内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

ハイドン弦楽四重奏曲Op.72-2『雲がゆくまで待とう』

2020-05-04 23:59:59 | 私の好きな曲

 拙ブログにはさまざまなカテゴリーがあるが、その中の一つが「私の好きな曲」である。最近はこのカテゴリーに当てはまるような記事をまったく書いていない。今年に入ってからはまだ一件もない。その間音楽を聴いていなかったわけではない。自宅待機令以前から普段自宅で仕事をすることが多く、そういうときはアップルミュージックやアマゾン・ミュージックでクラシックのテーマ別に編集された何時間も続くコンピレーションをストリーミングで流しっぱなしにしている。それらの曲や演奏の中には、はたと仕事の手を休めて聴き入ってしまうものもときにはあったのだが、記事を書きたくなるような曲や演奏に出逢うことはなかった。
 三月後半からの自宅待機令下くり返し聴いているのはハイドンの弦楽四重奏曲全集である。ハイドン先生にはまことに申し訳ないが、真剣に聴いているわけではない。仕事中バックグラウンド・ミュージックとして流している。であるから、あまり才気に満ちた溌剌とした演奏よりも、頭をすっきりさせてくれ、気持ちを清々しく或いは落ち着かせてくれる演奏がいい。というわけで、コダーイ弦楽四重奏団による全集を控えめの音量で流している。ストリーミングのいいところはCDならば二十五枚組のこの全集を切れ目なくずっと流せることである。合計二十五時間三十分であるから丸一日流していても終わらない。
 CD版の最後の一枚は『十字架上のキリストの最後の7つの言葉』であるが、これを除くと、最後の一曲は『雲がゆくまで待とう』である。この曲が他のハイドンの弦楽四重奏曲より特に好きというわけではないのだが、ハイドン先生ご本人による命名ではないこのタイトルが実にいいなあと思っている。
 不確定な未来を案じてもどうにもならない。雲がゆくまで待とう。今日も書斎の窓から空を見上げながらそう呟いている。