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ミステリ感想-『たかが殺人じゃないか』辻真先

2020年08月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
昭和24年、共学になったばかりの高校三年生の風早勝利は、推理研・映研の合同修学旅行で密室殺人に、そして合同撮影会でバラバラ殺人に遭遇する。2つの事件に繋がりはあるのか?


~感想~
御年88歳の作者にしか書くことのできない、戦中・戦後の暮らしぶりが活写され、それだけでも非常に興味深く話に引き込まれる。
そのうえ転校生の美少女をめぐる一連の物語や、2つの本格ミステリ的な事件が起こり、作者初の(!)読者への挑戦ならぬ読者への質問状まで出されるのだからたまらない。
2つの事件はいずれも豊富な伏線に支えられるが、ちょっと微細すぎるものも多いし、犯人自体は正直かなりわかりやすいものの、犯人を特定するごく些細なロジックと手掛かりは素晴らしいもので、そこへ戦後ならではの強烈な動機と、意味深なタイトルが重なり合う。
とどめとばかりに繰り出された最後の最後に明かされる趣向にはもう感嘆することしきりで、まさにこの作者にしか書き得ない傑作である。
それにしても76歳で「完全恋愛」を書いた時もそうだが、その12年後に本作を書くとは、Twitterで垣間見られる若々しい感性にもつくづく驚かされる。


20.8.16
評価:★★★★☆ 9

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