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ミステリ感想-『ディオゲネス変奏曲』陳浩基

2019年06月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
風変わりな教授が出した課題は「講義室に紛れ込んだ助手Xを論理的に指摘する」こと。学生たちが推理と騙し合いの果てにたどり着いた真実とは?……見えないX
ある女性のブログに魅せられ、断片的な情報からその素性を突き止めたサイコパス。アングラ掲示板に彼女の殺害予告を書き込み……藍を見つめる藍
他、短編・掌編合わせて17編を収めた珠玉の作品集。


~感想~
歴史的傑作「13・67」が話題を呼んだ作者による、ミステリのみならずSF、ホラー、ユーモア取り混ぜた短編集。純粋なミステリは少ないがしかし心配ご無用。
どれもこれも小説として面白いのはもちろんのこと、ランダムに選ばれた単語3つから考えたたった1ページの掌編にさえ、なんらかのトリックを仕掛けずにはいられない、作者のミステリ愛を感じてしまう。
中でも「藍を見つめる藍」と「見えないX」が飛び抜けており、どこかのタイミングで読者は必ずや目を点にすることだろう。特に「見えないX」は年間ベストどころかここ十年のベストにも数えられるほどの大傑作。フーダニットは苦手と公言する作者によるフーダニットがどんなものか、必ず想像を絶するのでこの一作のためだけでも買う価値は十分にある。
また個人的には「カーラ星第九号事件」も大好物で、内容自体は正直言って込み入りすぎてわりとどうでも良かったのだが、最後に明かされるある趣向がとんでもない。
その他のミステリ外作品も、ただの一捻りに終わらずもう一捻り加える発想が冴え、人によって刺さる作品もまた違うことだろう。
翻訳もあの死ぬほどややこしい「元年春之祭」を手掛けた訳者で特に問題なく、海外作家だし、ミステリ外も多数の短編集だし、などとひるむことなく「13・67」を読んだ向きにはぜひ手に取ってほしい珠玉の作品集である。


19.6.1
評価:★★★★★ 10

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