国にとって唯一の選択であるとの認識で一致した。双方は、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、また、日中両国の平和共存、世代友好、互恵協力、共同発展という崇高な目標を実現していくことを決意した。
2、双方は、1972年9月29日に発表された日中共同声明、1978年8月12日に署名された日中平和友好条約及び1998年11月26日に発表された日中共同宣言が、日中関係を安定的に発展させ、未来を切り開く政治的基礎であることを改めて表明し、三つの文書の諸原則を引き続き遵守することを確認した。また、双方は、2006年10月8日及び2007年4月11日の日中共同プレス発表にある共通認識を引き続き堅持し、全面的に実施することを確認した
3、双方は、歴史を直視し、未来に向かい、日中「戦略的互恵関係」の新たな局面を絶えず切り開くことを決意し、将来にわたり、絶えず相互理解を深め、相互信頼を築き、互恵協力を拡大しつつ、日中関係を世界の潮流に沿って方向付け、アジア太平洋及び世界の良き未来を共に創り上げていくことを宣言した。
4、双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認した。双方は、互いの平和的な発展を支持することを改めて表明し、平和的な発展を堅持する日本と中国が、アジアや世界に大きなチャンスと利益をもたらすとの確信を共有した。
……』
 つまり、2023年11月16日、岸田文雄首相と習近平国家主席の会談で「戦略的互恵関係」に回帰すること、つまり、日本は1972年に発表した「一つの中国政策」を堅持することを約束したのだ。さらに、岸田首相は、具体的に「台湾との関係に関する日本の立場は、昭和47年=1972年の日中共同声明にあるとおりで、一切変更はない」と断言した。
 これは、日本政府が防衛三文書で中国を仮想敵国にしたことは間違であるとともに、台湾有事に介入しないことを習近平国家主席に約束したということになる。

 さて、ここで問題なのは、日本が中国との外交戦で白旗をあげたことを、日本国民に如何に知らせるかである。何しろ、最高司令官である岸田首相は島嶼防衛を命じたまま白旗をあげてしまった。しかし、自衛隊には戦闘停止を命じていないのだ。そればかりか「反撃能力」として準備を進めていた巡行ミサイル「トマホーク」を前倒しで購入していて、いまだ、戦力増強を進めているのだ。
 つまり、日本政府は、外交戦で敗北したことを、いまだ、国民に知られたくないのだ。そのため日本政府も「一つの中国」政策に回帰したことを、悟られないように、「戦略的互恵関係」と、その真意がわからないようにしている。
それは、終戦直後、岸信介が椎名悦三郎の命により軍需省にあった様々な利権を商工省に移行したときと同様の作業を現在の日本政府が開始しているからなのだ。
 その顕著な例が、憲法審査会の動きであり、武器輸出の問題であり、政界再編問題なのだ。
 つまり、長年にわたり政権与党であった自由民主党は、腐敗が進み、今後も政権を維持できる可能性が低下していた中で、更に中国との外交戦に敗北したことで解体もしくは衰退してゆくことは必須なのである。その理由は、自由民主党が議会民主制度のもとで政権党であることができたのは統一教会と公明党と云う集票組織を動かすことができたからであった。しかし、現在の両組織は、昔のような選挙活動は困難である。したがって「おニャンコ」や「ヤンキー」のような水増し議員は落選という現実が待ち受け散るだけである。その数は、現有所属議員の半数に及んでも不思議はない。だから、麻生太郎自由民主党副総裁が、野党との連立を言い出しているのだ。現在の政界の動きは、全てが自由民主党の特権、つまり、宗主国アメリカに許された現地政権であること、及び、外交防衛利権を死守するか移転させるためだけなのだ。

尚、「一つの中国」政策に付いては下記のスレッドでまとめてきた。
・(2023年10月27日)『王毅外相とブリンケン国務長官会談
・(2023年06月22日)『上海コミュニケ
(寄稿:近藤雄三)
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