病室に行くと、お父さんは私の顔を見るなり
「もうやけくそだ〜」
と言いました。
水とお茶だけ700ccだけ、という毎日にがまんできず、
ついにこっそり病棟を抜け出して(!)缶コーヒーを買って
飲んでしまったというのです。
「でもなー」
と情けなさそうに
「あんなに飲みたかったのに、思ったより全然おいしくなかったんだ」
と。
町をぶらついて、ふらりと喫茶店に入る。
回りの人のおしゃべりとか店に流れる音楽を聴きながら、
入れたてのコーヒーの香りをかぎながら、今買ってきた本を読む。
あるいは家でのんびりしていて、喉が渇いた頃合いに
コーヒーを入れて、飲みながらおしゃべりをする。
やっぱりそういう環境じゃないとおいしくないんだなあ、と。
「そんなことは当たり前のことだと思っていたけど、
いざできなくなるとそのありがたさがわかるなあ」
としみじみ言って、
ああ〜いつになったら帰れるんだろう〜。
と心からの声、と感じでため息をついていました。
暴飲暴食はぜったいだめだよ、と口を酸っぱくして言っていたのに、
にやにやしながら聞き流して、あげく勝手にもう治った、と
自信満々で、入院直前には同窓会でお酒を飲みまくったあげくのこの始末です。
自業自得だよ!と思いつつ、
やっぱり気の毒です。
好きな物も食べられず、飲めず、外出もできずに日がな一日過ごすなんて。
外に出て、人と遊ぶのが大好きなお父さんならなおさらつらいだろうな。