内的自己対話-川の畔のささめごと

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二十二世紀にまだ人類が地球上に生息しているとして、その時代の歴史家たちは二十一世紀をどう記述するだろうか

2023-10-25 23:59:59 | 雑感

 先日の記事で少し触れたことだが、今日、大学の中央キャンパスで、テロリストの襲撃を想定した大規模な防災訓練が行われた。といっても、参加したわけでも、見学に行ったわけでもないので、実際はどうだったのかは知らない。聞いたところによると、百人規模の犠牲者が出たという想定の下、警察や救急隊をはじめ関連機関総出で、テロリスト・グループ役はもちろんのこと、犠牲者役として多数の市民が参加したらしい。
 フランスは過去に何度もテロの襲撃に遭っている。2015年11月13日のパリ同時多発テロ事件は記憶に新しい。ストラスブールでも2018年12月11日にテロ事件があった。ユダヤ人もアラブ人も多数住んでおり、ヨーロッパの「首都」として多くの国際機関が存在するストラスブールで今日のような訓練を行うことは確かに必要であろう。
 それに、現下の国際情勢である。今回の訓練は実に「絶妙な」タイミングだなどと冗談でも口走れる状況ではない。10月7日に勃発したパレスチナ・イスラエル戦争の数ヶ月前から予定されていた今回の訓練は、2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻以来、緊張度が増大し不安定化し続ける国際情勢を背景として策定されたことは間違いない。
 1990年の湾岸戦争から三十三年、二十一世紀の最初の年である2001年の9月11日起きたアメリカ同時多発テロ事件から二十年余りが経ち、もともと危うかった世界の均衡状態はますます脆弱になっている。
 制御不可能な気候変動や深刻度を増す一方の地球規模の環境破壊のことを考えれば、人間同士が殺し合う戦争なんかに現を抜かしている場合ではないのに……。
 百年後にもまだ地球上に人類が生息しているとして、その時代の歴史家たちは二十一世紀の世界を振り返ってどう記述するだろうか。
 「世界各地でテロが繰り返され、多数の国家が戦争に明け暮れ、原発事故が相次ぎ、気候変動に因る大規模災害が連鎖的に世界中で発生し、生態系破壊に因って多くの生物種が絶滅し、ウイルスに因る犠牲者が数億人に達し、十数億人が極貧・飢餓・疫病に苦しみ、百年間で世界人口は半数以下に激減した。一方、人工知能は目覚ましい進化を遂げ、世界の富を独占するごく少数の特権階級のみが享楽的な生活を楽しみ、人類の99%はその特権階級と人工知能との奴隷となった。まさに人類史上最悪の世紀であった。私たち現代人は、その暗黒時代からの数少ない生き残りなのである。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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