内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

前回の外出禁止令がトラウマ化している学生たちの折れそうな心のケアの必要性

2020-10-30 23:59:59 | 雑感

 外出禁止令の発効が万聖節の休暇中のことだったので、ちょうど帰省中の学生たちもいれば、大学が遠隔授業に移行することを知って昨日急いで帰省した学生たちもいたようだ。そのうちの一人から同様な状況の学生たちを代表して、試験も遠隔で行ってほしいとの要望が早速に届いた。これは、大学当局が全学生に向けて、試験のみは大学で行う可能性があることを伝えるメールが送られたことに対する反応である。
 大学が全面閉鎖中だった昨年度後期の期末試験と学年末の追試の際に、遠隔で行われた試験で多数の不正行為があったので、教員の大多数は、少なくとも試験だけは、試験監督ができるように教室で行うことを強く望んでいることがこの通達の背景にある。それに、小中高では、万聖節の休暇が明ける来週月曜日からも教室での授業が継続されることになっているのであるから、大学だけ教室をまったく使えないというのも筋の通らない話である。実際、今回の外出禁止令では、前回と違って、教職員の大学の建物への立ち入りは禁じられてはいないし、実技や実験を必要とする授業に関しては教室で行うことが許可されている。
 試験を遠隔で行うかどうか現時点で決めるのは、したがって、時期尚早である。十二月一日までに状況が多少なりとも改善すれば、試験だけは教室で行うことを求める教員が多数派を占めることは間違いない。それに、前期末の試験期間は、ぎりぎり一月十一日の週まで遅らせることができるのだから、学生たちの上記の要求は性急に過ぎると言わざるを得ない。
 私がその文面から感じたのは、冷静な状況判断ができないほどに学生たちが不安に苛まれていることである。三月の大学封鎖のときは、学生たちにとっても教員たちにとっても天から降ってきたような突然の決定で、全員手探り状態で遠隔授業に移行せざるを得なかった。まったく前例がないことであったから、はじめは不安になる暇さえなかった。ところが、今回は、前回のことがトラウマになって、彼らは最初からひどく動揺してしまっているのだ。
 別の学生からは、ここ数日強いストレスに悩まされていることを吐露する長いメールが来た。少しでもストレスが和らぐことを願いつつすぐに返事を送った。
 また別の学生からは、母親が白血病に罹患しているとの知らせを受けて急遽実家に戻ったとのメールが届いた。「よりによってなんでこんなときに」と心が痛む。「大学の授業のことは何も心配しなくてよい。今は家族とともにお母さんの側にいてあげなさい」と間髪を入れずに返信した。
 遠隔での授業をできるだけ円滑かつ効果的に行うことも大事である。そのための投資もスキルアップも必要であろう。しかし、それだけが教師の仕事ではない。前回の外出禁止令のときも痛感したことだったが、学生たちの折れそうな心のケアもまた教師のミッションである。そう私は思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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