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ミステリ感想-『ジャンプ』佐藤正午

2022年07月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
三谷純之輔が苦手な酒で泥酔した夜、恋人の南雲みはるは「朝食のリンゴを買って5分で戻ってくる」と言い残し、姿を消した。
彼女はどこへ、なぜ「ジャンプ」したように消えたのか。三谷は懸命に行方をたどるが…。

2000年文春7位

~感想~
ミステリとして物語として完璧な導入で幕を開け、三谷の調査で明らかにされていく彼女の足取り。はじめは妥当に見えた「ジャンプ」の理由は次第に曖昧になり、足跡とともに消えてしまう。そして時が経ち、三谷がある動機に思い当たるまでで大半のページ数が消費され、そこまでの展開も過不足無く、あとは納得の行くオチが着けば傑作になるところだが…。
結末ではそれまで伏せられていた、というかぼかされていた伏線が表に現れ、一つの謎が明かされ、同時に新たな一つの謎が浮上し、それが解かれないまま物語は終わってしまう。
だが本格ミステリではないので謎が全て解かれるとは限らないし、不透明決着ながら結末として不満の残るものでもなく、そこに至るまでの道中が抜群に面白かったので全く問題ない。
恋人命で必死に行方を探し、冷静かつ推理力に優れているようでいて実のところ色々とアレな三谷のアレさも伏線であり、読了後には読者の各々がそこになんらかの裏テーマを見出すことだろう。
普段読んでいる、基本的に全てが説明され尽くす本格ミステリでは味わえない読書体験で、これはこれで非常に良かった。ミステリ馬鹿ではない一般的な本好きならいっそう楽しめることだろう。


22.7.2
評価:★★★☆ 7
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