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ミステリ感想-『ぼくと、ぼくらの夏』樋口有介

2021年11月18日 | ミステリ感想
~あらすじ~
夏休み、高校生の戸川春一は刑事の父から同級生が自殺したと聞き、街で偶然会った同じく同級生の酒井麻子についそれを教える。
刑事の息子と極道の娘は、自殺ではなく殺人ではないかと疑い調査を始める。

1988年このミス17位、文春4位、サントリーミステリー大賞・読者賞

~感想~
昭和の青春ミステリ。
主人公の春一はやもめの父に代わって家事を行う片手間、女子大生と火遊びをするなかなかキャラの立った語り手で、皮肉めいたニヒルな語り口はハードボイルドを思わせる。
相棒の麻子はヒステリックでよく泣きよく怒る、現代ならフェミニストが噛みつかずにはおかないキャラで、美人設定はあるが正直なぜ春一が惚れたのか、その魅力がよくわからない。
刑事と極道をバックに持つ二人は高校生離れした情報網と調査力で真相に迫りつつ、ストーリー中の所狭しといちゃつきまくるが、やもめの父を交えての会話は軽妙で面白く、展開も意外かつ早いのでリーダビリティは非常に高い。
真相こそ登場人物を絞りすぎて妥当なもので、それより何よりとにかく暗いものだが、春一のハードボイルドさとバカップルのいちゃいちゃぶりで十分に中和できており、読後感も悪くない。
これがデビュー作とは思えないほど読みやすく軽快な、一読の価値ある佳作だろう。

全くの余談だがネームドキャラは老若男女問わずほぼ全員が飲酒・喫煙するシーンがあり、現代ならば高校生が(それも女子高生はなおのこと)飲酒・喫煙するならそこに意図や理由があるものだが、全くそんなものは存在せず当たり前にタバコを吹かしていて、実に昭和らしくて笑った。90年代くらいまでは確かにそうだったそうだった。
あと未成年喫煙を含めればネームドキャラ全員がなんらかの軽犯罪以上を犯してるのもさすが昭和の作品である。


21.11.6
評価:★★★ 6

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