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ミステリ感想-『消失グラデーション』長沢樹

2015年04月25日 | ミステリ感想
~あらすじ~
椎名康は本命の網川緑に告白できず、多数の女生徒と付き合うバスケ部の問題児。
同じく放送部の問題児・プチサディストの樋口真由とともに、校内に忍び込む謎の美少年ヒカル君を追うさなか、屋上から転落した彼女が忽然と消失した。

12年横溝正史ミステリ大賞、このミス6位、本ミス6位


~感想~
おれは消失グラデーションを読んでいたと思ったら丸太町ルヴォワールを読んでいた。何を言ってるのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった…。

というわけで普通に書くと感想の八割が円居挽の傑作「丸太町ルヴォワール」の流用で済んでしまいそうなのだが、これは褒め言葉である。
語り手は端的に言ってクズ野郎だ。探偵役は多少人間味はあるものの、自身と他者の感情を操る術まで身につけた碓氷優佳といった推理マシーンで、話もたった一つの事件を語るにはあまりに冗長過ぎる。
消失トリックもがっかりだ。ヒカル君の正体はラノベにも程があるし、解決編の直前で明かされる秘密はミステリ的にというよりも小説的に極めて残念。
だが真相となるトリックそのものは手垢が付きに付いて黒光りしたものでありながら、まず見抜くことはできない。
そして真相が明らかになるとともに今まで見えていた構図は一変し、本作が企みに満ちた本格ミステリであり、紛れもない青春小説だったことに気付かされる。

それでも物語はあまりに冗長だし、アンフェアな記述も目に余り(以下ネタバレ→)男子バスケ部員と白セーターは許すとしてもゲイ野郎は許しがたい 設定自体にも牽強付会というレベルではない無理がある(再度ネタバレ→)電通は先ごろ日本人の13人に1人が性的少数者と発表したが主要キャラ(語り手・探偵・犯人・被害者・ヒロイン?・ついでに女顧問)の100%が該当はこれなんてエロゲ?としか言えない 点は否めない。

しかしそれら大きな減点材料を差し引いても、本格ミステリファンならば、迷わず読むべき一冊であることは疑いないだろう。
また心底驚くべきことにシリーズ化されているそうなので、続編も読まなければなるまい。


15.4.24
評価:★★★☆ 7

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