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ミステリ感想-『禁断の魔術』東野圭吾

2021年08月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
母校の科学部の後輩に頼まれ、新入部員勧誘に力を貸した湯川。
後輩は湯川の勤める帝大へ入学し、しかし彼の運命は大きく狂わされる。

2012年文春8位

~感想~
ガリレオシリーズ長編。草薙・内海がキャスティングされたので劇場版だと思ってしまう。
もともと短編集の一作として書かれたが、文庫化にあたり大幅に加筆され、長編に再構成されたという変わった経緯がある。

あらかじめ言っておくとトリックは特にない。物語の焦点は湯川と、その愛弟子のような後輩に向けられており、そこにトリックやロジックは介在しないし、なんなら彼ら二人以外の重要人物たちや、それを取り巻く事象すら全てがばっさりカットされており、ただ師弟の迎えた顛末だけが描かれる。
この潔さは半端なく、豊富なエピソードが語られつつもごく短い分量に収まり、あっという間に読み終えられるのだが、あれもこれも全てが語られないまま置き去りにされてしまい、そこに物足りなさも感じてしまうのも事実。
だが宮部みゆき「火車」もその瞬間に完結する潔さに驚かされたが、本作もここまで全てを削ぎ落とすのかと感心してしまったのは確か。東野圭吾、まだまだ恐るべき。

余談だが本作のドラマ版が作られたとして、いったいどの場面で例の音楽が流れ、なんの数式を書いて例のポーズを決めるのかと考えると楽しい。ちょっと入れられる余地が見当たらないんだよな……。


21.8.7
評価:★★★ 6

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