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ミステリ感想-『骨を弔う』宇佐美まこと

2018年12月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
家具職人の豊は、子供の頃に友人達とともに山へ埋めた骨格標本が、本物の人骨ではないかという疑いを抱く。
40歳を迎え、それぞれの道を歩む友人達を訪ね歩き、彼らは一様に、中心人物だったある少女のことを思い出す。


~感想~
作者は2018年に3冊を著したが、そのいずれもが傑作だった。
30年前の淡い記憶の中に隠された数々の伏線と、とある事件の匂い。それらが繋がって示される真相は、実のところ大したものではなく、期待値を上回りはしない。
だが読みどころは30年の月日が流れた後の、少年少女らの人生そのもので、風化しかかった事件と記憶が呼び覚まされていくうちに、過去の情景だけではなく、彼らの現在までが塗り替えられていくのだ。
そして最後の最後、これだけはちょっと余分だったのではないかと思っていたとある要素から、もう一つの真相が浮かび上がったのには恐れ入った。やりすぎ感というか手前味噌感もあるにはあるが、こんな企みに満ちた稚気を見せられては脱帽である。

3冊ともまったく違う趣向で、SF要素あり、ホラーあり、全部に共通してミステリとエロありと、作者の驚嘆すべき筆の多彩さを味わわせてもらった。
票が割れてしまいそうだが、どれか一つでもランキング上位に入り、もっと知名度が高まることを願う。


18.11.30
評価:★★★★ 8

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