内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

集中講義第四日目 ― 新宿で『万引き家族』鑑賞、そして「使える」哲学を学ぶためにキャンパスへ

2018-08-03 23:59:59 | 雑感

 今日の午前中、集中講義「校外実習」と称して、TOHOシネマズ新宿で『万引き家族』を学生とTAと一緒に観てきました。今日の午前中の上映がパルムドール受賞後に始まったロードショウの最終回だったのです。今回の帰国中にどうしても観ておきたいと思っていたので、観ることができてとても喜んでいます。テーマ・ストーリー展開・映像・音楽、みなよかったのですが、何よりも出演者たちの演技がほんとうに素晴らしかった。この映画は誰か一人が主役なのではなく、血の繋がりのない「疑似」家族が主役なのですが、強いてその中の誰かに賞を上げるとしたら、個人的には、安藤サクラに最優秀主演女優賞を上げたいと思いました。いずれにせよ、是枝裕和監督の最高傑作と言っていいのではないかと思っています。
 その後、車中で映画の感想を語り合いながら大学まで電車で移動し、いつもの演習室でシモンドン『個体化の哲学』読解を継続しました。しかし、私の注解が次第に文脈を離れて、自分でもなんでその話をしているのかわからないところまで遠ざかってしまうことがたびたびあり、量的には「序論」のほんの二頁弱しか読めませんでした。それでも、シモンドン哲学入門としては、かなり中身の濃い演習になっていると自負しております。
 私がシモンドンの哲学に特に強い関心をもつのは、世界の諸事象の中に含まれた問題群をそれとして剔抉し、それらに表現を与えるためにとても有効な概念装置をそれが提供してくれるからです。つまり、シモンドンの哲学は「使える」のです。その点を演習中にも繰り返し強調しました。
 明日は、集中講義の最終日。例年通り、学生の発表です。でも一人しかいませんから、TAにも発表してもらうことにしました。彼女は、今月半ばに北京で開催される世界哲学大会で発表するので、その「予行演習」をしてもらうことにしました。私は、今日までとは違って、質問する側にまわります。二人それぞれにとってこれからの勉強あるいは研究の役に立つような議論ができるように配慮したいと思っています。